ブージナCEOが示したのは、ユーロネクストとドイツ取引所を今すぐ合併させるという発表ではない。両社の取引所事業を統合することには合理性があるとして、世界規模で競争できる汎欧州の市場インフラ運営会社をつくる戦略論を改めて提示した、というものだ。
ただし、最も重要な点は明確だ。現時点で両社は協議していない。 これは実際の交渉ではなく、長く議論されてきた選択肢が再び注目された段階にとどまる。
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ブージナ氏が述べたこと、述べていないこと
ブージナ氏はグループ全体の完全合併を否定しなかった。しかし発言の主眼は、あくまで両社の「取引所事業」の結合にあった。売買、清算などを含む市場インフラ全体を一体化する全面的な企業統合とは、必ずしも同じではない。
狙いは規模の確保だ。複数国にまたがる市場の流動性を結び付け、欧州がより大きく競争力のある取引プラットフォームを持つことにつながる可能性がある。EUでは資本市場をより厚く、競争力あるものにする政策課題が強まっている。
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ただし、現状を端的にいえば、合併の思惑であって、進行中の交渉ではない。
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5月の発言から何が変わったのか
経済的な理屈自体は新しいものではない。ブージナ氏は5月、イタリア議会での公聴会で、ドイツ取引所との合併は「理にかなう」と語る一方、近い将来に実現するとは考えていないと述べた。ユーロネクストは過去に3回、同社との統合を試みたとも明かしている。
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9月の発言は、取引所事業の結合を「合理的な取引」と明示し、完全合併の可能性も排除しなかった点で、より開かれた表現になった。それでも、交渉がないという制約は変わっていない。
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市場はどう反応したか
投資家は統合の可能性が再び浮上したことを好感した。ロイターによると、9月14日、両社株はブージナ氏の発言後にそれぞれ約2%上昇した。
1 欧州時間の昼ごろの報道では、ユーロネクストは2.2%高、ドイツ取引所は3.3%高だった。
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他の上場取引所運営会社について、一律の上昇を定量的に裏付ける十分な報道はない。直後の反応が最も明瞭だったのは、当事者であるこの2社だった。
なぜ統合案に戦略的な魅力があるのか
背景には、欧州資本市場の分断という構造問題がある。欧州委員会によれば、EUの株式市場時価総額はGDPの73%相当で、米国の270%を大きく下回る。委員会はEUの資本市場を、発展不足で分断されていると位置付けている。
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統合が実現した場合に想定される利点は、主に次の通りだ。
- 規模と流動性の拡大:主要取引所の市場を結び、投資家と資金調達を目指す企業が国境を越えて接続しやすくなる可能性がある。
- 欧州の市場インフラ強化:取引とポストトレード(取引後処理)をより統合するというEUの目標を後押しし得る。
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- 運営効率の改善余地:技術や業務で重複する部分を統合すれば、理論上は重複投資を抑えられる。
もっとも、これらは発表済みの統合効果ではなく、戦略上の可能性にすぎない。実際の案件になれば、競争や市場へのアクセスを損なわずに効率化の利益を示す必要がある。
本当の試金石は競争法と規制
ブージナ氏自身、完全合併には大きな規制上の障壁があると認めている。
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競争当局は、取引所サービスと周辺の市場インフラで生じる重複を精査するとみられる。過去に欧州委員会が審査したドイツ取引所とロンドン証券取引所グループの統合案では、清算、デリバティブ、指数ライセンスにおける競争への影響が論点となった。
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今回の統合案も、EUが進める取引・ポストトレード市場の制度改革という大きな流れの中に置かれる。欧州委員会は国境を越えた取引の障壁を取り除くことを目指している一方、EUの機関は監督体制の分断、税制の差、市場インフラの違いを、統合資本市場を阻む要因として挙げている。
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つまり、2社が合意できるかだけでは足りない。規制当局や各国当局は、競争、システムの強靱性、重要市場インフラの統治を評価することになる。事業売却などの是正措置や構造上の条件が付けば、統合の採算性そのものが弱まる可能性もある。
2027年のCEO退任が加える不確実性
ブージナ氏は、2027年5月の年次株主総会で3期目を終える意向を示しており、監査役会が後任選定を進めている。
48 ユーロネクストのCFOであるジョルジオ・モディカ氏は社内候補の一人として報じられているが、後任はまだ決まっていない。
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国境をまたぐ複雑な統合には、次のユーロネクスト経営陣、ドイツ取引所、両社の取締役会、株主、規制当局による継続的な支持が必要になる。後任CEOがブージナ氏の再編構想を引き継ぐのか、修正するのか、あるいは既存の戦略計画を優先するのかは、まだ分からない。
欧州の政策課題の中での統合観測
今回の観測は、EUが進める「貯蓄・投資同盟(Savings and Investments Union)」の方向性とも重なる。この構想は、欧州資本市場の厚み、統合度、機能を高め、流動性を改善し、加盟国間の分断を減らすことを目的とする。
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ただし、企業同士の合併だけで真の単一資本市場が実現するわけではない。欧州中央銀行(ECB)は、監督の分断、税制の差異、市場インフラの違いがなお障害として残ると指摘する。
34 より大きな取引所グループは規模の面で寄与し得るが、欧州の競争力を高めるには、制度・構造改革も不可欠だ。
投資家にとっての当面の結論はシンプルである。ブージナ氏が長年の統合選択肢を再び表舞台に戻し、市場は反応した。しかし、交渉は公表されておらず、規制面の道のりは極めて厳しい。
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