インドネシアは2026年7月17日、中国・上海でHuaweiとByteDanceの幹部と会談し、AIとデジタル経済をめぐる具体的な協力を提案しました。単にAIツールを導入するのではなく、インフラ、人材、行政サービス、企業支援、研究開発までを一体で整備し、投資と技術移転を呼び込む構想です。12
会談を主導したのは、インドネシアのアイルランガ・ハルタルト経済担当調整相です。訪中の主目的は、世界人工知能協力機構(WAICO)の設立協定への署名でした。協定は7月16日に締結され、HuaweiとByteDanceとの協議はその翌日に行われました。24
Huaweiに示した4つの協力分野
アイルランガ氏がHuaweiおよびデジタル分野の協力先に示した重点分野は、次の4つです。
- AI・クラウドインフラへの投資:AI開発に必要な計算資源やクラウド基盤の整備
- デジタル人材とサイバーセキュリティ:人材育成の仕組みとサイバーセキュリティのエコシステム強化
- 政府サービスと中小零細企業のデジタル化:行政サービスや零細・中小企業のデジタル化の加速
- データセンターのグリーンエネルギー化:データセンターの運用に環境配慮型エネルギーを導入する取り組み12
インドネシア側は、AI、通信インフラ、クラウドコンピューティングの能力を持つHuaweiを、戦略的な協力候補と位置づけました。1
この提案の特徴は、AIの利用場面だけでなく、それを支える計算基盤や通信網、セキュリティまでを対象にしている点です。政府や中小零細企業がデジタル化の恩恵を受けるには、サービスやアプリケーションだけでなく、安定した基盤と担い手が必要になるためです。
ByteDanceには商取引と先端AIの両面で協力要請
ByteDanceとの協議では、同社が関わるデジタル商取引と、将来のAI研究の双方が議題になりました。
TokopediaとTikTok Shopを通じた中小零細企業支援
アイルランガ氏は、ByteDanceによる投資と、TokopediaおよびTikTok Shopを通じたインドネシアでの長期的な事業展開を歓迎しました。インドネシア政府は、両サービスが国内のデジタル商取引エコシステムを支え、零細・中小企業がオンラインで顧客を開拓し、越境取引に参加するための経路になり得るとみています。1
さらに、インドネシア製品を海外市場に届ける機会を広げることも視野に入れています。これは、ByteDanceの消費者向けプラットフォームを、国内企業の販路拡大や輸出機会につなげようとする提案です。1
大規模言語モデルや生成AIの研究
インドネシアはByteDanceに対し、次の分野での協力も検討するよう呼びかけました。
- 大規模言語モデル
- 機械学習
- 生成AI
- インドネシア国内のAI研究センター
- デジタル人材の育成1
提案の背景として、インドネシア側は大きなデジタル市場、拡大するデジタル人材層、包摂的なAIエコシステムへの取り組みを強みとして示しました。1
ただし、報道で示されているのは協力の招請と検討分野であり、これらのプロジェクトについて具体的な契約が成立したという意味ではありません。
WAICO加盟が上海訪問に与えた意味
WAICOは、中国が主導する政府間組織で、AIをめぐる国際協力とガバナンスの強化を目的としています。インドネシアは29カ国の設立署名国の一つとなり、アイルランガ氏が2026年7月16日に上海で設立協定に署名しました。24
インドネシアはWAICOへの参加を、人間を中心に据え、公益性、安全性、公平性、そして発展途上国にも開かれたAI開発を進める機会と説明しています。25
この文脈に立つと、HuaweiとByteDanceとの会談は、国際的なAI協力と国内の経済政策を接続する試みだったといえます。インドネシアはWAICOでの立場を足がかりに、投資、技術移転、研究センター、人材育成、国内企業の競争力強化につなげようとしています。1215
「市場」からAIの担い手へ――経済外交の狙い
今回の直接的な狙いは、高付加価値のテクノロジー投資を誘致しながら、国内のデジタル能力を高めることです。政府の agenda は、次のように整理できます。12
- AI・クラウドコンピューティングへのインフラ投資
- デジタル人材とサイバーセキュリティ能力の強化
- AIの研究開発
- 行政サービスと零細・中小企業のデジタル化
- インドネシア製品の海外展開
- データセンターの持続可能なエネルギー利用
インドネシアは、自国を単なる巨大な消費市場としてではなく、世界のデジタル経済やAI協力のルール形成に関わる側に位置づけようとしています。WAICOの設立署名国になったことも、その姿勢の表れとして説明されています。710
したがって、7月17日の会談は、HuaweiやByteDanceとの単一の大型契約を発表する場というより、インドネシアのデジタル変革に必要な基盤、人材、研究、商取引、技術移転を具体的な協力候補に結びつける場でした。上海訪問では、AI外交を国内経済の成長機会へ変えるための交渉が進められたことになります。