マイクロソフトは、年次開発者会議「Microsoft Build 2026」において、Web IQ を発表しました。これは、AIシステムのための検索のあり方を根本から再考した、AIネイティブなグラウンディング(情報の裏付け)API群です。人間が閲覧するためにページランク付けやリンク表示を最適化する従来の検索とは異なり、Web IQはAIエージェントが効率的に処理できる形式で、必要な「証拠」だけを提供するためにゼロから構築されています 。同社はこれを「AIシステムのための検索エンジン」と表現しています
。
従来の検索API(例:2025年8月に廃止されたBing Search v7)は、人間向けのアプリケーションを想定し、ウェブページ全体やSERP(検索エンジン結果ページ)形式のJSONを返していました 。このような結果では、AIモデルはナビゲーション、広告、無関係な段落などに含まれる大量のトークンを無駄に消費しながら、文書全体を読み解く必要がありました。
Web IQは、このモデルを逆転させます。Bingの検索インデックスを基盤としながら、コンテンツのインデックス化、ランク付け、選択の方法を、機械による消費のために完全に再設計した検索スタックを採用しています 。このAPIが返すのは、ドキュメント全体ではなく、ページの有用な部分のみを含む「パッセージ」と「構造化された証拠オブジェクト」 です
。検索レイヤー自体が、どのようなクエリを実行し、どこまで深く掘り下げ、いつ停止するかを推論するため、AIエージェントのワークフローが要求する繰り返しの多い多段階の情報検索に適しています
。
このAPIは、ウェブページ、ニュース、画像、動画 を含む複数のコンテンツタイプにわたるグラウンディングをサポートしています 。これは、Web IQが単なるテキスト検索ツールではなく、包括的なウェブインテリジェンスレイヤーとして位置づけられていることを示しています。
マイクロソフトは、Web IQのパフォーマンスについて非常に意欲的な主張を展開しています。検索・AI部門担当プレジデントのジョルディ・リバス氏はインタビューで、同システムがP95レイテンシで165ミリ秒未満を達成していると述べました。これはつまり、リクエストの95%が165ミリ秒未満で応答することを意味します 。さらに、市場に出回っている次善の代替製品よりも約2.5倍高速であると主張しています
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トークン効率に関しても、Web IQはウェブページ全体ではなくパッセージと構造化証拠を返すという設計そのものが、重要な最適化です。マイクロソフトはこれを「最小のコストで最高品質の回答を提供する」ものだと位置づけています 。これは、AIエージェントが1つのタスクで数十回のウェブ検索を連続して実行するようなシナリオで、その真価を発揮します
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Web IQは、既にマイクロソフト自身のAI製品に統合されています。このAPI群は、Microsoft Copilot のウェブグラウンディングレイヤーを形成すると同時に、OpenAIのChatGPT におけるウェブ検索の裏付けも支えています 。ジョルディ・リバス氏はBuild 2026前後のメディアインタビューで両方の統合を認めていますが、今後の追加顧客については現時点では明らかにしていません
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このAPIは、Microsoft IQ という、より広範なインテリジェンスレイヤーの一部です。Microsoft IQは、GitHub Copilot、Microsoft Foundry、Copilot Studio全体で一般提供されています 。これは、マイクロソフトのプラットフォーム上でエージェントを構築する開発者が、他のIQの柱と並んで、Web IQをライブなウェブグラウンディングのために利用できることを意味します。
Web IQは、AIエージェントを世界の知識と企業インテリジェンスの両方に根付かせる(グラウンディングする)ために設計された統一コンテキストレイヤー「Microsoft IQ」の下で、相互接続された4つの機能の1つです 。
| 柱 (Pillar) | グラウンディングの対象 |
|---|---|
| Work IQ | Microsoft 365のシグナル(メール、ファイル、チャット、会議)から得られる職場の知識 |
| Fabric IQ | 構造化されたビジネスデータとビジネスセマンティクス |
| Foundry IQ | エージェントが発見・参照するための再利用可能なナレッジベース |
| Web IQ | オープンなウェブ全体からのライブなウェブグラウンディングと最新の情報 |
このプラットフォームアプローチにより、開発者は一度構築するだけで、信頼できる組織のコンテキストをエージェントが動作するあらゆる場所で再利用できます 。あるエージェントが、Work IQで誰かのメール履歴を理解し、Fabric IQで売上データベースにクエリを実行し、Web IQで最新のニュースや市場データを取得する、といったことが、一貫したグラウンディングレイヤーを通じて可能になるのです。
提供されたソースリストは、この移行のタイムラインを明確に示しています。マイクロソフトは2025年8月11日に、Bing Search API v7とBing Custom Search APIを廃止しました 。この日付以降、既存のインスタンスは完全に使用停止となり、新規サインアップもブロックされました
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当初の移行先は、Azure AI Agents内の「Grounding with Bing Search」でした。これは、Bingの結果をマイクロソフト管理のエージェント内にラップするもので、従来のスタンドアロンREST APIとは根本的に異なるアーキテクチャです 。直接の検索APIアクセスを必要とする開発者は、Brave、DuckDuckGo、Firecrawlなどのサードパーティ代替手段を紹介されました
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Web IQは、その方向転換の次世代を担うものです。単に開発者をAzure AI Agentエコシステムへ誘導するのではなく、Bingのウェブクローリングとインデックス化のインフラをAIネイティブな消費のために再パッケージ化した、専用構築のグラウンディングスタックを提供します 。これは、廃止されたBing APIの精神的な後継であると同時に、人間向けの設計からのアーキテクチャ上の決別でもあります。
Web IQは、GoogleやBrave、DuckDuckGo、Firecrawl、Perplexityなど、複数の企業がAIシステム向けの最良のウェブグラウンディング基盤を競って構築している市場に参入します。Web IQを通じて表現されるマイクロソフトの賭けは、既存のBingのウェブスケールのインデックスと、AIによる消費のために特別に再構築された検索スタックを組み合わせることで、速度、トークン効率、グラウンディングの品質において競争優位を提供できるということです 。
今回の発表は、マイクロソフトをAzureやCopilotを通じたAIモデルの提供者としてだけでなく、AIシステムがライブなウェブに接続し続けるために必要なデータインフラの提供者としても位置づけるものです。Web IQ、代替プロバイダー、あるいは内製の検索機能のいずれを使用するかというインフラの選択は、エージェントアプリケーションがリアルタイム情報を今後何年にもわたってどのように扱うかを形作ることになるでしょう。
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Microsoft Web IQは、Bingの検索インデックスをAIネイティブな検索レイヤーとして再構築した、新しいグラウンディングAPI群。人間のブラウジングではなく、AIエージェントの推論のために設計されている。
Microsoft Web IQは、Bingの検索インデックスをAIネイティブな検索レイヤーとして再構築した、新しいグラウンディングAPI群。人間のブラウジングではなく、AIエージェントの推論のために設計されている。 Web IQは、ウェブページ全体ではなく、「構造化された証拠オブジェクト」とパッセージを返す。マイクロソフトは競合より約2.5倍高速と主張し、既にCopilotとChatGPTを支えている。
2026年6月のBuildで発表されたWeb IQは、Work IQ(職場の知識)やFabric IQ(ビジネスデータ)と並ぶ、マイクロソフトの広範な「IQ」プラットフォームの中核の一つ。