Qualcommは9月9日、次世代のプレミアムSnapdragonプラットフォームに向けた新しい「Hexagon NPU」の概要を明らかにした。焦点は、クラウドへ送らずスマートフォン本体で動かす、生成AIやAIエージェントのような長時間・マルチモーダルの処理だ。新設計では、Transformer向けの専用ハードウェアと、より大きなローカル共有メモリを導入する。
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何が変わるのか:Transformer専用の新ブロック
最大の変更点は、Transformer系ワークロードを対象とする専用ブロック「Element Accelerator」の追加だ。Transformerは、対話型AIや画像・音声も扱うマルチモーダルモデルを含む、多くの生成AIの基盤となるモデル構造である。
このアクセラレータは既存のスカラー、ベクター、テンソル系の演算リソースを置き換えるものではなく、それらと並行して働く位置付けだ。
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また、NPUの共有メモリは従来設計から50%拡大した。頻繁に参照されるモデルデータをNPUの近くに置き、システムメモリとのデータ転送を減らすことで、長い文脈、複数ツールの利用、同時タスクを扱うAIエージェントの応答性を維持する狙いがある。なお、Qualcommは共有メモリの絶対容量を公表していない。
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最大3.2万トークンの文脈と、初動を速めるprefill
Qualcommによると、新Hexagonアーキテクチャは最大3万2,000トークンのコンテキスト長をサポートし、KVキャッシュの高速化も備える。
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コンテキスト長は、AIモデルが1回の端末内セッションで参照・保持できる会話履歴、文書、作業の経緯の大きさに関わる。長くなるほど、例えば長文資料を前提にした対話や、途中経過を踏まえたタスク処理を継続しやすくなる。
さらにQualcommは、INT4モデルでprefillを最大50%高速化するとしている。prefillとは、ユーザーの入力を最初に読み込み、回答を生成する前の作業コンテキストを組み立てる段階を指す。この数値は、すべてのアプリやモデルで出力トークンの生成速度が50%上がるという意味ではない。対応精度はINT2、INT4、INT8、FP8、FP16に及ぶ。
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「300億パラメータ対応」はMoEが前提
Qualcommは、総パラメータ数が最大300億のMixture-of-Experts(MoE)モデルを動かせるとしている。ただし、同社が挙げた例では、各トークンで実際に有効化するのはおよそ30億パラメータだ。
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MoEは、入力やタスクに応じてルーティング機構がモデルの一部(専門家=Expert)だけを選んで処理する方式である。したがって、この主張は「毎トークン、300億パラメータすべてをスマホで計算する」という意味ではない。実現性は、必要なExpertだけを選択する仕組みのほか、モデル、実装、端末構成に左右される。
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NPUだけで完結しない、Snapdragonの3エンジン戦略
今回のNPU発表は、先行して示された次世代Oryon CPUとAdreno GPUの情報につながる。Oryon CPUは8コア構成で、最大5GHzのPrimeコア2基とPerformanceコア6基を搭載する予定だ。異種CPUコアが動的に割り当てられる共通キャッシュプールへアクセスできる「FlexCache」も採用する。
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GPU側では、Adreno Matrix Coresと18MBのAdreno High Performance Memoryが発表されている。「Adreno Neural Fusion」は、ニューラル処理、AI超解像、フレーム生成をグラフィックスパイプラインに統合する技術だ。Qualcommは対象となる描画処理で消費電力を最大40%削減できるとしているが、これは同社による主張であり、独立したベンチマーク結果ではない。
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全体像は、端末内AIを単一の演算器に任せない、異種プロセッサの使い分けである。
- Hexagon NPU:AIモデルの効率的な推論、AIエージェント型の継続処理
- Oryon CPU:汎用処理、アプリのロジック、専用アクセラレータに適さない処理
- Adreno GPU:並列的な視覚AIやグラフィックスAI、AI支援レンダリング
重要なのは、スマホのAI機能が必ずNPUだけで動くわけではない点だ。Qualcommは、端末メーカーが用途ごとにCPU、GPU、NPUを組み合わせ、低遅延で端末内に留まるAI体験を構成する考え方を示している。
まだ明らかになっていない点
今回の内容はアーキテクチャの事前公開であり、完全なプラットフォーム仕様ではない。Snapdragon Summitは米ハワイ州マウイで9月22日から24日にかけて開催予定だ。
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購入を検討するユーザーや開発者にとって、現段階の発表は性能の全体像というより、Qualcommがどの方向へ進むかを示すものと見るのが妥当だ。共有メモリの実容量、NPUの絶対的な演算性能、電力効率を含む第三者検証可能な詳細データは、まだ提示されていない。
5 実製品での構成や、スマートフォンでどこまで体感差につながるかは、今後の正式発表を待つ必要がある。