Samsungが2026年9月1日、SEMICON Taiwan 2026に合わせて開かれた「Memory Executive Summit」で、AI時代のメモリー限界に挑む新たなロードマップ「CUBE」を示した。CUBEは、**Capacity(容量)/Utilization(利用効率)/Bandwidth(帯域幅)/Efficiency(効率)**の頭文字を取ったものだ。
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狙いは、メモリーを基板上に横並びで配置するだけでなく、ロジックとメモリーを立体的に組み合わせることにある。AIアクセラレーターの高性能化に伴い、必要なメモリー容量とデータ転送量は増え続けている。一方で、基板面積やパッケージ、電力供給、冷却には限界がある。Samsungは、この制約を“横方向”ではなく“縦方向”への拡張で乗り越えようとしている。
CUBEの4つの柱
容量:基板を広げず、上方向へ積む
Capacityでは、プリント基板(PCB)の占有面積を増やさずに、メモリーを垂直方向へ拡張する考え方を示した。AIシステムでは、アクセラレーターがより大きなメモリープールにアクセスできることが重要だが、基板面積やパッケージサイズには制約がある。
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利用効率:単に積層数を増やすだけではない
Utilizationは、メモリーのダイを増やすだけでなく、ロジックとメモリーの配置や接続関係を最適化することを意味する。データが不要に長い経路を通ったり、非効率な場所で待たされたりしないよう、各層の役割と配置を見直す構想だ。
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帯域幅:横方向の経路を、縦方向の接続へ
Bandwidthでは、処理ロジックとメモリーの距離を短くすることで、データ転送能力を高める。特にzHBMでは、従来のようにHBMをAIアクセラレーターの横に置くのではなく、上に積むことで、密度の高い垂直接続を実現しようとしている。
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効率:データを動かすコストを下げる
Efficiencyは、電力と熱を別々の問題として扱うのではなく、データ移動に必要なエネルギー、消費電力、発熱、熱抵抗を一体の設計課題として捉える考え方だ。帯域幅を高めても、データ転送のたびに大きな電力を消費し、熱を処理できなければ、実際のAIシステムでは性能を生かせない。
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HBM5はHBM4E比で「2倍」だが、比較条件は不明
CUBEの中で、より製品に近い位置づけなのが次世代HBMのHBM5だ。Samsungが示した主な目標は次の通り。
- HBM4E比で性能2倍
- ワット当たり性能20%向上
- 熱抵抗20%低減
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報道では、1cクラスのDRAMプロセス、Samsung独自の2nmベースダイ、積層内部から熱を逃がすHeat Path Blockの採用も伝えられている。
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ただし、ここでいう「性能2倍」は、現時点では絶対的な帯域幅の数字ではない。Samsungは、HBM5の最終的な帯域幅、容量、積層数、消費電力を公表していない。また、「性能」がピン当たりの速度なのか、1スタック当たりのスループットなのか、インターフェース性能なのか、システム全体の能力なのかも明らかにしていない。
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そのため、「2倍」という目標をテラバイト毎秒(TB/s)の具体的な数値へ単純に換算することはできない。既存世代との比較には、同じ性能指標、同じ積層構成、同等の試験条件が必要になる。
つまり、HBM5は意欲的な開発目標ではあるものの、独立した製品実測値として確認された結果ではない。この点は、発表時の大きな倍率だけを見て判断しないために重要だ。
zHBMはAIアクセラレーターの真上にメモリーを置く
CUBEの中でも、より抜本的な構想がzHBMだ。一般的なHBMでは、メモリーはAIアクセラレーターの隣に配置され、先進パッケージやインターポーザーを介して接続される。zHBMでは、CPUやGPUなどのアクセラレーターの真上にメモリーを積層し、メモリーとロジックを垂直方向に一体化する。
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Samsungは、この構造にウェハーレベルの統合とハイブリッド銅接合を使うとしている。銅と銅を直接接続することで、従来より短く、密度の高い信号経路を形成し、帯域幅の向上とデータ移動に伴う電力削減を狙う。
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Samsungが示したzHBMの目標は、資料や比較対象によって表現に幅がある。報道では、HBM4E比で最大8倍の性能、最大3倍のワット当たり性能、さらに大幅な熱抵抗低減が示されている。
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zHBMの「4倍」と「8倍」が混在する理由
