| 将来のエネルギー収入をより慎重に見ている |
政府だけが弱気になったわけではない。ロシア最大手行のズベルバンクは、2026年のGDP成長率見通しを従来の1.0〜1.5%から0.5〜1.0%へ引き下げた 。3月下旬のロイター調査でも、2026年の成長率予想は前月の1.0%から0.8%へ低下し、ロシア経済相は年初の半年間が「厳しい」ものになると警告していた
。また、ロシア政府に近いとされるマクロ経済分析・短期予測センター(CMAKP、TsMAKPとも表記)は、2026年の成長率を従来の0.9〜1.3%から0.5〜0.7%へ引き下げた
。
高金利は、家計にとっても企業にとっても借り入れを高くする。住宅、消費、設備投資の判断は慎重になり、経済全体の需要は冷えやすい。Continuum Economicsが引用した暫定データも、2026年1〜3月期の縮小について、高金利、制裁、ルーブル高、供給制約、根強い物価圧力が重なったと説明している 。
これが痛いのは、ロシアの戦時支出による成長の勢いがすでに弱まりつつあったからだ。The Moscow Timesは、2023〜2024年の戦時成長の加速が薄れ、軍事関連の財政需要が高止まりする一方で、西側の制裁が強まっていると伝えている 。
ロシア経済にとって、石油は依然として重要な収入源だ。ただし、今回の局面では「原油価格が高ければ大丈夫」とは言い切れない。
ロイター系の報道によると、政府に近いシンクタンクであるTsMAKPは、ウクライナによるドローン攻撃と新たな西側制裁が原油生産と輸出を圧迫しているため、世界的な原油高がロシア成長率を大きく押し上げることはないとの見方を示した 。
つまり、問題は1バレルの価格だけではない。生産量が落ちる、港湾や製油所が使いにくくなる、輸出ルートが制裁で制約される――こうした要因が重なれば、国際価格が上がっても、ロシアのGDPや財政収入に十分反映されない可能性がある。
通常であれば、資源価格の上昇はロシア財政や対外収支の支えになりやすい。しかし足元では、その緩衝材が弱くなっている。
The Moscow TimesはCMAKPの見方として、ウクライナによる港湾・製油所へのドローン攻撃がロシアの原油・燃料輸出能力を損ない、生産削減を迫る可能性があると報じた 。同じくロイター系の報道では、2026〜2029年のロシアの原油・石油製品輸出見通しが下方修正されたとされている
。
このため、今回の減速は単なる原油価格サイクルとは違う。焦点は価格だけでなく、戦争と制裁の下でロシアがどれだけ生産し、精製し、輸出できるかに移っている。
原油価格の想定を下げたからといって、ただちにGDPが落ちるわけではない。ただ、エネルギー収入を通じた財政の余裕は小さく見積もられることになる。NEST Centreも、軍事支出の増加と石油・ガス収入の減少により、ロシア財政が圧迫されやすいと指摘している 。
この環境では、景気が弱くなったときに政府が大規模な景気対策で下支えする余地も限られやすい。
下方修正を避けにくくした直接の材料は、2026年1〜3月期の実績だ。ロシア経済発展省の暫定値によると、同期間のGDPは0.3%縮小した。これは2023年1〜3月期以来のマイナス成長で、軍事支出、賃金上昇、財政刺激による支えがあったにもかかわらず起きた 。
2026年について、公式見通しの0.4%成長は、景気後退をかろうじて避ける程度の弱い成長を示している 。2027年も、成長率見通しは2.8%から1.4%へ半減しており、政策当局が早い回復を見込みにくくなったことを示す
。
2029年には2.4%成長へ戻るという道筋は残されているが、その実現は不確実な条件に左右される。具体的には、原油の生産・輸出がどこまで維持できるか、制裁圧力がどう変わるか、戦争関連の財政需要がどれほど続くか、そして中央銀行が物価圧力を再燃させずに金融緩和へ動けるかが焦点になる 。
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