これに対し、6月8日、ウクライナ軍のオレクサンドル・シルスキー総司令官は全く異なる状況を公に提示した。彼はウクライナ軍が2026年初頭以来、「600平方キロメートル以上」の領土を奪還したと発表した 。さらに重要なのは、シルスキー総司令官が「2026年5月だけで、ウクライナは失った領土より100平方キロメートル近く多くを奪還した」と述べた点だ。これは2023年の反転攻勢以来、ロシアの月間純増地域が初めてマイナスに転じたことを意味する
。
この「毎月の領土純増減」という枠組みは、プーチン大統領の累積占領率と真っ向から対立するものである。静的で膨大な占領総面積ではなく、領土の動的な動きを強調することで、シルスキー総司令官はロシアの遅々とした前進が停止しただけでなく、押し戻されつつある戦場を浮き彫りにしたのだ。
2つの物語の隔たりは、3つの主要な分析機関による公開情報で解消される。ここで言う「公開情報分析(OSINT)」とは、一般に入手可能な衛星画像や現地報告などを専門家が分析し、戦況を検証する手法を指す。
ワシントンに拠点を置くISWは、ロシアが確定的に支配する領域(浸透地域を除く)を追跡する。ISWの評価では、ロシア軍が2026年5月に完全制圧または浸透したのはわずか「40.64平方キロメートル」に過ぎない 。これは2025年5月の獲得面積のごく一部であり、ISWは「ウクライナ軍はこれまでのところ、ロシアの2026年春夏季攻勢をほぼ阻止した」と結論づけた
。
フランス通信社(AFP)がISWのデータを分析したところ、5月のウクライナ純増は「282平方キロメートル」と算出された 。またISWのデータは、これが3カ月連続(2026年3~5月)のウクライナ純増であることも示した
。さらに2026年4月にも、ロシアは116平方キロメートルの純減を経験しており、これは2024年8月のクルスク州への越境攻撃以来、初の月間純減だった
。
ウクライナの防衛メディア「ミリタルニー」は、軍内部の情報筋を引用し、6月6日に次のように報じた。ロシアが5月に占領したのは約「130平方キロメートル」だが、ウクライナは約「250平方キロメートル」の支配権を回復し、結果として約120平方キロメートルの純増となった 。ミリタルニーもまた、2026年5月が2023年の反転攻勢以来、初めてロシアの純増がマイナスに転じた月であることを確認した
。
ウクライナのOSINT監視グループ「ディープステート」の報告によると、5月のロシアの領土獲得は、攻撃回数が37.5%増加したにもかかわらず、2023年10月以来最小のわずか「14平方キロメートル」に留まった 。またディープステートは、安全保障上の理由からウクライナ軍の前進は遅れて地図に反映されるため、実際の獲得面積はさらに大きい可能性があると指摘している
。
これらの競合する主張は、各陣営が「何を測っているか」の根本的な違いを反映している。
プーチン大統領が主張する「1カ月で2,400平方キロメートル制圧」は、驚くべき誇張である。独立した分析機関で、5月のロシアの獲得面積を130平方キロメートル以上とするものは存在しない 。ロシアの前進速度は2025年11月以降一貫して低下しており、2026年の最初の4カ月間の1日平均獲得面積はわずか2.9平方キロメートルにまで落ち込んでいた
。
この数字が示す意味は、単なる面積比較を超える。ロシアの1日平均前進速度は、2024年末~2025年初頭の約14.92平方キロメートルから、2026年第1四半期には5.16平方キロメートルへと急減速した 。中東の衛星テレビ局アルジャジーラが2026年5月中旬に報じたところでは、日平均はさらに2.63平方キロメートルにまで低下している
。
一方で、ウクライナはISWや欧米の当局者が「戦線の安定化」と呼ぶ状態を達成しつつある。北大西洋条約機構(NATO)のマルク・ルッテ事務総長は5月21日、「ウクライナの強固な防衛が前線を安定させている」と評価した 。また米国防情報局(DIA)は5月18日、ロシア軍が2026年2月初旬にスターリンク衛星通信網へのアクセスを失った後の、ウクライナの領土回復について分析を発表している
。
2026年6月の領土をめぐる対立する主張は、単なるプロパガンダではない。それらは、この数年で初めてウクライナ有利に動き始めた戦争というものを測る、2つの相容れない方法論を表している。どんなにゆっくりであれ、そしてどれほどの犠牲を払おうとも。
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