つまりAIが“ツール”から働くソフトウェアエージェントへと進化するという考え方だ。
これを支えるため、デルはデスクサイド型のエージェントAI開発システムを発表。エヌビディアの NemoClaw セキュリティレイヤーを統合し、企業データを外部クラウドに出さずに自律AIを運用できる仕組みを提供する。
開発者はローカル環境でエージェントを試作し、そのままデータセンター規模へスケールできる設計になっている。
ハードウェアの中心となるのが、Dell PowerEdge XE9812だ。
このサーバーは液冷式のGPU密集型システムで、大規模AIの学習や推論を想定した設計。基盤にはエヌビディアの Vera Rubin NVL72 プラットフォームが採用されている。
NVL72は非常に高密度のGPUアクセラレーションを可能にし、巨大AIモデルのトレーニングやリアルタイム推論、推論型AIワークロードなどを処理できるようにする。
従来の企業向けサーバーでは難しかったGPU密度・電力・冷却の問題に対応するため、液冷とラックスケール設計が採用されているのが特徴だ。
今回の発表で強調されたもう一つのテーマは、インフラの統合化である。
デルが提示した PowerRack は、AI専用の統合ラックシステムで、以下の要素を一体化して提供する。
この構成は、デルが提唱する 「AIファクトリー」 のコンセプトを体現している。AIモデルやAIエージェントを大量に動かし、推論や意思決定を“生産”するデータセンターという考え方だ。
企業は個別のハードウェアを組み合わせるのではなく、そのまま導入できるAI基盤として展開できる。
両社は、AIの性能を決めるのはGPUだけではなく企業データそのものだと強調する。
そのため、Dell AI Data Platform with NVIDIA にも機能強化が加えられた。社内データの検索、処理、統合を自動化し、AIモデルやエージェントが活用できる形に整える仕組みだ。
企業にとってAIが実際の業務で役立つかどうかは、自社データにどれだけ安全にアクセスできるかに大きく左右される。
もう一つの重要なテーマがハイブリッド展開だ。
大規模クラウドは依然重要だが、デルとエヌビディアは多くの企業が次の理由からオンプレミスAIを必要とすると見ている。
そのため、企業データセンターでAIエージェントを安全に実行できる設計が重視されている。
こうした戦略の背景には、AIインフラ需要の爆発的な拡大がある。
デルによると、2026会計年度のAIサーバー出荷額は252億ドルに達し、前年から倍増。さらに430億ドルの受注残を抱えているという。
この需要に対応するため、データセンターの設計も急速に変化している。
GPUクラスター、高帯域ネットワーク、液体冷却といった要素が、次世代データセンターの標準になりつつある。
Dell Technologies World 2026で示されたメッセージは明確だ。
AIは単なるアプリケーションではなく、企業ITの基盤レイヤーへと移行している。
自律型エージェントが新しいワークロードを生み、企業データがその燃料となり、GPU密度の高いAIシステムが計算基盤を担う——。
この構図の中で、未来のデータセンターは次第に**「AIを生産する工場(AI Factory)」**に近い姿になっていく。
そしてデルとエヌビディアは、そのインフラ市場をめぐる競争がまだ始まったばかりだと見ている。