攻勢はボーフォート城にとどまらない。イスラエル軍は2006年の戦争以来初めてリタニ川を越えて前進し、現在は主要都市ナバティーエから約5キロの地点に展開している 。市の北部と西部への進路では激しい砲撃が続いており、部隊は市を包囲するかのように南部と東部からの進軍を試みている
。
こうした軍事的エスカレーションは、2026年4月16日に最初に合意され、その後何度も延長されてきた名目上の停戦にもかかわらず進行している 。米国が仲介した当初10日間の停戦は、実質的な戦闘停止と交渉の場の創出を目的としていた。しかし、暴力はほぼ途切れることなく続いた。5月15日、ワシントンでの直接協議を経て45日間の停戦延長が発表されたが、イスラエルの空爆とヒズボラのロケット弾・ドローン攻撃は連日続いている
。
6月1日、レバノンは新たな部分停戦を発表した。この合意では、イスラエルがヒズボラの拠点であるベイルート南郊への攻撃を控え、ヒズボラもイスラエルへの攻撃を停止することになっている 。しかし、この協定は広範な紛争の終結を意味するものではないと明示されており、レバノン南部での戦闘は依然として激しい
。部分停戦が発表されてから数時間後、ネタニヤフ首相はベイルート南郊への空爆を命じ、イスラエル当局者は首都へのより広範な攻撃に踏み切る構えを見せた
。トランプ米大統領は、ヒズボラがすべての攻撃停止に合意し、イスラエルも攻撃しないことで合意したと述べたが、地上作戦と越境攻撃は続いている
。
レバノン保健省によると、3月2日の戦闘再燃以降、イスラエルの攻撃による累計死者数は5月中旬までに3000人を超えた 。5月下旬の時点で、死者数は3269人、負傷者数は9840人に達している
。これには少なくとも292人の女性、211人の子ども、116人の医療従事者が含まれている
。
より深刻なのは、停戦によっても犠牲者が増え続けていることだ。4月16日の最初の停戦発表以降だけでも、少なくとも740人が新たに命を落としている 。国連も、停戦開始以降レバノンで824人以上が死亡、2000人以上が負傷し、戦闘継続の中で人道支援の必要性が高まっていると報告した
。また、100万人以上(レバノン人口の20%超)が家を追われ、避難民となっている
。
外交努力は集中的に行われているものの、今のところ暴力の停止にはつながっていない。1983年の「5月17日合意」の失敗以来初となるイスラエルとレバノンの直接和平交渉がワシントンで進行中で、6月2日と3日には第4回会合が予定されている 。現在、交渉は国務省が主導する「政治トラック」と、国防総省(ペンタゴン)が主導する「軍事トラック」の二つに分かれている
。
5月29日に始まった国防総省主導の安全保障協議には、両国の軍事代表団が参加し、9時間以上に及ぶセッションもあった 。根本的な意見の相違は、いまだに大きいままである。レバノンの最大の目的は、イスラエル軍の撤退と領土占領の終結だ。一方イスラエルの目標は、北部国境におけるヒズボラの存在感と戦闘能力の排除である。どちらの側もそれぞれの核心的要求を達成できていない。イスラエルはレバノン南部におけるヒズボラの武装解除の確約を得られておらず、レバノンはイスラエル軍撤退の具体的な日程を得られていない
。
カッツ国防相は、現在の「安全保障圏」が恒久的なものになる可能性を示唆しており、これはレバノンの交渉方針と真っ向から対立する立場だ 。さらにイランは、レバノン紛争の拡大が続けば、ワシントンとの自国の和平協議から撤退する可能性があると警告している
。
2026年6月初旬の現時点で、イスラエルとレバノンの紛争は、戦場の現実と外交努力との間の隔たりが拡大している局面にある。ボーフォート城の制圧は、国際的な圧力にもかかわらず地上作戦を拡大するイスラエルの意思を示すものだ。一方、ヒズボラはなお攻撃を継続しており、優勢な通常戦力に抵抗する能力を保持していることを示している。米国が仲介する協議は続いているが、停戦は崩壊し、死者数が増え続ける中、持続可能な政治的解決への道筋は依然として見えていない。
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