この2人はEon Productionsを通じて何十年もシリーズを守り続け、俳優の交代や作品の方向性を含め、007の世界観を形作ってきた存在だ。そのため、ダニエル・クレイグ時代の作品に出演したセドゥにとっても、この変化は「ひとつの時代の終わり」に感じられたとみられる。
つまり今回の移行は、家族的な制作体制から、大手テック企業を背景に持つスタジオ主導の時代への大きな転換と言える。
一方で、セドゥの不安を和らげたのが監督の人選だった。
Amazon MGMは、次のボンド映画の監督としてドゥニ・ヴィルヌーヴを正式発表。さらにエイミー・パスカルとデヴィッド・ヘイマンがプロデューサーを務め、ターニャ・ラポワントがエグゼクティブプロデューサーとして参加する体制が明らかになっている。
セドゥはこの決定について、「少なくとも映画になる」とコメント。 これは、ヴィルヌーヴが視覚的スケールと作家性を両立させる監督として評価されていることを踏まえた発言とみられる。
制作チームには、英国ドラマ『ピーキー・ブラインダーズ』のクリエイターとして知られる脚本家スティーヴン・ナイトも参加する。Amazon MGMは、彼が次回作の脚本を担当すると発表している。
ヴィルヌーヴの演出とナイトの脚本という組み合わせは、シリーズを単なる巨大フランチャイズではなく、映画としての完成度を重視する方向で再始動させようという意図を示している。
ダニエル・クレイグの時代を経験した俳優たちにとって、今回の変化は一つの区切りでもある。ブロッコリとウィルソンが長年守ってきたボンドの伝統が終わり、新しい制作体制のもとで次の章が始まるからだ。
それでもセドゥの反応は完全な悲観ではない。懐かしさと同時に、ヴィルヌーヴのような映画作家が関わることで、007が今後も“映画館で観る価値のあるシリーズ”として続いていくことへの期待もにじんでいる。