こうした仲介者への依存の高まりを根本から覆すべく計画されているのが、2026年後半に予定される大型アップグレード「ヘゴタ(Hegota)」です。
ヘゴタには、以下の4つの重要なプロトコルレベルでの改善提案がバンドルされ、リレー依存の排除、検閲耐性の強化、プライバシーの基盤層への統合を同時に実現しようとしています。
FOCIL(Fork-Choice Enforced Inclusion Lists、フォークチョイス強制包含リスト)は、ヘゴタのコンセンサス層における目玉機能です 。これは、すべての有効な取引がブロックに含まれることを保証する仕組みで、特定のバリデーター(検証者)やブロックビルダーが恣意的に取引を検閲するのを防ぎます。
具体的には、1スロット(約12秒)ごとに最大17名の参加者がランダムに選ばれ、それぞれが「インクルージョンリスト(包含リスト)」を提出します。たとえ1人でもリストに有効な取引を載せれば、ブロックビルダーはそれをブロックに含めることが義務付けられ、無視したブロックはネットワークのルールによって拒否されます 。これは、ブロック構築が少数のリレーに集中してしまったことで、特定の取引がフィルタリングされるリスクが現実化していることへの直接的な対策です
。
これまで、スマートコントラクトウォレット(スマートアカウント)からの取引は、直接ネットワークに送信できず、リレーを経由する必要がありました。EIP-8141は、これらのスマートアカウントをネットワーク上の完全な「一等市民」に格上げし、仲介業者なしで直接取引を送信できるようにします 。
これは、EIP-7701で築かれた「アカウントアブストラクション」の基盤の上に成り立っています。FOCILと組み合わせることで、スマートウォレットの取引も、ランダムに選ばれた17の包含リスト提出者によって拾い上げられ、ブロックへの取り込みが強制されることになります。ブテリンも、「EIP-8141により、スマートウォレットからの取引は、通常の取引と対等にパブリックメンプールに入り、FOCILの恩恵を受けられるようになる」と述べています 。
この提案は、イーサリアムの取引を複数のフェーズに分割します。これにより、ユーザーのプライベートな取引を受け付けて転送する専用のリレーサービスを用意しなくても、適切なフェーズで第三者が手数料(ガス代)を支払うといったことが可能になります 。これは、リレーが取引を検閲したり、匿名性を損なう可能性がある構造的な弱点を取り除き、プライバシー保護アプリケーションの開発と維持を大幅に簡素化します
。ブテリンは、EIP-7701を「極めてシンプルなL1プライバシーロードマップ」に不可欠な要素と呼んでいます
。
Facetの共同創設者トム・レーマン氏によって2026年3月に草案が作成され、ヘゴタへの組み込みが提案されているEIP-8182は、共有の「シールドプール」をイーサリアムの基盤層に、システムコントラクトとして直接組み込みます 。
この設計はUTXO(未使用トランザクションアウトプット)モデルを採用し、管理者キー、プロキシ、緊急停止機能、ガバナンストークンなどを一切持たない、極めて分散化された構造が特徴です。変更はハードフォークによってのみ可能です 。取引の正当性は、Groth16 BN254と呼ばれるゼロ知識証明によって検証されます
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この提案の最大の狙いは、プライバシーをイーサリアム自身の信頼モデルの下に統一することです。現在、プライバシーを求めるユーザーは、それぞれが小さな匿名セット( anonymity set: 自分が誰か分からなくなる集団の規模)を持つ、断片化されたアプリケーション層のソリューションに分散してしまっています。EIP-8182は、単一の巨大なシールドプールを提供することでこの断片化を解消し、特別なアドレス形式を用いずに、通常のイーサリアムアドレスやENS名(イーサリアム・ネーム・サービス)へのプライベート送金を可能にします 。
ブテリンが特定したリレー依存の問題は、机上の空論ではありません。利便性とユーザー体験が信頼不要性よりも優先され、ビルダーとバリデーターの分離が成熟する過程で、ブロック構築が少数の中央集権的なサービスに集中してしまったという、現実のトレードオフの帰結です 。
ヘゴタはこの問題に、複数の角度から同時に攻撃を仕掛けます。FOCILは、悪意ある提案者によって取引が黙殺されるのを防ぎます。EIP-8141とEIP-7701は、スマートウォレットとプライバシープロトコルが、信頼できる第三者を経由せずに、パブリックメンプールとFOCILの包含メカニズムに到達できるようにします 。そしてEIP-8182は、プライベート送金を、リレーに依存した外部ミドルウェアではなく、プロトコルに組み込まれた標準機能へと昇華させます
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計画通りにヘゴタが実行されれば、その先にあるのは、あらゆるアカウントからの取引が平等に扱われ、検閲耐性が構造的に保証され、そしてプライバシーが「追加オプション」ではなく「ネイティブ機能」であるようなイーサリアムの基盤層です。
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