これは突如として起こったわけではない。2026年5月中旬には、IDFの支配地域が既に停戦当初の53%から60%に拡大していることをネタニヤフ首相自身が認めており、「ハマスへの締め付けを強化している」と述べていた 。停戦合意で定められた「イエローライン」(境界線)は完全に無視され、国際監視団や複数のメディアは、この命令が「既に脆弱な停戦を破壊し、壊滅的な人道状況を引き起こす」ものだと強く非難している
。
占領地域の拡大は、停戦の第2段階に向けた交渉が完全に停滞する中で進められている。その最大の、そして解決不可能に見える争点は、ハマスの武装解除である。
米国が主導する「国際平和理事会(Board of Peace)」は国連安保理への報告書で、ハマスが「第2段階への移行における主たる障害」であると明言。検証可能な方法で武器を恒久的に無力化するプロセスを受け入れないことが、全履行の妨げになっていると指摘した 。理事会のトップ外交官であるニコライ・ムラデノフ米国特使も、「停戦の全てはハマスの武装解除にかかっている」と端的に述べている
。
しかしハマスは強硬な姿勢を崩さない。同組織は、イスラエルが第1段階の義務を完全に履行するまでは武装解除の議論には一切応じられないと主張。その条件とは、停戦ラインを超えて占領した全地域からのイスラエル軍の完全撤退と、人道支援物資や復興資材の妨げない搬入だ 。
交渉は「完全崩完全崩壊の瀬戸際」に達しており、イスラエル治安当局も本格的な戦闘再開の可能性を公然と準備し始めている 。ガザの本格復興はハマスの武装解除を前提としているため、この膠着状態によって破壊された街は復興の目処が立たないまま放置されている
。
軍事的な圧力が強まる一方で、イスラエル政府はガザからのパレスチナ人の大規模な出国を促す長期計画も制度的に推し進めている。2026年5月27日と28日、イスラエル・カッツ国防相は「然るべき時、然るべき方法で」パレスチナ人の「自発的移住」計画を実行すると改めて表明した 。
イスラエル政府はすでに国防省内に、陸・海・空路を使った「ガザ住民の自発的出発のための安全で管理された通行」を担当する新しい局を設置している 。イスラエル側はこれを、戦闘地域から民間人を脱出させる「人道的措置」と位置づけている。カッツ国防相は「ハマスはガザ住民を人間の盾として利用し、今や人質に取って、人道支援物資で金を巻き上げ、ガザからの出国を妨害している」と主張する
。
この移住計画は、ネタニヤフ政権を支える極右連立パートナーから熱狂的な支持を得ている。ベザレル・スモトリッチ財務相は以前、イスラエルがガザの220万人のパレスチナ人のうち半数を2年以内に移住させるよう促すべきだと主張していた 。スモトリッチ氏やイタマル・ベン・グビル国家安全保障相のような、ガザ地区への恒久的なイスラエル人入植地再建と軍事的支配を主張する勢力からの内政的圧力が、2026年10月に予定される選挙を前に、領土掌握と住民移送という政府の攻撃的な二正面作戦の重要な背景となっている
。
停戦という名の下でも、軍事作戦と占領地拡大はガザの民間人に甚大な犠牲を強いている。2025年10月の停戦発効以降、イスラエル軍の攻撃によって870人以上のパレスチナ人が死亡したと報告されている 。拡大する地上作戦や空爆によるこれらの死者数は、停戦合意が本来約束していたはずの戦闘行為の停止と、地上の暴力的な現実との間にある、途方もない隔たりを如実に示している。
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