ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)が、惑星が生まれる現場にある「ガスの寿命」を詳しく捉えた。
若い恒星の周囲には、惑星の材料となるガスや塵の円盤(原始惑星系円盤)が広がっている。しかし、その円盤は永遠に残るわけではない。恒星の磁場がガスを外へ運び出し、恒星の高エネルギー放射が残ったガスを温めて宇宙空間へ逃がすためだ。
JWSTの中間赤外線観測装置(MIRI)で72個の円盤を調べた研究は、円盤からガスが失われる過程が、時間とともに「分子風・高速ジェット」から「原子風・光蒸発」へ移っていくことを示した。
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重要なのは、すべての惑星系に同じ締め切りがあるということではない。むしろ、惑星の核が成長し、円盤のガスを取り込むタイミングによって、木星のような巨大ガス惑星になれるかどうかが左右されることを示す結果だ。
72個の惑星形成円盤で見えたもの
研究チームは、JWST/MIRIのアーカイブデータを使い、主に進化段階がClass IIに分類される、傾きの大きな72個の円盤を分析した。円盤から流出するガスを調べる手がかりとして、水素分子(H₂)と電離ネオン([Ne II])の放射に注目した。
その結果、72個のうち66個で、H₂、[Ne II]、またはその両方による広がった放射を検出。さらに、46個で円錐状のH₂分子風、40個で高速の[Ne II]ジェットを特定した。
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これらの元素・分子は、それぞれ異なる流出構造を示す。
- 水素分子(H₂):円盤から広い範囲に広がる、温かい分子ガスの風を追跡する。
- 電離ネオン([Ne II]):より高温の原子ガスを示し、高速で細く絞られたジェットや、進化した系で見られる遅い風を捉える手がかりになる。
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JWSTによる過去の観測でも、幅広く比較的遅いH₂の流出の内側に、細く高速なジェットが埋め込まれた構造が見つかっている。
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恒星の成長とともに、ガスの流出機構が変わる
若い恒星は、周囲の円盤からガスを取り込みながら成長する。この降着が活発な初期段階では、幅広い分子風と高速ジェットが同時に現れやすい。
磁場が円盤のガスを持ち上げ、磁力線に沿って外へ加速することで、強力な磁気流体力学的アウトフローが生じる。一部の磁気風は、秒速で数十マイル(毎秒数十キロメートル)に達するという。
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しかし、恒星への降着が弱まるにつれて、強いH₂風や高速の[Ne II]ジェットは少なくなる。残る流出は、より原子ガス主体で、速度も遅いものへと移行する。この傾向は、若い惑星系の進化において、磁気風が先行し、その後に恒星の放射が駆動する熱的な風、つまり光蒸発風が続くという見方を支持している。
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流れを整理すると、次のようになる。
初期は磁気風が優勢になる
恒星の磁場が円盤の内側や外側からガスを加速し、ジェットや分子風として外へ運び出す。
降着と流出が弱まり、円盤が薄くなる
恒星の周囲に残る物質が少なくなると、恒星からのX線や紫外線が円盤のより深い領域まで届きやすくなる。
光蒸発が残ったガスを除去する
X線や紫外線が円盤表面を加熱し、ガスを逃げ出させる。こうして比較的遅く、主に原子ガスからなる風が円盤を徐々に散逸させる。
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つまり、H₂と[Ne II]の放射が見せる変化は、惑星形成の材料となるガスの貯蔵庫が段階的に失われていく様子を反映している。
木星のような惑星には「ガスを取り込む時間」が必要
巨大ガス惑星は、岩石や氷でできた核だけでは完成しない。周囲の円盤にまだ十分なガスがある間に、水素とヘリウムを大量に取り込まなければならない。
円盤が散逸してガスの供給源を失えば、後から成長した惑星の核は、同じ経路で木星級の惑星へ急速に成長することが難しくなる。
- 円盤にガスが豊富なうちに十分な質量へ成長した核は、外層ガスを急速に取り込み、巨大ガス惑星になり得る。
- 似たような核でも、磁気風や光蒸発によって円盤のガスが減った後に成長段階へ達すれば、小型の惑星にとどまり、原始的な大気をほとんど持たない可能性がある。
これは、観測された円盤の進化から導かれる帰結であり、惑星が実際に別の種類へ変化する場面を直接見たわけではない。最終的な惑星の姿は、核の成長速度、円盤の構造など、複数の条件にも左右される。
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研究の説明では、こうした二つの流出機構の移行は、太陽系の生涯の最初の1,000万年の間に起きるとされる。一方、巨大ガス惑星に必要なガスが個々の円盤から失われる時期は、さらに早い可能性がある。現時点の証拠が示しているのは、数百万年規模の短い形成期間であって、すべての惑星系に共通する、正確に測定された一つの締め切りではない。
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46億年前の太陽系にも当てはまるのか
太陽系は約45億〜46億年前に形成された。現在の太陽は、惑星形成に使える円盤を持っていないが、誕生直後には若い恒星を取り巻くガスと塵の円盤が存在していた。
もし若い太陽が今回観測された若い恒星と同じような進化をたどったなら、木星の核は、磁気風とその後の光蒸発によって星雲ガスの大部分が失われる前に、大量の水素とヘリウムを取り込む必要があったことになる。
ただし、JWSTが木星そのものの形成を直接観測したわけではない。今回の調査が与えるのは、なぜ巨大惑星の形成時期が重要なのかを理解するための物理的な枠組みだ。円盤のガス供給量は一定ではなく、ガスを除去する仕組みも恒星の進化に伴って変化する。
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まだ分かっていない「失われたガスの量」
72個の円盤の調査は、流出の形態や、どの段階でどの種類の風が現れるかを明らかにした。しかし、すべての風がどれだけの質量を運び去っているのか、その収支を完全に測定したわけではない。
次の課題は、観測された放射を実際に失われたガスの量へ、より正確に結び付けることだ。今後は、速度と位置を同時に詳しく調べる観測によって、次の点を明らかにする必要がある。
- 分子風、原子風、ジェットがそれぞれ運び去る質量
- 各流出が生じる円盤の半径
- どの高さのガス層が除去されているのか
- 風の温度と速度が時間とともにどう変化するのか
- 光蒸発へ移行した後、残ったガスがどの程度の速さで消えるのか
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これらが分かれば、観測された「分子風から原子風へ」という順序を、巨大ガス惑星が形成できる期間の具体的な長さへ結び付けられるようになる。
現時点でJWSTが最も明確に示したのは、惑星形成円盤のガス散逸に順序があるということだ。若い円盤では強い分子風と磁気ジェットが働き、恒星の成長とともに原子風が優勢になり、最後には木星のような大気を作るためのガスそのものが失われていく。