特に重点が置かれているのが、軍事境界線(MDL)を警備する最前線部隊だ。MDLは、南北を分断する非武装地帯(DMZ)の中心を走る事実上の国境線であり、ここをより強固にすることで「戦争をより徹底的に抑止する」必要があると金氏は強調した。
今回の会議は、単なる国境警備の指示以上の意味を持つ可能性がある。理由の一つは、参加した指揮官の範囲の広さだ。
金氏はDMZ周辺の部隊だけでなく、軍全体から師団長や旅団長クラスの指揮官を招集した。
この点は次のような意味合いを示唆している。
報道によれば、金氏は軍事訓練システムの調整や実戦的な演習の拡大も指示しており、防御施設の建設だけでなく、作戦思想や部隊運用の変化も伴うとみられている。
前線部隊の近代化や訓練強化が強調されている背景には、近年の戦争で明らかになった戦場の変化がある。
現代の戦争では次のような技術が大きな役割を持つ。
こうした状況では、従来型の固定防御や砲兵陣地は攻撃を受けやすくなる。部隊の機動性や訓練、装備の更新が重要になるため、北朝鮮も前線部隊の能力向上を急いでいるとみられる。
実際、金氏は最近、ソウル圏に届く射程を持つ新型長距離砲の生産を視察しており、韓国国境付近への配備を念頭に置いた通常戦力の強化が進んでいる。
今回の指示は、北朝鮮が近年進めてきた国境防御強化の動きとも一致する。
韓国政府や軍、専門家の分析では、次のような兆候が確認されている。
防御工事の再開
韓国軍によると、北朝鮮は冬季の中断後、DMZ北側での防御施設建設を再開した。フェンス設置や地雷敷設などを含む国境強化が進められているという。
対戦車障壁の建設
韓国の国会議員は、衛星画像と軍情報を基に、DMZ内に約10キロメートルの対戦車障壁が複数の区画で建設されたと指摘している。
大規模な防御線の整備
衛星画像の分析では、北朝鮮がDMZの国境線の約74%を再要塞化した可能性が示されており、体系的な防御強化が進んでいるとみられる。
これらにはフェンス、地雷、コンクリート障壁などが含まれ、地上侵攻を遅らせたり阻止したりする目的がある。
一方で、海上国境の要塞化については明確な証拠は限られている。
北朝鮮は新型艦艇やミサイルなど海軍戦力の強化を進めていると指摘されているが、DMZのように物理的な防御施設を海上で構築しているという確証は現時点で少ない。
現状では、北朝鮮が最も重点を置いているのは韓国との陸上国境の防御強化とみられている。
金正恩氏の今回の指示は、大きく3つの要素を組み合わせたものといえる。
南北は1953年の休戦以降、法的にはいまだ戦争状態にある。世界で最も軍事化された国境の一つとされるDMZは、技術や戦略の変化とともに今も形を変え続けている。