中国聯通広東は2026年9月8日、広州市で「岸・海・船・衛星(岸海船星)」海洋専用網を発表した。重要なのは単一の「何kmまでつながる」という数字ではない。沿岸の地上局、洋上の固定設備、船に搭載する移動局、衛星という4つの層を組み合わせ、通常時の海上業務と緊急時の通信を支える設計にある。
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4層で海へ伸ばす仕組み
岸:沿岸約1,500局が近海の基盤
最も手前の層は沿岸基地局だ。中国聯通は広東省の海岸線に超長距離対応の基地局を約1,500局配置し、沖合約22kmまでの連続通信を実現、10万隻超の漁船の通信を支えるとしている。
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これは、船が集中する沿岸・近海で、音声、業務データ、映像、運航関連の接続を同時に扱うための大容量レイヤーである。広東省陽江市では、従来の沿岸セルの一般的な到達距離を超える海上5G通信を試験してきた実績もある。GSMAの事例研究では、中国聯通広東が海岸から30km沖合まで下り400Mbps、61km沖合で60Mbpsの安定通信を報告している。
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海:洋上風力設備を使う中継チェーン
次の層は、陸からさらに離れた海上に設ける固定設備だ。中国聯通は洋上風力発電所の昇圧設備や風力タービンの塔体を利用して海上基地局を設置し、沖合40~80kmの海上通信チェーンを構築するとしている。
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既存の洋上エネルギー設備を使えれば、通信設備のためだけに海上構造物を一から建設するより、設置場所や電力を確保しやすい。発表では洋上風力の運用、深海養殖など海洋産業での利用が想定されている。
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船:事故現場へ持ち込める「通信の島」
移動式の層が、広東省の**「3+10+N」船載基地局緊急通信システム**だ。「3」は広東東部、珠江口、広東西部に配置する3隻の大型救助船、「10」は沿岸の巡視・法執行船10隻、「N」は公務船、風力発電の保守船、養殖支援船、洋上プラットフォームなどへの拡張を指す。
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船には中国聯通の「三網通」船載基地局と、衛星・基地局・高利得アンテナを組み合わせた設備を載せる。中国聯通によれば、1隻で周辺10km超の海域に一時的な通信エリアをつくれ、現場映像の陸上送信、音声通話、指揮・配車を支援できる。「海巡09」を含む公務船13隻では、基地局の設置と段階的な検収が完了したという。
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中国聯通はこの船の層によって、ネットワークの到達範囲を沖合200km超へ延伸すると説明する。ただし、これは移動する海上ノードと他の通信層を合わせたシステム全体の到達能力として読むべきだ。沿岸のセルラー基地局と同じ帯域幅・品質が、200km超の全域で一様に提供されることを意味するわけではない。
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衛星:深い海域と障害時を補う最後の層
衛星は、固定設備が届かない海域を補い、障害時の冗長性を確保する層である。発表資料では、深遠海のカバー不足を補うため、5Gと高軌道・低軌道衛星網の間でインテリジェントに切り替える検証を進めるとしている。
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つまりこの構成は、初めからハイブリッド型だ。通信需要が集まる沿岸・洋上の拠点は固定セルで担い、事故や特定の作業海域には船載局を移動投入し、固定局の設置が難しい遠海では衛星が接続性を補う。
セルラーと衛星は「競合」ではなく補完関係
衛星は沿岸の外側まで通信範囲を広げ、遠隔海域での継続性を高められる。特に低軌道(LEO)衛星は、従来の高軌道衛星と比べて低遅延・高スループットを狙える。ただし、実際の性能は端末、料金プラン、利用可能な容量、カバー状況にも左右される。
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一方、船舶や通信需要が密集する近海は、異なる問題を抱える。地上・海上のセルラー網では、無線設備と伝送網を複数の利用者で共有できる。別の中国移動の洋上5G導入事例では、5Gが特定条件下で衛星より大容量を低い単位データコストで運べると報告された。これは普遍的な価格比較ではないが、混雑する沿岸航路でセルラーが依然として有力である理由を示している。
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役割分担は次のように整理できる。
- 沿岸セルラー: 船が多い近海の主回線
- 洋上風力設備などの海上局: 経済活動が集中する沖合拠点への延伸
- 船載セル: 救難・災害対応を含む、局地的で機動的なカバー
- 衛星: 遠海での継続通信、バックアップ、固定設備が届かない場所の補完
中国の「六張網」構想との接点
中国の「六張網」は、水網、新型電力網、算力網、次世代通信網、都市地下管網、物流網で構成されるインフラ構想である。
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この海洋専用網が最も直接的に位置付くのは、次世代通信網だ。洋上風力設備を利用する点では、新型電力網との接点もある。漁船団、洋上エネルギー事業、救助船、港湾をつなげば、物流や運用データの流れを支え、そのデータは配車、監視、分析のための計算資源にも接続できる。
ただし、あらゆる海洋技術がすでに実装されたわけではない。周波数センシング、気象・海況分析、海中探知は統合型海洋ネットワークの活用候補になり得るが、それ自体が「六張網」の公式な6分野ではない。また、公開された発表内容から、それらすべてが大規模な実運用に入ったとは確認できない。
完成した6Gネットワークではない
今回の発表は、セルラー設備、船載移動基地局、衛星接続を統合した海上通信網と捉えるのが適切だ。中国聯通は別途、6G研究を強化し、宇宙・空・地上・海を統合する次世代ネットワークを目指す方針を示している。通信、センシング、知能化、サイバーセキュリティを組み合わせる構想も掲げる。
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しかし、この将来の研究方針は、広東省の海洋専用網がすでに商用6Gとして完成していることを示すものではない。
長期的に問われる4つの課題
1. 誰が料金を払い、どんな価値を得るのか
洋上風力事業者、漁業者、保険会社、港湾、海運会社にとって、単なる「つながる」以上の便益が必要になる。安全性、遠隔保守、緊急対応、法令対応、乗組員の接続環境、業務効率といった成果を測定できることが、支払い意欲につながる。
2. 厳しい海洋環境での稼働率
塩害、強風、振動、台風、腐食、船での保守作業の難しさは、陸上ネットワークより運用を複雑にする。発表時の到達距離より、長期にわたる稼働率と保守実績が重要になる。
3. 切り替えと優先制御の確実性
多層ネットワークは、沿岸局、洋上中継、船、衛星の間を通信が予測可能な形で移れる場合に初めて価値を持つ。緊急対応では、優先順位のルール、端末の相互運用性、衛星容量の確保も欠かせない。
4. 通信事業単体の採算と公共的価値
商業通信だけでは設備を維持しにくい場所でも、救難、海上管理、防災という価値は大きい。公的な投資を正当化し得る一方、継続的な保守予算と、誰が運用責任を負うかを明確にする必要は残る。
結論
中国聯通広東の取り組みは、海上通信を一つの技術で完結させず、用途と距離に応じて重ねる多層型コネクティビティの事例である。船と通信需要が集中する場所ではセルラー、事故現場などでは船載の移動局、距離や冗長性の要求が固定設備の範囲を超える場所では衛星を使う。
沿岸22kmの連続通信、40~80kmの海上チェーン、船1隻あたり10km超、そしてシステムとして沖合200km超という数値は、均一なサービスエリアではなく、4つの層が担う役割を表したものだ。
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19 このモデルが定着するかは、海上での実稼働率、有用な利用事例、そして長期の運用費を負担する顧客を確保できるかにかかっている。