この減少の最大の要因は、DeFi(分散型金融)における担保需要の冷え込みであり、Circle社のソルベンシー(支払い能力)問題ではありません。オンチェーン上の利回りが調整され、DeFi活動全体が小休止する中、ユーザーはUSDCを新たな投資先に回す代わりに、法定通貨に戻すことを選択しました。さらに、合成ドル「USDe(エテナ)」のポジション巻き戻しにより、Ethenaの準備金から約20億ドルのUSDCが流出した影響も大きい。
加えて、2026年に入ってからの暗号資産(仮想通貨)市場全体の調整(2026年の安値近辺でのもみ合い)や、米国連邦政府の新ルールでステーブルコイン発行体がトークン保有者に利子を支払うことが禁止されたことも、USDCの保有需要を低下させました。
Circle社は2026年第2四半期に、総収益および準備金収入として7億100万ドルを計上しました。これは前年同期の6億5810万ドルから7%増加しています。調整後EBITDA(金利・税金・償却前利益)は8%増の1億4300万ドル、継続事業からの純利益は4800万ドルと、前年の大幅損失から5億3000万ドル改善しました。
収益成長の原動力は、四半期中の平均的なUSDC発行残高が大幅に増加したことにあります。期末の発行残高は733億ドル(前年比19%増)でしたが、四半期の平均発行残高は765億ドルと、前年比で25%も増加していたのです。
Circle社のビジネスモデルは、USDCの発行と引き換えに預かった法定通貨を短期米国債などの安全資産で運用し、その利子を得るというものです。期末近くに供給が減少しても、四半期の大半を通じてより多くの平均残高を運用できたため、利息収入が増加しました。具体的には、準備金収入(レザーブ・インカム)は5%増の6億6770万ドル。ただし、準備金の運用利回りは3.5%と、前年から0.66%低下しており、金利低下の影響も一部受けています。
なお、総収益7億100万ドルはウォール街の予想(7億1700万ドル)をわずかに下回り、このミスを受けてCircle社の株価は時間外取引で約4%下落しました。
| 指標 | 2026年第2四半期の値 | 前年同期比変化 |
|---|---|---|
| USDC循環供給量(期末) | 733億ドル | +19% |
| USDC平均循環供給量 | 765億ドル | +25% |
| 四半期オンチェーン取引高 | 14.8兆ドル | +151% |
| 1日あたりオンチェーン取引高 | 1630億ドル/日 | +151% |
| 1日あたり新規発行・償還 | 19億ドル/日 | +105% |
| 1日あたりUSDC名目取引高 | 29億ドル/日 | -45% |
| プラットフォーム上のUSDC(期末) | 124億ドル | +106% |
| 実利用ウォレット数(10USDC以上) | 700万 | +24% |
| 準備金運用利回り | 3.5% | -0.66% |
準備金の構成: USDCは、Circle社(規制対象の金融機関)が保有する現金同等物および短期米国政府証券によって完全に裏付けられています。8月6日時点の準備金総額は約720億ドルで、その内訳は、米国財務省証券を担保とする当座貸越契約(オーバーナイト・レポ)に約518億ドル、満期3カ月未満の米国財務省証券に約90億ドル、システム上重要な銀行への預金に約100億ドルとなっています。
また、オンチェーン上の「エージェンティック・コマース(自律エージェントによる商取引)」の99%超がUSDCを利用しており、その90%以上はCoinbaseのL2ネットワーク「Base」上で行われています。
ステーブルコイン市場全体の時価総額は、2026年5月に約3200億ドルでピークを打った後、7月中旬までに約3065億ドルまで減少。これは約90日間で約115億ドル(約3.6%)の減少であり、約3年ぶりの四半期減少となりました。CoinGeckoのQ2レポートでは、同期末の時価総額を3051億ドル(前期比1.6%減)としています。
この減少の背後には複数の要因があります。
しかし、ここで重要なのは、供給量が減っているにもかかわらず、オンチェーン取引高は過去最高を更新しているという点です。2026年6月の調整後ステーブルコイン取引高は1.79兆ドルに達し、5月比63%増、前年同月比125%増となりました。これは、発行済みの「総量(フロート)」が縮小しても、ステーブルコインの「回転速度」が速まり、より活発に使われていることを示しています。
USDCのステーブルコイン取引高シェアは2026年第2四半期に約62%に拡大(前年同期は36%)。6月にはついに70%近くに達し、準拠型ステーブルコインへの資本集中が鮮明になっています。
Circle社を巡っては、2026年に入り以下のような重要な動きがありました。
USDCの供給量減少は、DeFi担保需要の一時的な冷え込みと暗号資産市場全体の調整を反映したものであり、Circle社やUSDCに対する信認の危機ではありません。
収益が伸びたのは、四半期の大半を通じて運用された平均発行残高が過去最高だったからです。業績は、ステーブルコイン発行体のビジネスモデル——準備資産から利子を得る——が、期末に供給が減少してもなお、四半期平均の残高が高ければ十分に機能することを示しています。
そして何より、記録的なオンチェーン取引高と、USDCの取引高シェアが6月に約70%に達したという事実は、市場全体が縮小する中でも、資本が「規制に準拠した透明性の高いステーブルコイン」へと確実に集約されつつあることを物語っています。
Circle社の第2四半期のパフォーマンスが示すのは、ステーブルコイン発行体を評価する上で重要なのは、期末時点の「スナップショット」としての供給量ではなく、四半期を通じた「平均発行残高」と「取引の回転速度」だということです。