中国科学院化学研究所の李永舫氏と孟磊氏が率いる研究チームは、ペロブスカイト・有機タンデム太陽電池で、**認証済み定常状態の光電変換効率28.04%**を達成しました。同チームの発表によると、これはこのタイプの太陽電池における世界記録です。研究成果が掲載された『Nature』の発表日は、報じられていた8月21日ではなく、2026年7月13日です。
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今回の成果の意味は、効率の数字だけにありません。研究チームは、広バンドギャップ・ペロブスカイトが抱える大きな課題、つまり光を浴びるとハロゲン成分が分離し、動作中に性能が低下しやすい問題にも取り組みました。
記録を達成したセルの性能
モノリシック型のタンデム太陽電池は、測定上のピーク効率28.80%、第三者認証による**定常状態効率28.04%**を記録しました。
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また、中国科学院などの発表では、下部の有機セルと組み合わせる前の広バンドギャップ・ペロブスカイト上部セルについて、同タイプとして非常に高い開放電圧を達成したと説明されています。
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耐久性については、連続光照射625時間後も**初期効率の90%**を維持したと報告されています。
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ただし、これらは研究室で作られた小面積セルの結果です。この数字だけで、商用製品としての量産性や、衛星での運用適性まで確認されたと考えることはできません。
なぜ2種類の太陽電池を重ねるのか
タンデム太陽電池は、光を吸収する範囲が異なる2つの発電セルを重ねた構造です。今回のデバイスでは、上部に広バンドギャップ・ペロブスカイトセル、下部に有機セルを配置しています。
- 広バンドギャップ・ペロブスカイト上部セルは、太陽光のうちエネルギーの高い光を効率よく吸収します。
- 有機下部セルは、ペロブスカイト層を通過した、よりエネルギーの低い光を取り込みます。
異なる材料を直列に組み合わせることで、単一の光吸収材料だけを使う場合よりも、太陽光スペクトルを有効に利用できます。ペロブスカイト・有機タンデムは、広バンドギャップのペロブスカイト上部セルと、より狭いバンドギャップを持つ有機下部セルを重ねる構造として研究されています。
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有機層は疎水性を持つ場合があり、ペロブスカイト部分への環境影響を抑える役割も期待されています。ただし、実際の保護効果は、封止材を含むデバイス全体の構成や使用条件によって変わります。
効率低下を防ぐ「全段階制御」
混合ハロゲン型の広バンドギャップ・ペロブスカイトは、下部セルとの組み合わせに合わせてバンドギャップを調整できるため、タンデム太陽電池に適しています。一方、光を浴びた際の安定性は、依然として主要な課題です。
研究チームが示したのは、欠陥を薄膜完成後に処理するだけでなく、材料の準備、薄膜の成長、そして実際の動作までを一続きの過程として制御する**「全段階制御」**の考え方です。光によって変化する添加剤を用い、混合ハロゲン・ペロブスカイトの相を安定化させました。
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ペロブスカイトでは、光照射によってハロゲンイオンが移動し、バンドギャップの異なる領域が生じることがあります。この相分離を抑えることで、上部セルの電圧とタンデム全体の出力を、照射中も保ちやすくする狙いです。
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このアプローチが重要なのは、広バンドギャップ・タンデムでは効率と安定性が密接に結び付いているからです。測定開始時に高効率でも、動作中に発電層の構造が大きく変化すれば、実用上の価値は限られます。
軽量・フレキシブル太陽電池への道
ペロブスカイトや有機太陽電池の層は、溶液から成膜できる可能性があります。そのため、原理上はスロットダイ塗布やロール・ツー・ロール方式など、塗布型の製造技術につながる余地があります。
こうした技術が確立すれば、従来の硬く重いパネルとは異なる、薄型、軽量、折り曲げ可能で曲面に沿わせられる発電デバイスを実現できる可能性があります。ただし、今回の記録セル自体が商業規模の生産を実証したわけではありません。
これまでにも、ペロブスカイト・有機タンデムでは硬質基板だけでなく、フレキシブルデバイスの研究成果が報告されています。
10 想定される用途には、次のようなものがあります。
- 曲面に組み込む建物一体型太陽光発電
- 身に着けたり、形状に合わせたりできる電源
- 軽量化が求められるドローン向け電源
- 質量や収納容積が重要な航空宇宙構造物
これらの分野では、最大効率だけが価値を決めるとは限りません。軽く、折りたため、曲面にも設置できる太陽電池なら、従来型の硬質パネルでは設置や輸送が難しい場所で強みを発揮できます。
ロール式の衛星用太陽電池アレイは実現するのか
軽量で柔軟な太陽電池アレイを打ち上げ時には巻いた状態で収納し、軌道上で展開するという構想には、技術的に検討する価値があります。しかし、今回の28.04%という記録を、そのまま衛星搭載の準備完了を意味するものと見ることはできません。
宇宙で使うには、ベンチ上での連続光照射試験に加えて、少なくとも次の検証が必要です。
- 紫外線や粒子線などの放射線への耐性
- 真空環境での安定性とアウトガスの管理
- 繰り返される温度変化への耐久性
- 打ち上げ、展開、運用時の機械的な耐久性
- 大面積化したセルや、相互接続したモジュールでの性能再現性
現在確認されているのは、認証済みの効率記録と、連続光照射に対する安定性です。宇宙環境への適格性や飛行実証まで示されたわけではありません。小面積の記録セルと、実際に打ち上げられる発電システムの間には、大きな技術的な隔たりがあります。
次の焦点は量産化と用途別の信頼性
今後の重要な工学的課題は、記録を再現できる規模でのスケールアップです。まずは均一なサブモジュール、次に信頼性の高い配線や封止を備えたフレキシブルモジュールへと発展させる必要があります。
さらに、熱、光、湿気、曲げ、真空、放射線が組み合わさった現実的な条件で、デバイス全体がどのように振る舞うかを測定しなければなりません。高効率セルが製品になるには、大面積でも性能を再現でき、用途に応じた負荷を受けても性能を維持できることが求められます。
今回の成果は、ペロブスカイト・有機タンデムで**認証済み定常状態効率28.04%**という記録を打ち立てたこと、そして広バンドギャップ・ペロブスカイトの光安定性を高める材料戦略を示したことの2点で前進です。将来的な意義は、これらの性能が量産化や、地上・宇宙それぞれの用途に求められる信頼性試験を乗り越えられるかどうかにかかっています。