ウォール街アナリストのコンセンサスでは、総売上高は約2022億~2025億元(前年比+9.6~9.7%)を見込む。一方、Non-IFRSベースの純利益は約673億~678億元(同+7~7.6%)、1株当たり利益(EPS)は約6.26元と、増益率は約4.4%にとどまる見通しだ。営業利益率は1.2ポイント低下し36.3%と予想されている。
主な証券会社の予想は以下の通り。
AI支出は今回の決算で最も重要な変数だ。2026年第1四半期には、AIプロダクト(渾元=Hunyuan、元宝=Yuanbao、CodeBuddy、WorkBuddy)により営業利益が約88億元押し下げられた。
経営陣はAI向け設備投資の「大幅な増加」を表明しており、中国国産のAI用ASICが利用可能になる下半期に特に大きな増加が見込まれる。2026年通年の設備投資ガイダンスは約1700~1800億元と、2025年の実績(792億元)からほぼ倍増する。
設備投資の急増はフリーキャッシュフロー(FCF)を直接的に圧迫している。第1四半期の総設備投資は319億元で、前期比63%増加し、そのほとんどがAI関連の計算資源とモデル開発に振り向けられた。2026年通年の設備投資が1700~1800億元(一部のアナリストはそれを上回ると予想)に達する中、ゲームや広告といった中核事業からの営業キャッシュフローのかなりの部分がインフラ投資に消費される計算だ。市場はFCFがこの投資ペースに耐えられるかどうか、そしてAI製品の収益化時期が依然として不透明であることを注視している。
テンセントは、渾元モデルと各種AIエージェント(元宝アシスタント、CodeBuddy、WorkBuddyなど)を、14億人以上の月間アクティブユーザーを抱えるWeChatエコシステムに組み込もうとしている。バンク・オブ・アメリカは、市場がWeChatを「中国のAIエージェント・オーケストレーション層」として過小評価していると主張し、強気の見方を崩さない。
しかし、市場の懐疑論は根強い。投資家は、WeChatのAI機能がユーザーエンゲージメントの向上や有料ユーザーの増加、広告収入の増加に結びつく具体的な証拠を求めている。第1四半期の売上高がコンセンサスを下回ったこと(1965億元 vs. 1990億元)も、収益化の進展を示すプレッシャーを強めている。なお、正式なWeChat AIエージェントのローンチには規制当局の承認が必要となる。
モーニングスターは、テンセント株が2026年に年初来で約30%下落し、最近52週安値を更新したことを指摘。その背景には「AIパニック」、すなわち(1)過大なAI設備投資が適切なリターンを生まないのではないか、という懸念と、(2)中国のマクロ経済と規制環境に対する不確実性があると分析する。
売り込まれているものの、格付け自体は概して強気だ。モルガン・スタンレー(オーバーウエート)、バンク・オブ・アメリカ(買い)、国信証券(アウトパフォーム)、JPモルガン(オーバーウエート)はいずれもEPS予想を引き下げながらも強気の評価を継続している。
目標株価には大きな幅がある。シーキング・アルファはTCEHY(米国預託証券)に対してホールド(中立)評価で1株76ドルの目標を提示。バンク・オブ・アメリカはAIエージェントのシナリオが実現すれば大幅な上昇が見込めるとする。モーニングスターはフェアバリューを維持し、株価はそれに対して44%のディスカウントにあるとしている。
株価反転の最大の契機は、AIの収益化加速を示す何らかの兆候だ。例えば、WeChatの新AI機能、広告の価格決定力の向上、クラウドのAI関連収入、ROIへの具体的な道筋などが挙げられ、2026年の下落トレンドを反転させる可能性がある。
テンセントの第2四半期は、売上高は9~10%の安定成長、広告は18%増、ゲームも11%増と堅調なパフォーマンスを示す見通しだ。しかし、AI向け設備投資が利益率を圧縮し、EPSの伸びは4~5%にとどまり、フリーキャッシュフローにも重くのしかかる。市場の最大の問いは、**「WeChat上のAIエージェントや渾元モデルが、いつ目に見えるリターンを生み出し始めるのか」**という一点に集約される。株価はすでに懐疑論を織り込み、年初来で約30%下落した。AI収益化に関するポジティブなシグナルや設備投資効率の改善が示されれば、反転のきっかけとなる可能性がある。