第三に、彼はデザインへの軽蔑の念を込めて、痛烈な皮肉を浴びせた。「少なくとも、これは中国人がコピーできない車だろう」と述べ、高級車のデザインを模倣することで知られる中国の競合メーカーがコピーしたいと思うほど、その美観は魅力的ではないと暗に示したのだ 。
投資家の反応も同様に容赦ないものだった。発表会の翌営業日、ミラノ証券取引所でフェラーリ株(RACE)は8.37%安の284.05ユーロで取引を終えた 。ニューヨーク証券取引所でも、同社株は約5.1%下落して推移した
。
この急落により、フェラーリの時価総額はわずか1日で推定30億~40億ポンド(約35億~47億ユーロ、日本円で約5600億~7500億円)も吹き飛んだ計算になる 。アナリストは、同社の戦略に対する信頼感が揺らいだと指摘する。AIRキャピタルのリサーチ責任者、ピエール・オリヴィエ・エシグ氏は、この車を「ホンダ・アコードのEVとテスラ・モデル3を混ぜ合わせたもの」のようだと評し、「フェラーリの新戦略が理解不能だ」とリサーチノートに記した
。
フェラーリ株を保有するアコメアSgrのポートフォリオマネージャー、ファビオ・カルダート氏はロイターに対し、市場の反応はネガティブなセンチメントの集大成だと説明した。「フェラーリは現在、ラグジュアリーセグメントにおけるEV市場の拡大に対する重大な懸念に加え、美観への失望感によって売られている」。
オンライン上の反応も圧倒的に否定的で、ソーシャルメディアのユーザーは55万ユーロ(約8800万円)のこの車を、ホンダ・アコードや日産リーフ、あるいは「アップルストアのミニバン」といった大衆車に例えて嘲笑した 。
車両は、従来の2ドアスポーツカーのシルエットからの根本的な脱却だ。4ドア・5人乗りのグランドツアラーであり、シューティングブレーク風のプロポーションを持つ 。パワートレインは、各ホイールに1基ずつ、計4基の永久磁石同期モーターで構成され、全輪駆動と約1050馬力のシステム総合出力を実現する。ただし、情報源によっては1035馬力~1113馬力の数値も引用されている
。
電力を蓄えるのは、800ボルトアーキテクチャで作動する122kWhのバッテリーパックで、最大350kWのDC急速充電に対応する 。フェラーリはWLTPモードで約530kmの航続距離を主張するが、より現実的なEPA(米国環境保護庁)の推定値は約450km(280マイル)に近くなると見られている
。車両重量が2260kgとかなりのヘビー級でありながら、0-100km/h加速は約2.5秒でこなす
。
インテリアは、アップルの元デザイン責任者であり、伝説的なジョナサン・アイブが率いるクリエイティブ集団「LoveFrom」と共同でデザインされた。同社はエクステリアとインテリアの両方のデザインを担当したが、このコラボレーションそのものが議論を二極化させる一因となった 。
フェラーリはルーチェを自社の製品ラインナップの頂点に位置づけている。欧州でのベース価格は55万ユーロに設定され、これは米国市場では約64万ドル(日本円で約1億200万円)に換算される 。英国での価格は、オプション装着前で約50万ポンドからスタートする
。パワートレインには、8年間かつ走行距離無制限の保証が付帯する
。
ルーチェの波乱含みの船出は、フェラーリが歩んできた慎重で、時に困難に満ちた電動化への道のりの最新章に過ぎない。同社は当初、2022年に強気のEVロードマップを発表し、2030年までに完全電気自動車がラインナップの40%を構成し、最初のEVは2025年に発売される、という目標を掲げていた 。
ところが2025年10月までに、その野望は大幅に縮小された。投資家向け説明会(キャピタル・マーケッツ・デイ)で、フェラーリの新たな2030年戦略は、製品構成を内燃機関(ICE)40%、ハイブリッド40%、完全電気自動車(EV)20%へと修正されたのである 。当初の2025年という発売目標もずれ込み、ルーチェとして2026年半ばに登場することになった
。
ベネデット・ヴィーニャCEOのリーダーシップの下、フェラーリは2026年から2030年の間に年間平均4車種の新型車を投入し続けるとしている。しかし、そのロードマップはバッテリー式電気自動車(BEV)に対してはるかに慎重なアプローチを示しており、2番目に計画されているEVモデルは少なくとも2028年以降に延期されたと報じられている 。
イタリアの自動車産業に詳しい経済紙への寄稿でも、今回のモンテゼーモロ氏の発言と株価下落は、伊産業界における「伝統と革新の激しい衝突」として大きく取り上げられている。また、SNS上での炎上は、単なる一モデルの好悪を超え、欧州の富裕層顧客がラグジュアリーブランドの電動化に何を求めているのか、その乖離を浮き彫りにしたと言えるだろう。