AIの価値は、モデルの規模や性能だけで決まるのか――。シンガポールのデジタル開発・情報相、ジョセフィン・テオ氏は2026年9月21日の「Digital@UNGA」で、行政サービスに役立つ活用例を挙げながら、AIをより多くの国や人々が使えるようにする重要性を語りました。
3
行政の現場で使うAI
テオ氏によると、機械学習を使って住民から寄せられた連絡を担当機関に振り分けています。たとえば、公園のブランコの破損や街灯の故障といった報告を、適切な部署につなぐ仕組みです。また、国境では数百万件にのぼる貨物輸送の中から異常の兆候を見つけ、詐欺対策ではフィッシングやなりすましの兆候を検知するのにAIを活用していると説明しました。
3
さらに、行政職員の約70%が情報の分析や文書の下書きにAIを使っているといいます。ただし、AIを利用しても、最終的な判断や成果物への責任は職員が負うという立場を示しました。
3
地域の言語や文化に合うモデルを
AIを地域で活用するうえで課題となるのが、言語やアクセント、文化的な背景への対応です。テオ氏は、こうした点を踏まえた取り組みとして、シンガポールのオープンモデル「SEA-LION」を紹介しました。東南アジアの言語や文化的な特徴を捉え、多言語の音声や、会話の中で複数の言語を切り替える話し方にも対応することを目指しています。
3
11
また、ゲイツ財団、Google、国連開発計画(UNDP)と連携し、十分なデータが整っていない言語向けに、AIの開発や調整に使えるデータセットを整備する「Project ATLAS」にも触れました。
3
すべての国が最先端モデルを作る必要はない
テオ氏の主張の一つは、各国が自国の言語、文化、ニーズに合わせてAIを導入できるよう支援することです。すべての国が最先端のAIモデルを独自に開発しなくても、既存の技術を地域の事情に合わせて活用する道があると述べました。
3
シンガポールは、小国フォーラム(Forum of Small States)の「デジタル・ピラー」を通じた知見の共有にも取り組んでいます。同フォーラムは108の小国で構成されるコミュニティです。
11
成功を測るのは、AIが力を届ける人数
テオ氏の発言から見える優先事項は、AIを現実の課題に役立てること、継続的な活用を支える信頼を築くこと、そしてより多くの人が参加できるようにすることです。成功の尺度は機械がどれほど高性能になったかだけではなく、AIが何人の力になったかだと訴えました。
3
なお、貨物検査や職員の利用状況などの例と数値は、テオ氏が講演で示したシンガポール政府の説明に基づくもので、各施策の効果を独立に検証した評価ではありません。