格下げの最大の要因は、メモリーチップコストの爆発的な高騰だ。クックCEOは第3四半期決算説明会で率直にこう述べている。「私たちは今、メモリー価格において『100年に一度の洪水』と呼べる状況にあり、メモリー価格は指数関数的に上昇している」。
アップルの痛みはAIブームに起因する。AIプロセッサには高帯域幅メモリー(HBM)や高度なDRAMが不可欠であり、その需要が限られたベンダーからの供給を圧迫している。これにより、メモリーカテゴリー全体で価格が高騰している。DRAM価格は2026年第2四半期に50%、2026年後半には最大100%の上昇が予測され、NAND価格も急騰している。メモリーはiPhoneの部品原価(BOM:Bill of Materials)の約9%、iPad・Macの15%を占めるため、アップルの粗利率に与える影響は直接的かつ深刻だ。シティは、DRAM調達コストが50%上昇した場合、アップルの粗利率を100ベーシスポイント以上押し下げる可能性があると試算した。モーニングスターは、第4四半期に製品粗利率が前期比250ベーシスポイント低下すると予測した。
アップルが2026会計年度第4四半期に示した売上高成長率見通しは9~11%と、市場コンセンサスの12~12.1%を大幅に下回った。経営陣はその要因として、供給制約と深刻なDRAM・NAND価格のインフレを明確に挙げた。このガイダンスの下方ブレが、7月31日の株価6%下落の引き金となり、その後アナリストの格下げが続いた。
複数のアナリストは、アップルにはまだ世界的に利用可能で、明白なアップグレードサイクルを促進するような魅力的なAI製品がないと指摘している。フィリップ・キャピタルは、「Apple Intelligenceが製品アップグレードを有意に促進している明確な証拠はない」と述べた。弱気派のアナリストは、アップルはAI分野で「静かに遅れを取って」おり、そのAI戦略はまだ収益向上につながっていないと論じている。同社はAIブームの「負け組」に回っている。デバイス製造コストの上昇に苦しむ一方で、それを補うだけのAIによる収益の追い風をまだ享受できていないのだ。
フィリップ・キャピタルは、AI規制もアップルの短期的な見通しに影を落とす要因として挙げた。特に、地域ごとに異なるAI機能に関する規制環境の不透明さが懸念される。また別のアナリストは、サービス収益の伸びの鈍化も今後の数四半期の収益を圧迫する懸念材料として指摘した。
アップルは2026会計年度第3四半期に、売上高1094億ドル、1株利益2.02ドルという過去最高の業績を記録し、アナリスト予想を上回った。iPhoneとMacの需要は堅調で、モーニングスターは特にiPhone 17とMacBook Neoの需要が高いと指摘した。しかし、市場とアナリストの焦点は専ら先行きの圧力にあった。すなわち、メモリーコストによる利益率の圧迫、追いつかないサプライチェーン、実証されていないAIマネタイズ、そしてこれらの逆風が「複数の四半期」続くことを示唆するガイダンスである。
アップルは部品コスト上昇を相殺するため、すでに値上げを開始している。クックCEOは「やむを得ず価格を上げた」と述べている。2026年9月に発売が予想されるiPhone 18 Proは、200~300ドルの値上げが見込まれている。しかしモーニングスターは、これらの値上げはおそらく利益率の圧迫を完全に相殺するには不十分だと警告している。シティは、アップルの2026暦年の粗利率に対する逆風は140ベーシスポイントで、2027年には48ベーシスポイントに緩和されると試算している。
アップルの株価は、同社がコントロールできないコストによって短期的な圧力に直面している。メモリー価格は、AIサーバー向け需要が続く限り高止まりするだろう。プレミアムハードウェアの値上げによる緩和効果は期待できるが、今のところ「100年に一度の洪水」はなおも続いている。