米ノースカロライナ州チャペルヒルで開かれたG20イノベーション閣僚会合で、イーロン・マスク氏とマーク・ザッカーバーグ氏が示したメッセージは明快だった。AIの発展を制限するのは、ソフトウェアや半導体だけではない。大量の計算を支えるデータセンターと、そこへ電力を届ける発電・送電インフラもボトルネックになるという。両氏は各国政府に対し、データセンターの建設を急ぐと同時に、発電能力と電力網を拡充するよう求めた。
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ただし、建設を急げば解決する問題でもない。マスク氏は早ければ翌年にも深刻な電力不足に直面する可能性を警告し、ザッカーバーグ氏は施設を建設する熟練労働者の不足を指摘した。さらに、電気料金の上昇や騒音、新設施設が地域社会に与える影響をめぐる懸念も広がっている。
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マスク氏の主張:「AIに必要な電力は、遠い将来の課題ではない」
マスク氏は、電力をAI成長における将来的な課題ではなく、すでに迫っている制約と位置づけた。AI向けの電力が不足すれば、中国に競争上の優位を与えかねないと警告し、自身の企業ではデータセンターと新たな発電設備を組み合わせてボトルネックに対応していると説明した。
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より大きな論点として、政府はAIインフラを経済政策の優先課題として扱うべきだとも主張した。マスク氏は、AIによって世界経済が20〜30%拡大し、年間約20兆〜30兆ドルに相当する効果が生まれる可能性があると試算している。ただし、これは確定した経済効果ではなく、同氏による予測だ。
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規制については、いわゆる欧州型のルールを批判し、イノベーションは「原則違法」ではなく「原則合法」であるべきだと訴えた。
4会合での米国側の立場も、新たなAI監督機関の設置を避け、規制を最小限にとどめる方向に傾いていた。
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ザッカーバーグ氏が焦点を当てた「人」の不足
ザッカーバーグ氏は、AI投資を実際の施設へと変えるために必要な労働力に注目した。データセンターの拡大によって、数十万人、場合によっては数百万人規模の熟練技能職の雇用が生まれる可能性があると述べた。一方で、Meta自身も計画中の施設に必要な技能を持つ人材を十分に確保できていないという。
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計算能力を増やすには、プロセッサーを購入するだけでは足りない。建設作業員、電気工事士などの技能職、適切な用地、電力網への接続がそろって初めて施設は稼働する。その意味で、今回の議論では人材育成もAI政策の一部として扱われた。雇用問題をAIとは別のテーマとして切り離せない状況が浮き彫りになった形だ。
データセンター建設は、地域社会との政治的な争点にも
建設の加速を求める声が出た背景には、米国でデータセンターへの反発が強まっていることがある。批判する側は、電気料金の上昇や施設から出る騒音を問題視しており、米中間選挙を前に政治的にも注目される争点になっていた。
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政策担当者にとっては難しい綱引きだ。AI企業は迅速な許認可と計算能力の拡大を求める一方、地域住民は、エネルギーを大量に消費する施設を受け入れるよう求められている。負担と利益が地域間で均等に分配されるとは限らないからだ。
発電能力や送電網を広げないままデータセンターだけを増やせば、電力料金や供給不安をめぐる対立がむしろ深まる可能性がある。AIインフラの問題は、テクノロジー企業だけでなく、電力政策と地域政治の問題にもなっている。
ヒューマノイドロボットについて確認できること
今回提供された報道は、AIを社会や経済を大きく変え得る汎用技術として扱い、その経済効果を中心に伝えている。一方で、マスク氏やザッカーバーグ氏がヒューマノイドロボットの性能や実用化時期について具体的な予測を示したことは、提供された証拠からは確認できない。
したがって、ロボットの能力や登場時期に関する主張は、データセンター、電力、雇用をめぐる今回の議論とは分けて考える必要がある。
次の議論はフアン氏とアルトマン氏へ
この2日間の閣僚会合は、米国商務省とホワイトハウスの科学技術政策局が、米国のG20議長国の下で共同開催した。
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2日目のプログラムでは、米商務長官ハワード・ラトニック氏が、NVIDIAのジェンスン・フアンCEO、OpenAIのサム・アルトマンCEOと対面形式の炉辺談話を行う予定だった。議題には、AI政策、インフラ、貿易が含まれていた。
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一連の会合が示したのは、AIインフラがすでに世界経済の問題になっているということだ。問われているのは、各国がAIを導入するかどうかだけではない。十分なデータセンター、発電能力、送電網、熟練労働者をどれだけ早く整備できるのか。そして、地域社会の懸念に対応しながら、イノベーションを止めないルールをどう設計するのかが焦点になっている。