宇宙空間でAI計算基盤を構築するスタートアップ、Starcloudは、シリーズAの追加ラウンドで2.5億ドルを調達したと発表しました。ポストマネー評価額は23億ドルです。投資会社のManhattan Westがラウンドを主導し、新規投資家としてNVIDIAとCisco Investmentsが参加。既存投資家も引き続き加わりました。今回の調達により、2024年の創業以来の累計調達額は4.5億ドルに達します。1414
今回の調達で押さえるべき数字
- 新規調達額: 2.5億ドル(シリーズA追加ラウンド)14
- ポストマネー評価額: 23億ドル13
- 前回の評価額: 2026年3月時点で11億ドル111
- 前回の調達額: 2026年3月のシリーズAで1.7億ドル15
- 創業以来の累計調達額: 4.5億ドル1414
- 主導投資家: Manhattan West14
今回の追加ラウンドは、3月の資金調達からわずか数カ月後に実施されたものです。報道によると、Starcloudの評価額は前回から2倍以上に伸びました。511
NVIDIAやCisco、既存投資家が参加
ラウンドを主導したのはManhattan Westです。新規投資家として名前が挙がっているのは、NVIDIA、Cisco Investments、Cedar Capital、Goanna Capital、Standard Capital。既存投資家からは、Benchmark、EQT、Soma、NFX、776などが参加しました。14711
また、Manhattan WestのLauren Selig氏は、Starcloudの取締役会オブザーバーに就任したと報じられています。1016
調達資金は製造、打ち上げ、Starcloud-3へ
Starcloudによると、今回の資金は主に次の4分野に使われます。
- 製造能力の拡大: 宇宙機と軌道上コンピューティングシステムの生産体制を強化する。
- NVIDIAとの技術開発: 宇宙特有の厳しい環境に耐えるハードウェアの設計など、共同エンジニアリングを進める。
- 将来の打ち上げ枠の確保: 今後の展開計画に向け、ロケットの打ち上げ能力を調達する。
- Starcloud-3の開発: 同社最大の宇宙データセンター用宇宙機と位置づける機体を前進させる。Starcloud-3は、SpaceXが開発中の大型ロケット「Starship」での打ち上げを想定しています。23514
報道では、Starcloud-3の生産に向け、米ワシントン州ウッディンビルに10万平方フィートの新しい製造施設を建設する計画も伝えられています。8
放射線と熱を想定したNVIDIAとの宇宙向けAI開発
NVIDIAの出資は、単なる資金面の支援にとどまりません。StarcloudとNVIDIAは、軌道上での利用を想定したAIハードウェアシステム、Space-1 Vera Rubin Moduleの開発に取り組んでいます。612
宇宙用のAIコンピューティング機器には、地上のデータセンターとは異なる課題があります。機器は放射線にさらされるため、耐放射線設計が必要です。また、地上のように空気や水を使った冷却に頼れないことから、大型のラジエーターで熱を放射して逃がす仕組みが求められます。612
今回の協業に先立ち、Starcloudは2025年11月、Starcloud-1衛星にNVIDIAのH100 GPUを搭載して軌道へ運んだと報じられています。67
最終目標は8万8000基、20ギガワットの軌道上計算能力
Starcloudは長期的に、8万8000基の衛星からなるコンステレーションを構築し、軌道上で合計20ギガワットの計算能力を提供する構想を掲げています。同社は、8万8000基の宇宙機を運用するための許可を米連邦通信委員会(FCC)に申請したとも報じられています。5913
ただし、これらはあくまで同社の目標と規制上の計画です。8万8000基すべてについて、承認・製造・資金調達が済んだことを意味するものではありません。5913
同社が示す構想の根拠は、宇宙空間なら継続的に太陽光を利用でき、放射冷却も活用できるという点にあります。地上でデータセンターを拡張する際に生じる、電力や許認可に関する制約の一部を回避できる可能性があるとStarcloudは説明しています。1722
SpaceXのIPOとの関係はどこまで明確か
今回の調達は、SpaceXや、宇宙空間へのAIインフラ展開をめぐる競争に投資家の関心が集まる時期に行われました。Starcloud-3がSpaceXのStarshipでの打ち上げを想定していることから、両社を同じ市場の流れの中で捉える報道もあります。3514
一方、提供された報道資料からは、SpaceXのIPOが今回の投資を直接引き起こしたことや、投資家がIPOを理由にStarcloudへの出資を決めたことは確認できません。より確かな関係は戦略面です。Starcloudは、宇宙を利用したAIインフラへの期待を、宇宙機の製造、NVIDIAと開発するハードウェア、そして将来の打ち上げ能力への具体的な支出へと変えようとしています。
その意味で、今回のラウンドは評価額の上昇だけを示すものではありません。若い企業であるStarcloudが、壮大な「軌道上でAIを計算する」という構想を、量産可能なハードウェアとロケットへのアクセスに結びつけられるかを試す資金調達でもあります。23億ドルという評価額は投資家の強い期待を示す一方、製造、規制、打ち上げという実行上の課題は、長期ビジョンの実現までになお多くの段階が残されていることも示しています。