離床から約85秒後、第1段と4基のブースターがすべて燃焼中の飛行段階で、ロケットは南シナ海上空で爆発、機体と衛星の両方が失われました 。この失敗により、2020年の初飛行失敗以来続いていた連続成功記録も途絶えています 。
長征7Aは全長60メートルの中型ロケットで、静止トランスファ軌道(GTO)への衛星投入を目的としています。8月10日の打ち上げは一見正常に見えましたが、アマチュア映像には、離床から90秒足らずでロケットが火球と黒煙に包まれる様子が捉えられています 。
爆発は、第1段コアと4基のストラップオン・ブースターがすべてYF-100エンジン(ケロシン・液体酸素)で同時燃焼している最中に発生しました 。比較的低高度・低速度での崩壊で、機体は完全に破壊されました 。
中国国営新華社通信は約3時間後に「飛行異常」が発生したと確認し、原因は調査中と発表しました 。
中国政府や中国航天科技集団(CASC)から、確定した原因はまだ発表されていません。現時点で専門家が注目するポイントは以下の通りです。
最大動圧点(Max-Q)付近での爆発: 爆発は空気力学的負荷が最大となるMax-Q付近で発生しました。一部の宇宙観測者は、打ち上げ時の荷重による構造破壊か、異常を検知した飛行終了システム(FTS)の作動が原因ではないかと指摘しています 。アマチュア映像の解析では、第2段と第3段の間にあるインターステージ(段間部)でロケットが折れ曲がるように見えることから、構造破壊の可能性が高いとの見方もあります 。
YF-100エンジンへの疑念: 爆発がYF-100エンジンの燃焼中に起きたことから、同エンジンは必然的に調査対象となります。YF-100は長征5号、6号、7号、8号シリーズなど、中国の最新ロケット群全体で広く使われているため、この一件でエンジン系統全体の調査が行われることになります 。
2026年2度目の長征ファミリー失敗: ブルームバーグ通信は、今回が2026年に入って長征ファミリーとしては2度目の失敗であり、年中国全体の軌道投入打ち上げとしては4度目の失敗と報じています 。
中国政府とCASCからは、エンジン異常、構造破壊、誘導系の問題、FTS作動のいずれかという確定した見解はまだ示されていません。
「中星4B」衛星は軍事通信衛星であり、国防用通信に使われるとみられています 。その喪失は財政的な損失であると同時に、計画していた軍事能力に穴を開けることになります 。
今回の調査により、長征7Aロケット群全体の打ち上げが停止される可能性が高いほか、YF-100エンジン系統全体に影響が及べば、中国の高い打ち上げペースにもブレーキがかかる恐れがあります。長征7Aは2021年以降、今回の失敗まで連続成功を重ねていただけに、この失敗は極めて異例かつ重大な後退です 。
嫦娥7号は中国で最も重要な深宇宙計画の一つで、月南極域の資源と地形を探査する無人ミッションです。周回機、中継衛星、着陸機、探査車、小型飛翔探査機で構成され、2026年8月に長征5号ロケットで文昌から打ち上げられる予定です 。
長征7Aの失敗で開始されたYF-100エンジン調査は、以下の2点で嫦娥7号のスケジュールに直接的な脅威となります。
エンジン共通性: 長征5号もYF-100エンジンを使用しています 。調査で汎用的なエンジンの欠陥が見つかれば、長征7Aだけでなく長征5号や8号にも影響が及び、2026年の嫦娥7号打ち上げウィンドウが後退する可能性があります。
明確な警告: TechTimesは今回の失敗により「YF-100エンジンが中国の最新ロケット群全体で強制的な調査対象となった」と報じ、明確に「嫦娥7号月探査計画が危機にさらされている」と警告しています 。複数の中国語メディアも、嫦娥7号ミッションが遅延の可能性に直面していると報じています 。
ロイター通信もこの失敗を報じる中で、「中国は嫦娥7号月探査ミッションを準備中」であることを同じ文脈で言及しています 。
影響の分かれ目: 今回の失敗がこの特定の長征7A機体に固有の構造上または製造上の欠陥によるものであれば、嫦娥7号への影響は最小限です。しかし、YF-100エンジンに共通する原因が見つかった場合、遅延は避けられません。現時点で、スケジュール変更に関する公式発表はありません。
2026年8月10日の長征7Aロケットの失敗は、中国宇宙計画にとって重要な後退です。正確な原因はまだ不明ですが、Max-Q付近でのYF-100エンジン燃焼中の爆発というタイミングから、広範囲にわたる調査が開始されています。軍事衛星「中星4B」の喪失は直接的な損失ですが、YF-100エンジン系統への依存という構造的なリスクが嫦娥7号月探査計画に及ぼす波及効果こそが、より重大な影響となる可能性があります。