こうした違いのため、EUは
・交渉を始めるタイミング
・交渉の前提条件
・EUを代表する交渉役
といった基本的な点についても、まだ共通方針を固められていない。
EU内の議論には複数の主要指導者が関わっており、意見の幅が浮き彫りになっている。
欧州理事会のアントニオ・コスタ議長は、EUとしてロシアとどのように向き合うのかを明確にすべきだと訴え、「いつ、どのように関与するのか」を加盟国が決める必要があると強調した。
また、フランスのエマニュエル・マクロン大統領やフィンランドのアレクサンデル・ストゥブ大統領も、最終的な和平に向けてロシアとの直接的な接触が必要になる可能性をめぐる議論に関わっているが、EUとしての統一見解には至っていない。
一方、カラス氏自身は慎重な姿勢を示している。EUはまだロシアと交渉する準備が整っておらず、まず加盟国同士で交渉の目的や要求事項を整理する必要があると強調している。
「ロシアと話す前に、まず私たち自身が何について話すのかを決めなければならない」とカラス氏は述べている。
ロシア側は、EUの現外交トップよりも別の人物が交渉役になることを示唆している。
プーチン大統領は、ドイツの元首相ゲアハルト・シュレーダー氏がロシアと欧州の仲介役になり得る人物として名前を挙げた。欧州側が信頼し、なおかつロシアに対して強い敵対発言をしていない人物が望ましいという考えを示した形だ。
この発言は、ロシアがより対立色の弱い交渉相手を求めていることを示唆している。
ロシアとの直接交渉の可能性については、2026年5月下旬に予定されているEU外相の非公式会合で正式に議論される見通しだ。
この会合では、交渉を行うべきかどうかだけでなく、もし交渉が始まる場合にEUとしてどのような条件や要求を提示するのかも検討される予定だ。
EU内の立場の違いが解消されない限り、ウクライナ戦争をめぐる将来の交渉でEUがどのような役割を果たすのかは依然として不透明なままとなっている。