さらに、一部のファンは新作が既存のスーパーヒーロー作品やAAAアクションゲームの定番に寄りすぎていると批判。似た構図の戦いについては、過去の『X-Men Origins: Wolverine』のほうが満足度が高かったという声も出ている。
また、ローガンの素顔のキャラクターモデルについても、コミックや映画で知られるウルヴァリンのイメージと違うという反応がある。ヒュー・ジャックマンが演じたローガンや、2009年のゲーム版と比べられることで、キャラクターデザインへの視線が一段と厳しくなっているようだ。
もっとも、短い映像だけで声優の演技や物語全体を判断するのは難しい。現時点で確認できるのは、ファンが新作を既存のウルヴァリン像と強く比較しているという事実までだ。
Insomniacの『Marvel’s Spider-Man』シリーズでは、広大な都市を自由に移動し、街中の活動や寄り道をこなす体験が大きな魅力だった。そのため、多くのプレイヤーは『Marvel’s Wolverine』にも同じ規模の自由な探索を期待していた。
この違いが、現在の批判の根深い部分だ。ミッションの進行や移動が案内される構成は、「Spider-Manより自由度が低い」と受け取られている。特に、赤い追跡ラインが表示された短い映像は、一本道に見える印象を強める格好の材料になった。
これに対し、ゲームディレクターのMike Daly氏は、構成の違いは意図的なものだと説明している。Insomniacはウルヴァリンを探索よりも戦闘を中心とするキャラクターとして捉えており、ローガンを巨大なマップの中で走らせ続けることが、必ずしも「ウルヴァリンらしい体験」にはならないと判断したという。
今回の反応は、通常の発売前プレビューに対する批評というより、ミーム、比較動画、短く切り抜かれたゲームプレイ、再投稿によって拡散した。SNSでは、戦闘の設計や操作感、ゲーム全体のテンポよりも、ひと目で笑いにできる映像や比較のほうが広がりやすい。
Insomniacのコミュニケーション・マーケティングディレクターであるJames Stevenson氏は、SNSのアルゴリズムが否定的で刺激の強い投稿を増幅し、実際のプレイヤー全体の反応以上に厳しい空気を作っていると指摘した。氏はこの状況を「relentless onslaught(容赦のない集中攻撃)」と表現し、開発者の精神衛生にとって健全なのか疑問を呈している。
もちろん、だからといって個々の批判がすべて無効になるわけではない。視認性の高い誘導、ボス戦の独自性、キャラクター描写、一本道の構成について疑問を持つこと自体は、映像から自然に生じる反応だ。ただ、SNSで最も目立つ投稿が、そのままプレイヤー全体の総意だと考えるのは早計だろう。
Stevenson氏の発言は、ゲーム内容への反論というより、SNS上で起きている反応の増幅メカニズムに焦点を当てたものだった。アルゴリズムが最も否定的で挑発的な投稿を優先し、冷静な批評よりも嘲笑が速く広がることで、開発チームへの圧力が過剰になっているという見方だ。
一方、Daly氏はより落ち着いた受け止め方を示している。Insomniacはオンライン上の反発には慣れており、今回の強い反応を「good problem to have(抱える価値のある良い問題)」と表現した。これは、ファンがウルヴァリンというキャラクターや新作に強い関心を持ち、高い期待を寄せている証拠でもあるという意味だ。
Daly氏は、批判をすべて退けているわけではない。むしろ、誰からも関心を持たれないゲームでは、これほど大きな議論は起きないという考えだ。また、Spider-Manのオープンシティ型を再現するのではなく、戦闘と大規模な場面展開を中心に据えた構成そのものも、意識的な選択だと説明している。
SNSの切り抜きに対する重要な反証となるのが、記者が一定時間プレイしたハンズオン取材だ。IGNのMitchell Saltzman氏は実際にプレイした結果、戦闘に好印象を抱き、公開された映像だけでなく、ゲームを継続して遊んだうえで判断する必要があると示している。
この違いは大きい。数秒の映像で分かるのは、追跡ルートやボス戦の一段階、移動シーンの一部に限られる。ウルヴァリンの攻撃をどう組み合わせられるのか、戦闘がどのように激しくなっていくのか、ミッション中にどれほど選択肢があるのか、直線的な構成がキャラクターの魅力を支えられているのかは、長時間プレイしなければ見えてこない。
現段階で指摘できる懸念は、主に4つある。目立ちすぎるナビゲーション補助、既視感のあるSentinel戦、一部キャラクターの演技や描写への不安、そして『Spider-Man』とは対照的な直線的構成だ。SNS上では、これらの論点がミームや過去作品との比較によってさらに増幅されている。
ただし、現在公開されている材料だけで、ゲーム全体が単純で独創性に乏しいと断定することはできない。赤いラインには作中の設定上の意味があり、集中型のゲーム構成は開発側が明確に選んだ方向性だ。さらに、ハンズオン取材では、SNSで最も拡散された映像から受ける印象よりも戦闘を前向きに評価する声がある。
今のところ、『Marvel’s Wolverine』が直面しているのは、ゲーム内容そのものの問題だけでなく、期待値との衝突でもある。プレイヤーは新作を、Insomniacの『Spider-Man』シリーズ、過去のライセンス作品、映画版のローガン、そして自分の中にある「ウルヴァリンらしさ」と比較している。