ホルムズ海峡は、世界で最も重要なエネルギーの「チョークポイント」の一つだ。ここでの混乱は、世界の石油とガスの流れに直接影響を及ぼし、欧州経済とエネルギーの安定供給に甚大な影響を与える 。世界の石油・天然ガス貿易の約2割がこの海峡を通過しており、その封鎖は燃料価格の高騰を招き、欧州の家計や産業を圧迫する。
だからこそ、通行料や制限のない、恒久的な航行の自由を回復することが、紛争に関連する外交交渉における欧州の主要な要求事項となっているのだ 。EUの防衛イニシアチブ「ASPIDES」もすでに紅海地域で船舶の保護活動を行っており、海上交通路(シーレーン)の安全確保が欧州の戦略的自己防衛の一環であることを示している
。
ブリュッセル(EU)の視点からすれば、海峡の再開は地域の安定のためだけでなく、世界のエネルギー市場への更なるショックを防ぐためにも不可欠なのだ。
たとえ航路が再開されたとしても、EUはそれを包括的合意としては不十分と見なしている。フォンデアライエン委員長は、制裁の緩和は自動的に行われるべきではないと示唆しており、欧州が圧力緩和を検討する前に、イラン側のより深い変化と信頼できるコミットメントが必要だと主張した 。
これは、たとえ海峡が再開されても、核開発疑惑という根本的な問題を解決しないまま「時間稼ぎ」をするだけの合意に、欧州が加担しないという強い意思表示である。
ワシントンとテヘランの外交努力は一定の進展を見せているものの、依然として主要な意見の相違が残っている。報道によれば、両者は提案された了解覚書(MOU)の特定の条項をめぐって依然として隔たりがあり、イラン側の情報筋は、合意がほぼ固まったとの見方を否定している 。
こうした不確実性があるため、欧州当局者は交渉が最終的な突破口に近いと宣言することに慎重な姿勢を崩していない。
いくつかの報道は、段階的に展開される外交的枠組みについて説明している。
この順序は、特に船舶輸送の回復という点で欧州の優先事項と部分的に一致している。しかし、その順序だからこそ、ブリュッセルでは懸念も生まれている。核に関するコミットメントが後の段階に先送りされれば、合意は永続的な解決策ではなく、一時的な取り決めに終わる可能性があるとEUは危惧しているのだ。
フォンデアライエン委員長の一連の発言を総合すると、外交への慎重ながらも支持的なアプローチが浮かび上がる。EUは米国とイランの交渉をおおむね支持しているが、いかなる合意も短期的な緊張の小康状態ではなく、持続可能な安定をもたらすという確証を求めている。
具体的には、欧州の立場は以下の優先事項を組み合わせたものだ。
現在進行中の協議がこれらの条件を満たせるかどうかは依然として不透明だが、これらはEUが将来のいかなる米イラン合意も満たすべき基準であると明確に定義している 。欧州の「イエス」には、これだけの確約が必要なのだ。