ソフトウェア面も極めて攻めている。RTX Sparkは、Nvidiaのフルスタック技術、すなわちCUDA、DLSS、TensorRT、OptiX、Reflex、G-SYNCを、薄型軽量のWindows on Armフォームファクターに初めて搭載する 。加えて、DLSS 4.5やレイ再構築のアップデートも併せて発表された
。
物理的なデザイン面では、RTX SparkノートPCはわずか14mmの薄さ、約1.4kgの重さ、14~16インチの精密機械加工アルミニウムシャーシを採用。明らかに、IntelのEvoプラットフォームやAppleのMacBook Airが支配するウルトラブック市場を狙った設計だ 。
Nvidiaはこのチップを単独で発表したわけではない。まさに「オールスター」とも言えるOEMパートナーをステージに揃えた。今秋、RTX Sparkを搭載したノートPCと小型デスクトップを出荷するのは、ASUS、Dell、HP、Lenovo、Microsoft Surface、MSIの6社。さらに、AcerとGIGABYTEも後日モデルを投入する 。一部報道によれば、全パートナーから合計30機種以上のノートPCと10機種以上のデスクトップが出荷される見込みで、これはWindows on Arm史上最大規模の同時ローンチとなる
。
具体的な製品としては、MSIが2-in-1の薄型軽量モデル「Prestige N16 Flip AI+」を発表 。ASUSは『リーグ・オブ・レジェンド』のワールドチャンピオンチーム「T1」とコラボしたGeForce RTX 50シリーズのグラフィックカードも発表したが、同社はRTX Sparkのローンチパートナーでもある
。最も注目すべきは、MicrosoftのSurface部門が初期コラボレーターとして名を連ねた点だ。Microsoftが設計したPCに、Nvidiaが設計したメインプロセッサが搭載されるのは、今回が初めてとなる
。
市場は、RTX Sparkの発表を「ゼロサムゲーム」の敗者と勝者を決めるイベントと見なした。Nvidiaの株価は、6月1日(月)に**6.26%**急騰し、224.36ドルで取引を終えた 。取引前の夜間取引でもNvidiaとMicrosoftは共に2.3%上昇しており、個人投資家の間でも強気のセンチメントへの転換が見られた
。この上昇は市場全体に波及し、S&P 500とNASDAQを同時に過去最高値へと導く原動力となった
。
一方、既存のPC向けチップサプライヤーは、この勢いに乗ることができなかった。IntelとAMDはそれぞれ4%と3%下落。そして、Windows on Arm分野でRTX Sparkの最も直接的な競合となるSnapdragon X Eliteを擁するQualcommに至っては、6%も急落した 。アナリストは、Nvidiaが直接的に狙うPC向けCPU市場の規模が2000億ドル(約30兆円)に上ると指摘している
。
なお、一日の中でNvidiaの株価が一時的に下落する場面もあった。しかしこれは、発表内容に対する失望感ではなく、米国政府がマレーシア経由での中国向けAIチップ輸出規制の抜け穴を塞ぐニュースが同時に流れたためと分析されている 。
RTX Sparkがコンシューマー向け発表の主役だった一方で、最も重要な地政学的な動きは舞台裏で進行していた。フアンCEOは6月1日夜、台湾・大安区で初の「Korea Partner Night」を主催。Samsung電子、SK hynix、LG電子、現代自動車、Naver Cloudの幹部が一堂に会した 。NvidiaがComputex期間中に韓国パートナー専用のイベントを開催したのは、これが初めてのことだ
。
この会合の中心議題は、韓国のAIファクトリーに25万基以上のNvidia GPUを配備するという正式なコミットメントだった。これにより、韓国は台湾、日本と並ぶ「Tier 1(最優先)のAIサプライチェーンノード」としての地位を固めたことになる 。フアンCEOは、韓国をNvidiaのAI戦略に不可欠な軸と表現し、議論を半導体の枠を超えて、ロボティクスやフィジカルAIの分野にまで拡大。現代自動車や斗山(Doosan)のような産業プレイヤーが重要であることを示唆した
。
フアンCEOはさらに踏み込み、「もしソウルが望むなら、GTC(GPU Technology Conference:Nvidiaの年次開発者会議)をソウルで開催することも可能だ」と発言。加えて「今度訪れた際にはサムギョプサルを食べたい」とも語り、韓国市場への強い関心をアピールした 。その後、週内にソウルを訪問し、提携協議を進める予定も明らかにされた
。
Nvidiaの方針は、韓国の半導体産業をすでに再形成しつつある協力関係を、一層深化させるものだ。Nvidiaのユニファイドメモリアーキテクチャへの傾斜は、LPDDR DRAMを主軸とする韓国メモリサプライヤーへの直接的な需要を生み出す。また、フィジカルAIとロボティクスへの進出は、同国の自動車・産業用コングロマリットとの新たな協業チャネルを開く 。こうした動きも追い風となり、韓国総合株価指数(KOSPI)は、5月下旬に史上初めて8,000の大台を突破したのに続き、Computex開催週を通じて最高値更新のラリーを続けた
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