Rockstarがゲーム史に残るであろう巨大エンターテインメント作品の発売準備を進める一方で、Benzies氏のスタジオは壊滅的なデビュー作によって、今や「スケルトンクルー(最小限の人員)」へと縮小してしまったのだ。
2025年6月にリリースされた『MindsEye』は、Benzies氏の「GTAペディグリー(血統)」への過度な期待を背負って登場し、そしてその重圧に無残にも押し潰された。三人称視点のSFシューターにオープンワールドのドライビング要素を組み合わせた本作だが、批評家とプレイヤーの双方から酷評され、「2025年で最もレビューの悪いゲーム」という不名誉な称号を得た 。
その後の崩壊は凄まじいスピードで進行した。
発売からわずか2週間後、Build a Rocket Boyは英国法に基づく正式な人員削減プロセスを開始。これは大規模レイオフ(100人以上)の際に義務付けられる45日間の協議期間の開始を意味していた 。
混乱は2025年10月にも続く。今度は93人の元従業員が公開書簡を発表し、スタジオ経営陣を「持続不可能な過酷な開発(クランチ)」と組織的な失策で非難。書簡では、従業員が「大切な同僚ではなく、単なる使い捨てのリソース」として扱われていた職場文化が赤裸々に綴られた 。この告発には英国独立労働組合(IWGB)のゲームワーカー支部が支援に乗り出し、その後、不公正な解雇やレイオフ協議の不備を巡り、複数の訴訟が提起された
。
最後の止めは2026年5月。この時、残っていた約250人の従業員のうち、約170人がレイオフされ、スタジオに残ったのは約80人という壊滅的な規模へと縮小した 。皮肉なことに、このレイオフは本作のDLC第1弾『Blacklisted』のリリース直後に敢行されたが、このDLCもまた、厳しい酷評を受けたばかりだった
。コミュニティチームの主要メンバー3名を含む開発者たちが、LinkedInやゲームの公式Discordサーバーで自ら退職を報告するという異例の事態となった
。
Benzies氏と共同CEOのMark Gerhard氏は、『MindsEye』の失敗の原因を「妨害工作」のせいだと以前に主張していた。だが、ここまで大規模なスタジオの崩壊と、内部からの経営失策や過酷な労働環境に関する無数の証言は、より複雑な真実を物語っていると言わざるを得ない。
Zelnick氏の今回のTD Cowenでの発言がこれほど辛辣に響くのは、両者の間に積み重なった苦い歴史ゆえだ。
Benzies氏は、2016年にRockstar Gamesと痛烈な決別を遂げていた。彼は1億5000万ドルの損害賠償を求め同社を提訴し、2015年の自身の退社は不法な解雇であると主張したのだ 。両社の激しい非難の応酬を伴ったこの法廷闘争は、最終的に2019年の秘密和解によって幕を閉じた
。
興味深いのは、Benzies氏が去った当時、Zelnick氏が公の場で彼の貢献を称賛し、「GTAフランチャイズの未来に何の問題もないと確信している」とコメントしていた点だ。だが時は流れ、『MindsEye』というあまりにも明確な「反証」が現れた。今回のZelnick氏のコメントは、もはや単なる業界観測ではなく、Rockstarの「制度的アプローチ」の正しさを過去に遡って証明する、静かなる勝利宣言のようにも聞こえる。
Zelnick氏がこの会議で伝えたかった本質は、元Rockstar社員に才能がないということでは決してない。GTAのような超大作を生み出すには、単なる個人のスキルを超えた「何か」が必要だ、という構造的な指摘である。「たとえRockstar Northで創造プロセスの中枢にいた人物であっても、その環境の外でブロックバスター級の結果を再現することはできていない」というのが彼の主張の核だ 。
ゲーム業界が突きつけられたこの事実は、厳しいが明快だ。すなわち、創造を可能にする組織文化を構築するのは極めて困難であり、ましてやそれを個人で持ち出して別の場所で再現するなど、不可能に近いということだ。
これだけの「失敗」を巡る言及の一方で、Zelnick氏は同カンファレンスにて、自社の「王冠の宝石」についても強く言及した。
彼は、『グランド・セフト・オートVI』が予定通り、2026年11月19日にPlayStation 5とXbox Series X|S向けに独占発売されることを改めて確認。PC版も後日発売予定だと述べた 。
そして世界中のファンが最も待ち望んでいる「その時」についても、明確なシグナルが発せられた。エンターテインメント史上最大級のマーケティングキャンペーンが、この夏いよいよ始動するのだ。
Zelnick氏は以前、マーケティングの開始が「夏の始まり(6月下旬)」以降になることを示唆していた。「我々はアナリスト向けの決算説明会で、マーケティングの発表をすることは決してありません。決してです」と語った彼は、「ここ数週間はまだ夏ではないでしょう。しかし、夏が来たら、Rockstarは『GTA 6』のマーケティングを開始する予定です」と言明している 。
TD Cowen会議が行われた2026年5月下旬の時点では、新たなトレーラーも、価格発表も、予約開始もまだ行われていない。しかし、この会議への登壇そのものが、これから始まる情報の奔流の前触れであると、投資家とファンの双方から見なされている 。
今、ゲーム業界は「カリスマ的個人の限界」と「強固な創造文化の圧倒的な力」という、あまりにも残酷なコントラストを目の当たりにしている。
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