重要なのは、そのエネルギー源が通常の星を輝かせる核融合ではないことです。中心のブラックホールが活発に物質を降着(吸い込み)しており、ガスがブラックホールへと落ち込む際に莫大な熱が発生。その熱が水素の外殻を内側から加熱し、構造全体を輝かせています。その結果、この天体は典型的な恒星の約1000億倍ものエネルギーを放出するのです
。
天文学者たちは、この新種の天体について以下のような特徴を正確に測定しています。
この天体は、JWSTの「Mirage or Miracle(幻か奇跡か、MoM)」サーベイの一環として発見されました。このプロジェクトはもともと宇宙最古の銀河を探すために設計されていましたが、MITの天文学者ロハン・ナイドゥ氏率いるチームが、JWSTの深宇宙画像をスキャンしている最中に偶然この天体を発見したのです。
JWSTが本格的な科学観測を開始して以来、初期宇宙の画像の中に、かすかでコンパクト、そして非常に赤い不思議な点状の天体が何度も見つかっていました。天文学者たちはそれらを「小さな赤い点」と呼び、その正体は激しい議論の的となっていました。
MoM-BH*-1の発見は、この議論に強力な新たな手がかりを提供します。この天体は、研究者らが「裸の」ブラックホール星と呼ぶものです。その光のほとんどすべてがブラックホールに由来するガス外殻からのもので、背景にある母銀河からの光の混入は無視できるほどしかありません。
さらに重要なことに、MoM-BH*-1は伴銀河の近くに位置しています。コンピューターシミュレーションによると、観測された時代から約1億年後にブラックホール星がその銀河と合体すると、そのスペクトルは銀河内部に埋め込まれて見える「小さな赤い点」のスペクトルと非常によく一致することが示されました。
これは、「小さな赤い点」の多くが、母銀河と合体過程にあるブラックホール星である可能性を強く示唆します。つまり、それらは宇宙の合体の只中にある、銀河の内部に隠された「赤ちゃんクエーサー」の中心エンジンなのです。
このモデルは、「小さな赤い点」がなぜあれほどコンパクトで赤いのかも見事に説明します。ブラックホールを取り巻く高密度の水素外殻は、短波長(青色)の光を効果的に遮断し、長波長(赤色)の光だけを通すため、大量の星間塵を必要とせずに特徴的な赤い色を生み出すのです(星間塵が原因とする仮説も有力でしたが、この発見によりその必要性は薄れました)。
MoM-BH*-1の発見は、一つの謎を解くだけにとどまりません。それは、超巨大ブラックホールが宇宙初期の比較的短い時間でどうやって巨大なサイズに成長できたのかという、もっと根本的なメカニズムを提供する可能性があります。高密度のガス繭の中で猛烈な勢いで物質を降着させるブラックホール星は、ブラックホールにとっての「急成長期」を表しており、さらに古い宇宙時代に存在する太陽の数十億倍もの質量を持つ巨大ブラックホールへと至る過程の一ステップと考えられます。
オーストリア科学技術研究所(ISTA)など国際共同研究チームによって報告されたこの天体は、現在、熱心な追跡調査の対象となっています。今のところ、MoM-BH*-1は「10億分の1」とも言える希少な発見であり
、これまで見えなかった宇宙進化の段階を垣間見せてくれる貴重なサンプルです。そして、理論上の星-ブラックホールハイブリッド天体と、JWSTの最も有名な画像に点在する不可解な赤い点を直接結びつける、まさに「ミッシングリンク」なのです。