一体何が起きたのか。原因は、ローソンが12コーナーの出口でわずかにコースを外れ、グラベル(砂利)にタイヤを落としたことだった 。このとき跳ね上げられた無数の小石のうち、「たった一つ」がヒュルケンベルグのアウディRS26のロールフープ左側、緊急電気遮断スイッチを直撃したのだ 。
ヒュルケンベルグはレース後、状況をこう説明した。「どういうわけか、一つの石が緊急トリガーを引っ張ってしまった……そしてマシンは完全に死んでしまった」 。エンジンを含むすべての電源が瞬時に落ち、為す術なくリタイアとなった。
ローソンは、自分が相手と接触すらしていないのに「ヒュルケンベルグのマシンを殺した」と聞かされ、「マジで言ってる? ありえない!」と驚きを隠せなかったという 。
この奇妙なリタイアは、フルワークスチームとしてF1に参戦したアウディの苦難のデビューシーズンを完璧に象徴している。シーズン7戦を終えて、チームの獲得ポイントはわずか2。ヒュルケンベルグ自身も19位で、未だノーポイントだ 。
しかし、ただ遅いだけのチームではない。アウディのRS26は、確かな中団の速さを断片的に見せてきた。鈴鹿で記録した9番手は、今季チーム最高の予選結果であり 、シーズン前の評価でも「中団争いにしっかり加われる」と言われていた 。
問題は、その速さを結果に結びつけられない信頼性の低さにある。新レーシングディレクターのアラン・マクニッシュが認める「信頼性の問題の集中砲火」にシーズンを通して悩まされているのだ 。
開幕戦オーストラリアGPでは、ヒュルケンベルグは技術的問題でスタートさえできなかった 。マイアミGPのスプリントでは、フォーメーションラップで燃料漏れからマシンが炎上し出走できず 。バルセロナでの「小石リタイア」は、こうした長い不運のリストに新たに加わった、最も奇妙な一項目に過ぎない。
さらに、チーム代表のジョナサン・ウィートリーがシーズン序盤に突然離脱するなど、組織面での不安定さもチームの課題に拍車をかけている 。
とはいえ、希望の光もある。アウディはメルセデス、フェラーリ、ホンダといった巨大マニュファクチャラーに対抗する独自のパワーユニットを開発し、その初期の速さは高く評価されている 。テクニカルディレクターのジェームス・キーは、2025年にザウバーC45を劇的に改善させた「特殊部隊」のような空力エンジニア集団を率いており、問題を解決する組織力がチーム内にあることを示唆している 。
チーム自身が語るように、「状況は良くなるばかりだ」 。しかし今のところ、アウディのF1ストーリーは、金曜や土曜に見せる進歩が、日曜日のレースではほとんど報われない、というものになっている。