7月時点のNOAA資料では、2026年10~12月に非常に強いエルニーニョとなる確率は81%でした。8月の最新見通しでは、北半球の秋冬全体について90%超へと引き上げられています。海洋観測や予測モデルの更新に伴って確率は変わるため、古い季節予測より最新の公式見通しを優先する必要があります。
1950年以降で特に強かった7回のエルニーニョでは、西海岸と米国南部、なかでも南東部で平年を上回る降水が起きることが多くありました。もっとも、これは季節全体の傾向です。すべての嵐やすべての月が同じパターンになるという意味ではありません。
冬の降水量が増えれば、カリフォルニア、ユタ、コロラドなどでは、気温が十分に低い高標高地域を中心に山岳部の積雪が増える可能性があります。しかし、降水量と降雪量は別の予測です。
暖気が入り込めば、標高の低い地域や中標高の地域では雪が雨に変わります。同じ嵐でも、気温の鉛直分布によって雪、雨、みぞれのどれになるかが変わります。
南西部で平年を上回る降雪、米国北部やカナダで平年を下回る降雪を示す具体的な地図は、NOAAの公式予測ではなく、民間の雪情報会社OpenSnowによる季節予測です。一方、NOAAの過去の分析でも、エルニーニョ時には北部ロッキー山脈、太平洋岸北西部、カナダ西部などで降雪が減る傾向が示されています。
したがって、現時点で最も妥当なのは、州や都市、個別のスキー場について断定するのではなく、「地域ごとの降雪傾向」として捉えることです。
強いエルニーニョでは、米国南部や西部へ向かう嵐のコースが活発になりやすくなります。NOAAの過去分析では、エルニーニョの年に米国西部、とくに南西部で、大雨や河川流量が大きくなる日が平均より増える傾向が確認されています。
カリフォルニアにとっては、雨や高標高の積雪が水資源を支える可能性がある一方、嵐が暖かい空気を伴ったり、短期間に集中したりすれば、次のようなリスクも高まります。
ただし、これはリスクが高まりやすいという意味であり、特定の大気の川(大気中の水蒸気が集中して流れ込む現象)や沿岸洪水が必ず起きるという予測ではありません。季節予測から、数か月先の個別の嵐を特定することはできません。
北極上空の寒気を取り巻く偏西風の渦、いわゆる極渦が乱れたり弱まったりすれば、北米の一部で一時的な強い寒波が起き、エルニーニョがもたらす「北部は暖かい」という大きな傾向を数日から数週間にわたって打ち消す可能性があります。
しかし、今回のNOAAのエルニーニョ見通しは、極渦の乱れが起きることを示していません。エルニーニョだけで、極渦の発生時期や強さを決めることもできません。
つまり、北部の冬の季節平均が暖かくても、その途中に厳しい寒波が入ることはあり得ます。季節予測を、日ごとの天気予報として読むべきではありません。
一方、今回確認した資料だけでは、ベトナムで雨季が早く終わることや、パナマ、エチオピア、インドで2026~27年に確実に干ばつが起きることを、確定的な予測として示す根拠はありません。影響は対象となる季節、各地域のモンスーン、エルニーニョの構造によって変わります。
大西洋のハリケーン活動についても同様です。エルニーニョは熱帯大西洋上空の風の shearing(鉛直方向の風の差)を強め、熱帯低気圧の発達を抑える方向に働くことがあります。しかし、海面水温、湿度、アフリカ東風波など他の条件も影響するため、強いエルニーニョだからハリケーンが少ないと断定することはできません。
ただし、NOAAは記録的な現象や3℃超のピークを確認したわけではありません。雪になるか雨になるかは標高と嵐ごとの気温に左右され、極渦の乱れも確定していません。世界各地の干ばつや雨季の終了時期についても、国単位での断定には慎重さが必要です。
カリフォルニアでは、山岳部に貴重な雪や雨がもたらされる可能性と、暖かく水分の多い嵐による洪水・沿岸災害のリスクが同時に高まる――今回の予測を最も端的に表すのは、この「恩恵と危険の両面」です。