zHBMをめぐっては、性能向上幅が「4〜8倍」と報じられることがある。一方、Samsungのより明確な公開表現は、zHBMを組み込んだ次世代インターフェースシステムが、HBM5の約8倍の性能に達する可能性があるというものだ。
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報道間の違いは、比較対象となる世代や「性能」の定義が異なるためと考えられる。HBM4Eを基準にしているのか、HBM5を基準にしているのか。また、単一のメモリースタックの性能なのか、インターフェース全体の性能なのかでも数字は変わり得る。
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Samsungは、これらを突き合わせられる絶対的な帯域幅や試験条件をまだ公開していない。したがって現時点で安全に言えるのは、zHBMが「メモリーとアクセラレーターの距離を大幅に短縮し、より高密度な接続を目指すアーキテクチャ」であるということだ。出荷されるAIシステムで、確実に4倍または8倍の性能向上を実現したという意味ではない。
zHBMの実用化時期はまだ確定していない
SamsungはzHBMをコンセプトアーキテクチャとして提示しており、提供された報道資料の範囲では、確定した量産時期を示していない。
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特定の年に商用化されるという見通しは、Samsungが正式に確約した計画ではなく、業界側の予測として扱うべきだ。垂直積層はデータ経路を短くできる一方、熱、接合歩留まり、検査、修理、長期信頼性といった難題を同時に引き起こすためだ。
zNAND-Oはサーバー向けHBMとは別の狙い
SamsungのzNAND-Oは、サーバー向けのHBMとは異なる。垂直統合したNANDベースのソリューションとして、オンデバイスAIなど、高い記憶密度と通常のNANDより高速なアクセスを必要とする用途を想定している。
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報道では、DRAMを上回るビット密度と、一般的なNANDに対する読み出し帯域幅・電力効率の改善が目標として示されている。一部では2028年から顧客サンプルを供給する計画も報じられているが、提供された資料ではスケジュールの扱いが一貫していない。したがって、現時点では確定した発売日ではなく、報道された計画として見るのが妥当だ。
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DRAM首位でも、HBM競争の勝利を意味しない
Samsungは、DRAM市場全体では強い立場にある。Counterpoint Researchによると、2026年第2四半期の世界DRAM売上高シェアは、Samsungが39%、SK hynixが26%、Micronが**25%**だった。
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ただし、この数字をそのままHBMの世代別競争や3Dパッケージングの優位性と結びつけることはできない。DRAM全体の売上高には、AIアクセラレーター向け以外のメモリー市場も含まれるからだ。39%のシェアは、SamsungがHBM5、zHBM、ハイブリッド銅接合メモリーで先行していることを証明するものではない。
本当の競争は、現在どれだけDRAMを販売しているかだけでは決まらない。高性能な構想を、顧客がAIシステムに組み込める信頼性の高いパッケージへ変換し、大量生産できるかが焦点になる。
CUBEの成否を左右する4つの技術課題
熱管理
メモリーを高消費電力のアクセラレーターの真上に置けば、電気的な距離は短くなる。しかし、メモリーがより厳しい熱環境に置かれる可能性もある。重要なのは、発表上の熱抵抗だけではない。実際のAIワークロードでの持続温度、層間の温度差、ホットスポット、冷却装置との互換性、長期信頼性が問われる。
ハイブリッド銅接合の歩留まり
zHBMには、ウェハーの高精度な位置合わせと、清浄で平坦な接合面が必要になる。接合面積や接続密度が増えるほど、欠陥が組み立て全体に与える影響も大きくなる。良品ダイの選別や工程管理、部分的な不良を含むアセンブリーへの対応が重要になる。
検査と長期信頼性
垂直パッケージでは、接合後の電気検査に加え、潜在的な接続不良を検出しなければならない。反り、機械的応力、エレクトロマイグレーション、繰り返しの熱サイクルによる劣化も管理対象となる。これらは、最終的な歩留まりとコストに直結する。
積層数とパッケージ統合
層を増やせば容量は高められるが、冷却、電力供給、機械的信頼性は難しくなる。最適な構成は、アクセラレーターの消費電力、必要な容量、顧客のパッケージや冷却システム、製造エコシステムによって変わる可能性が高い。
まとめ:CUBEは「速いDRAM」から「立体的なシステム」への転換
CUBEは、SamsungがAIメモリーの競争軸を、DRAM単体の高速化からロジックとメモリーの垂直統合へ広げようとする戦略だ。
近い将来の製品方向としては、HBM5がHBM4E比で性能2倍、ワット当たり性能20%向上、熱抵抗20%低減を目標に掲げる。より長期的な賭けがzHBMで、AIアクセラレーターの上にメモリーを積み、ハイブリッド銅接合でデータ経路を短縮する。
ただし、最大の数字はまだ開発目標であり、定義が十分に明らかになっていない。CUBEの成否を決めるのは、発表資料で「2倍」や「8倍」と言えるかではなく、熱を制御し、接合歩留まりを確保し、十分な検査と信頼性を実現し、顧客のAIパッケージへ量産レベルで統合できるかどうかだ。