第1セットを6-2で楽に取ったにもかかわらず、体力が急激に奪われたジョコビッチは、ティランテの冷静なプレーの前に第2、第3セットを連取され、敗れた 。この敗戦により、ジョコビッチのシンシナティでの連勝は「10」でストップ。2005年の本戦デビュー以来、初めて2回戦で姿を消す屈辱を味わった
。
試合後、ジョコビッチはこの身体の崩壊が単なる一日限りの熱中症ではないことを明かした。「これは私が長年抱えてきた健康上の問題です。特定のものに対する不耐性のようなもので、体内に過剰な熱が生まれ、急速に脱水症状に陥ってしまう」と説明 。シンシナティのような極度の高温多湿環境が、その症状を悪化させたと語った
。
この告白は、単なる「39歳の老化による体力低下」とは次元の異なる問題を浮き彫りにした。ジョコビッチ自身は「管理可能な問題」と表現するが 、グランドスラムを控えた重要な時期にこの症状が再発したことは、極めて深刻な警告と言える。
全米オープン(8月下旬開幕)を目前に控え、ジョコビッチは「実戦経験ほぼゼロ」という非常に厳しい状況に立たされている 。シンシナティは、ウインブルドン準決勝敗退から36日ぶりの実戦であり、全米OPに向けた唯一の重要な調整の場だった
。それが1試合で終わったのだ。
唯一の救いは、結果的にシンシナティで長く試合を戦わずに済んだため、ニューヨークでじっくり調整する時間ができたことだ。ジョコビッチは過去にも、準備不足のままグランドスラムを制した経験がある。今回も、水分補給と食事管理を徹底し、症状のトリガーを避けることで、本番に照準を合わせる戦略に出るだろう。
本人は「これが体系的なフィットネスの問題ではない」と長期的な懸念を否定しており、自身のマネジメント能力に自信を見せている 。しかし、彼がアーサー・アッシュ・スタジアムのコートに立つ時、世界中の視線は彼の一挙手一投足に集中することになる。
ジョコビッチの健康不安だけが、問題ではない。全米OPの男子シングルスの優勝候補と目される他の2人も、シンシナティを欠場し、万全とは言い難い状態にある。
カルロス・アルカラス(前回全米OP覇者)は、右首の負傷のため8月4日にシンシナティを棄権した 。彼は4月のバルセロナ・オープン以来、全仏オープン、ウインブルドンを含む約4ヶ月間、実戦から遠ざかっている
。全米OPのタイトル防衛に向け、その状態は不透明だ。
ヤニック・シンナー(世界ランク1位)は、右膝の負傷で8月9日にシンシナティを棄権 。前週のモントリオール・マスターズも欠場しており、全米OPに向けたハードコートでの調整試合はゼロとなる
。彼は「全米OPには間に合う」と語っているが
、膝の状態は依然として懸念材料だ。
結果として、2026年の全米オープン男子シングルスは、近年稀に見る「予測不可能」なものになりつつある。
ビッグ3全員が万全の状態でなければ、お互いの不安要素が打ち消し合う可能性もある。しかし、もし誰かが不調で脱落すれば、ダークホースの台風の目が一気に開くことになる。テニスファンは今、3人のスーパースターと、3つの大きなクエスチョンマーク、そして近年で最も重要な意味を持つ全米オープンを目前にしている。