ダイモン氏はBloombergのインタビューで、同行はAIに2012年から取り組んでおり、約2000人が関与し、年間約20億ドルを投じていると述べた。用途として挙げたのは、リスク管理、不正検知、マーケティング、アイデア創出、顧客サービスなどだ。
別のBloombergクリップでは、JPモルガンがAI投資から年間ほぼ同額の節約効果を得ており、すでに数百件のユースケースがあるとダイモン氏が述べたと報じられている。
つまり、これは一つの「AI商品」の話ではない。バックオフィスの自動化、リスク統制、顧客対応、社員向けツール、意思決定支援が同時に進む、銀行全体の業務再設計に近い。
短期的に最も見えやすい効果は効率化だ。ダイモン氏は、AI関連支出とほぼ同額の年間節約がすでに出ているとし、さらなるコスト削減余地は「氷山の一角」だと述べている。
株主向け書簡をめぐる報道では、ダイモン氏がAIは銀行業務のほぼすべての部分に影響し、生産性を高める一方で一部の仕事をなくすと見ている、と伝えられた。 別の要約では、AIは顧客サービスと社内の従業員向けシステムの双方に影響するとされている。
ここでのポイントは、AIの効果が「便利なチャットボット」にとどまらないことだ。実際の利益は、仕事の流れ、承認プロセス、チーム構成を変えることで出てくる。
ダイモン氏は、AIがすべての従業員を単に助けるだけだとは見ていない。2026年2月の報道によると、JPモルガンは自動化で役割が置き換わる従業員に向けた「大規模な再配置計画」を始め、全体の人員を約31万8500人に保ちながら、オペレーション職を4%、サポート機能を2%減らしている。
またダボスでは、AIの進展が社会にとって速すぎる可能性があると警告し、政府と企業が協力して人々を再訓練する仕組みが必要だと述べた。
したがって、確認できる範囲で言えるのは、ダイモン氏がAIによる仕事の変化、タスクや職務の消滅、そして大規模なリスキリングの必要性を想定しているということだ。ただし、提供資料だけでは、AIが原因でJPモルガンの何人が削減されるかという具体的な人数は確認できない。
AIの次の制約は、モデルの賢さや半導体だけではない。ゴールドマン・サックスは、AIインフラ支出が2026年に約7650億ドル、2031年に1.6兆ドルへ達し、2026〜2031年の累計ではコンピューティング、データセンター、エネルギーを合わせて約7.6兆ドルに上る可能性があると見積もっている。
最も分かりやすい制約は電力だ。ゴールドマン・サックスのレポートは、約47GWの追加発電能力が必要になると見積もり、新規プロジェクトを送電網につなぐための長い系統接続待ちが課題だと指摘している。
Deloitteも、米国のAIデータセンターの電力需要が2024年の4GWから2035年には123GWへ増える可能性があると推計し、米国の電力会社・データセンター幹部を対象にした調査で、送電網への負荷がインフラ開発上の最大の課題だったとしている。
AIデータセンターは、単にサーバーを並べた施設ではない。ゴールドマン・サックスは、AIデータセンターを高密度サーバーを中心にした電力・熱管理の統合システムとして捉える必要があるとし、McKinseyもAIがデータセンターを高密度ワークロード向けの電力・熱統合システムへ変えていると説明している。
さらにMcKinseyは、データセンターのバリューチェーンにある長納期の重要部品を、産業機器サプライヤーが十分に生産できるかが成長制約になり得ると指摘している。
高密度のAIアクセラレーターは大量の熱を出す。世界経済フォーラムは、かつて数百個のGPUで動いていたAIクラスターが今では数万個を必要とし、制約はシリコンだけでなく、熱、電力、接続性、メモリーに広がっていると指摘している。
同記事は、GPUの熱密度に空冷が追いつきにくくなるなか、液冷、液浸冷却、新しい熱設計が実験段階から必須の基盤要件へ移ったとも述べている。
大規模AIクラスターでは、多数のGPUやシステムを高速かつ安定してつなぐ必要がある。ただし、提供された資料の範囲では、光ファイバー不足だけを独立したボトルネックとして数量化する根拠は示されていない。
より安全に言えるのは、光ファイバーを含む接続インフラが、より広い「高速接続」の制約の一部だということだ。世界経済フォーラムは接続性をAIクラスターの制約の一つに挙げ、別の報告も投資上のボトルネックがシリコンから高速接続とエネルギー供給へ移りつつあると説明している。
原材料も重要になり得るが、今回の資料でより強く裏づけられているのは、特定の鉱物不足ではなく、部品・装置の供給制約だ。McKinseyは長納期の重要部品を成長制約として挙げ、世界経済フォーラムはデータセンター投資の多くが冷却、発電、周辺ハードウェアに向かうと説明している。
ダイモン氏のメッセージは、AI導入は未来の話ではなく、すでに進行中だというものだ。JPモルガンは中核的な銀行業務にAIを広げ、巨額のテクノロジー予算を組み、自動化で職務が変わる従業員の再配置にも備えている。
一方で、AIブームの次の段階は、電力、送電網接続、高密度データセンター、冷却、ネットワーク、長納期部品といった現実の設備能力に左右される。ソフトウェアがいくら速く進化しても、普及の速度は、すぐには増やせないインフラによって決まる可能性がある。