液晶パネル(LCD)事業で世界首位を誇るBOEにとって、この発表は単なる新規事業の模索以上の意味を市場に与えました。世界的なAIサーバー投資ブームの中、同社が半導体エコシステムに足を踏み入れる具体的な一歩と受け止められたのです 。
市場の反応は凄まじいものでした。
この流れは、他の「ガラス基板関連銘柄」にも波及し、市場全体でAIインフラ建設への期待感が高まっていることを如実に示しました 。
ところが、熱狂冷めやらぬ翌5月21日、BOEはロイター通信などを通じて正式な釈明声明を発表し、自ら市場の過熱感を冷ますという行動に出ました。その核心は、特に日本の投資家にとっても馴染み深い、冷静な「現実確認」とも言える以下の2点です 。
さらに踏み込んで、今回の覚書で言及されたガラスベースのパッケージ基板や光インターコネクトといった新規事業は「いまだ技術調査の段階」であり、今後2~3年は会社の利益に重大な影響を与えることはないと、投資家に対して異例の注意喚起まで行ったのです 。
この一連の騒動は、AIバブルという言葉が囁かれる現代の株式市場の縮図と言えます。成熟した液晶市場で長年伸び悩んでいたBOEにとって、AIブームへのわずかな関連の「可能性」ですら、株価を長年のレンジから解き放つには十分な材料だったのです。
しかし、同社の迅速な釈明は、私たちに重要な教訓を残します。約4200億円という莫大な取引を生んだ材料は、BOE自身の言葉を借りれば「全く利益に結びついていない、初期段階の探索」に過ぎなかったのです。
非拘束の「協力の意向」から、実際に決算書に数字が載るようになるまでの道のりは、極めて長く、不確実であることを、当事者であるBOE自身が最もよく理解していたのでしょう。