同氏は「低遅延で本当に消費者にとって使い勝手のいいストリーミングは、すぐそこまで来ている」と強調。これまで10年以上にわたって業界が約束されながら実現しなかった「クラウドゲーミングの主流化」に、明確な期限を設けた 。
Zelnick氏の発言は、ゲーム業界が直面する過去最悪のハードウェア価格高騰への直接的な回答だった。その根底にあるのは、AI向け半導体需要による世界的なメモリー不足だ 。
Microsoftはこの値上げについて「コンソールのストレージとメモリー価格が2.5倍以上に上昇し、2027年秋までにさらに倍になる見込み」と説明している 。
ゲーム機がミドルレンジのゲーミングノートPCよりも高価になった結果、現世代機(PS5/Xbox Series X|S)の設置台数は価格高騰がなければ実現したであろう水準を下回っている。Zelnick氏はこの点について「現在のコンソール世代のハードウェア設置台数は、そうでなかった場合と比べて低くなっているかもしれない」と認めている 。
Zelnick氏の論点は3つに整理できる。
ハードの高騰を「良いことではない」と認めつつも、ストリーミングへの移行が始まれば、これは長期的な逆風にはならないと同氏は主張する 。
「ストリーミングの到来によって、これまでゲーム機ではなかった端末がゲーム機になる」。スマホ、タブレット、ノートPC、スマートテレビ——人々がすでに持っているデバイスが、クラウド経由でAAAタイトルを動かせるようになる。
複数のメディアによれば、Zelnick氏はストリーミングがゲームのアドレス可能な設置台数を、専用コンソールやPCのみの場合と比べて10倍に拡大すると定量化した 。
翌期に約1200億円(80億ドル)の売上を見込むTake-Twoにとって—その大半を『GTA 6』が占める—、10倍の市場という主張はクラウド配信を推進する最大の理由となる 。
Zelnick氏の予測を具体的に検証する舞台は、同社のリリーススケジュール上にある。
『Grand Theft Auto VI(GTA 6)』は2026年11月19日、PS5とXbox Series X|Sのみで発売される。 PC版のリリース日は発表されておらず、Take-TwoがSECに提出した約1200億円の売上ガイダンスにもPC向け収益は含まれていない 。
Zelnick氏は、このコンソール優先戦略がSonyとのマーケティング契約によるものではなく、「コアコンシューマー」(コンソールゲーマー)を最優先する意図的な選択だと説明している 。
時間軸を合わせると、Zelnick氏の言う「3年後」はGTA 6の発売から約3年後の2029年頃にあたる。これにより、次のような可能性が浮上する。
複数のメディアは、Zelnick氏の予測とGTA 6のコンソール専用発売を組み合わせ、「ストリーミングがPC版に代わる迂回路となるのか」という疑問を提起している 。
全員がZelnick氏の見解に賛同しているわけではない。TweakTownは「現在のレイテンシー、ライセンス問題、コントローラーの嗜好、データセンターの制約、そして上昇するメモリー価格を考えると、そのタイムラインは実現が難しい」と指摘する 。
「クラウドゲーミングは常に3年先の技術」と言われて久しく、Google StadiaやAmazon Lunaといった先行事例は主流化に失敗している。
しかし、状況は今回異なるかもしれない。約12万円のXbox Series Xと約10万円のPS5という現実は、ストリーミングの価値提案を劇的に変える。Zelnick氏の賭けは、「メモリー危機がストリーミングへの移行を遅らせるのではなく、むしろ加速させる」というものだ。縮小するコンソール設置台数という選択肢は、それよりも悪いからだ。
Zelnick氏の予測は、一貫した戦略的絵図を描き出す。GTA 6の発売から数年が経過した頃には、クラウドストリーミングは成熟し、人々がすでに所有する何十億ものデバイスにコンソールレベルのGTA 6を届けるだろう。そして、約12万円のゲーム機の存在も、PC版の不在も、今日ほど重要ではなくなる。
もし彼の予測が正しければ、ゲーム機を約12万円に押し上げたメモリー危機は、「コンソールゲームの終焉」ではなく、「ついにクラウドゲーミングが主流になるきっかけ」として記憶されることになる。