交渉が難航しているのは、半導体事業を担うDevice Solutions(DS)部門。この部門がDRAMやNANDを生産する主要ファブを運営しているため、ここでの労働争議は直接的にメモリー生産へ影響する可能性がある。
計画されているストは、サムスンの歴史でも最大級の規模とみられる。
世界のメモリー市場は現在、主に次の3社が支配している。
このため、どこか1社の生産がわずかに変動するだけでも価格に影響が出る構造になっている。
半導体工場(ファブ)は24時間稼働が前提で、完全停止は極めて難しい。そのため、多くのアナリストは全面的な生産停止の可能性は低いと見ている。
ただし、次のような形で生産効率が落ちる可能性はある。
参加率が30〜40%程度の場合、世界のDRAM生産が約3〜4%減少する可能性があるとの試算もある。NANDでも2〜3%程度の減少が見込まれる。
半導体製造は工程が数週間〜数カ月続くため、一度生産が乱れると完全な回復まで数週間かかる可能性も指摘されている。
なお、労働組合側は今年初めの短時間の集会でメモリー生産が約20%減少したと主張しているが、この数字は独立した確認はされていない。
今回の問題が特に注目されているのは、AIインフラ拡張の真っ只中で起きているためだ。
生成AIの普及により、AIサーバーではGPUとともに大量の高性能メモリーが必要になっている。特に次のメモリーが重要だ。
これらはAIシステムのボトルネックになりつつあり、供給が少しでも減れば市場価格が動きやすい。
サムスンのメモリーは次のような製品に広く使われている。
もし供給の不確実性が高まれば、大手顧客は調達を他社へ分散する可能性がある。アナリストは、注文がSKハイニックスやマイクロンへ移るリスクを指摘している。
現在DRAMの在庫は比較的少なく、短期的な供給減でも契約価格の上昇要因になる可能性がある。
今回のスト報道は株式市場にも影響している。特に米国のメモリーメーカー**Micron(マイクロン・テクノロジー)**だ。
投資家が注目する理由は主に3つある。
実際、バンク・オブ・アメリカはマイクロンの目標株価を950ドルへ引き上げ、AIによるメモリー需要の拡大を理由に挙げている。
一方で株価はニュースに敏感に反応し、スト報道の進展に合わせて大きく上下するなどボラティリティも高まっている。
現時点で多くのアナリストは、仮にストが実施されても
「供給崩壊」よりも「価格と市場心理へのショック」になる可能性が高い
とみている。
TrendForceによれば、仮に数週間続いたとしてもサムスンの四半期売上への直接的影響は限定的と見られている。ただし、供給不安が価格を押し上げ、注文が競合へ移る可能性はある。
最大の焦点は、5月21日までに労使が合意するかどうかだ。
合意が成立すれば市場の緊張はすぐに緩和される可能性がある。一方、実際にストが始まれば、AI時代のメモリー市場に数週間にわたる波紋を広げる可能性がある。