ゲーム運営側にとっては、プレイヤー同士の取引や価値交換を、非公式の外部マーケットに頼らず管理しやすくなる可能性があります。金融取引をゲームのアカウントやコミュニティとつなげられる点が、この製品の大きな特徴です。
Embedded Payoutsは、ゲーム内からプレイヤー、クリエイター、eスポーツ競技者などへ報酬を支払うための機能です。ZBDによると、銀行口座、Cash App、ギフトカード、プッシュ・トゥ・カードへの払い出しに対応し、本人確認から支払いまでのプロセスを管理します。
Embedded Rewardsは、ゲーム内の行動、進行上の節目、ライブ運営イベントなどに現実の価値を持つ報酬を結び付ける仕組みです。別の報酬アプリや外部ウェブページを開かせるのではなく、ゲームプレイそのものに報酬を組み込むことを狙います。
ZBDは、コンプライアンス対応や不正対策をインフラ側で扱いながら、継続率や顧客生涯価値(LTV)の向上に役立つ機能として位置付けています。クロスプラットフォームパブリッシャーのJoygameはEmbedded Rewardsを導入し、Turborillaは毎日のログインに現実の価値を与えるロイヤルティ施策でZBDと協力しています。
ZBDは過去にTapNationの『Idle Bank』にも現金報酬の仕組みを導入しました。同社のケーススタディでは、統合後に継続率と1日アクティブユーザーあたり平均収益が向上したと報告されています。ただし、これらはZBD自身による事例報告であり、独立した調査結果ではありません。
Branded Debit Cardsは、ゲームブランド仕様にカスタマイズできるホワイトレーベル型のデビットカードです。現実世界での買い物とゲーム内特典を結び付け、例えば食料品や燃料の購入に応じて、ゲーム内通貨、サブスクリプションの割引などを提供できます。
ZBDは、カードの基盤、仮想通貨への変換、コンプライアンス対応を管理すると説明しています。日常の支出でゲーム内特典が貯まり、その特典が再びゲームへの利用を促す——ゲームの外側まで広がるロイヤルティの循環を作る考え方です。
ZBDは、プラットフォームを次のような双方向の金融システムとして説明しています。
公表されている払い出し先は、銀行口座、Cash App、ギフトカード、プッシュ・トゥ・カードです。ZBDは、1セント未満を含む非常に小さな金額の払い出しにも対応し、コンプライアンスと不正対策の機能を備えるとしています。
これは、ゲーム内通貨を販売する従来型の決済システムより広い構想です。プレイヤーへの報酬、クリエイターへの報酬、競技ゲームの賞金、ゲーム外のロイヤルティ施策など、ゲームを中心とした複数の金融関係を支える基盤を、パブリッシャーに提供しようとしています。実際の仕組み、利用条件、対応地域は、各タイトルの導入方法や適用される規制によって異なります。
発表で挙げられた主な導入企業・パートナーは次の通りです。
これらの例からは、ZBDが一つの用途だけでなく、紹介による新規ユーザー獲得、ゲーム内報酬による継続利用、ゲーム外のロイヤルティ、プレイヤーやクリエイターへの支払いを同時に狙っていることがうかがえます。
ZBDは、RAINE、スクウェア・エニックス、Lakestarなどから累計9,000万ドルを調達したとしています。この中には、Blockstream Capital Partnersの支援を受けて2026年1月に発表した4,000万ドルのシリーズCが含まれます。調達資金は、ゲーム向けのエンドツーエンドの決済インフラ拡大に充てられる予定です。
また同社は、米国の大半の州と欧州経済領域(EEA)でライセンスを取得していると説明しています。今回の発表を、2019年から7年間にわたり、技術開発と規制下の金融サービスに必要なライセンスの確保を進めてきた取り組みの成果と位置付けています。
このライセンスとコンプライアンス対応は、ZBDの製品戦略の中核です。現金報酬、プレイヤー間マーケットプレイス、払い出しをゲームに導入すると、通常のゲーム内経済にはない規制上の義務が発生します。そのため、導入を検討するスタジオは、各タイトルで適用される地域、本人確認の責任範囲、不正対策、運用条件を個別に確認する必要があります。
今回の発表は、決済を単なる購入手続きではなく、ゲームが継続的に動く経済圏の一部として捉える流れを示しています。各製品を単独で使うこともできますが、ZBDが提示する大きな構想は、入金、報酬、取引、クリエイターへの価値還元、払い出しを一つの金融レイヤーでつなぐことです。
パブリッシャーにとっては、継続率やロイヤルティを高める施策の選択肢が増えます。プレイヤーやクリエイターにとっては、ゲーム内で生み出した価値をゲーム外で受け取るまでの手順が減る可能性があります。
一方で、こうした機能がどこまで幅広いタイトルに採用されるかはまだ見通せません。現実の報酬をゲームデザインに組み込むには、規制、不正利用の防止、収益性、そして持続可能なゲーム内経済のバランスを取る必要があります。ZBDの「ゲームのマネーレイヤー」が定着するかどうかは、4製品の機能そのものだけでなく、各スタジオがそのバランスをどう設計するかにかかっています。