今回の黒字転換を技術面で支えるのが、サムスンの第2世代2nm GAA(Gate-All-Around、ゲートオールアラウンド)プロセスだ。Chosun Dailyなど複数の韓国メディアによると、2026年初頭時点での2nmプロセスの歩留まり(良品率)は約55~60%に達している 。この数字は、量産の経済性が成り立つとされる一般的な目安である70%にはまだ届かないものの、初期ロットの商業生産を開始し、新規顧客を獲得するには十分な水準だと業界では評価されている。実際、サムスン電子は2026年第1四半期の決算説明会で、「先端プロセスのライン稼働率が最大水準に到達した」ことを公式に認めている
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この2nmプロセスの立ち上がりは、AIアクセラレーター、高性能コンピューティング(HPC)チップ、車載用プロセッサーといった高付加価値製品の受注を勝ち取る上で極めて重要だ。テスラとの大型契約に加え、米国や中国の他の主要顧客との交渉も進行中で、サムスンは2026年の2nm関連受注が前年比で30%以上増加すると予想している 。
サムスンのファウンドリー戦略にとって最大の追い風となったのが、2025年半ばにテスラと締結した推定約165億米ドル(約2.3兆円)規模のウェハ製造契約だ 。この契約は2033年までの長期にわたり、テスラの完全自動運転ソフトウェアや人型ロボット「Optimus(オプティマス)」に搭載される次世代AI5チップ、さらにその先のAI6チップの製造をカバーしている
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生産の中心となるのは、サムスンが約370億米ドル(約5.2兆円)を投じて建設した米国テキサス州テイラー工場である。この工場は2026年4月24日、製造装置の搬入開始を告げる「設備導入式」を開催し、2nm GAAプロセス用のリソグラフィ(露光)装置などの据え付けを本格化させた 。さらにその数日後には、韓国の素材企業ENF Technologyがテキサス州カイルの自社工場からテイラー工場へ半導体用プロセス薬液の出荷を開始。韓国系素材メーカーが米国現地から商用出荷を行う初の事例となり、サプライチェーン(供給網)が実際に稼働し始めたことを示す象徴的な出来事となった
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テスラ向けチップの生産開始時期には微妙なニュアンスがある。テイラー工場での量産開始は2026年後半が広く目標とされているが、本格的な大規模生産は2027年初めからになる見通しだ 。複数の情報筋によれば、2026年末までにパイロット(試験)生産の準備が整い、テスラのAI5チップは早ければ2026年後半に一部生産が始まる可能性もあるとされるが、全面的な量産開始は2027年後半になるとの見方もある
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ファウンドリー部門の黒字化は、サムスンが単独で成し遂げたものではない。それは半導体メモリ事業が経験している歴史的な好況局面と同時に進行している。2026年第1四半期、サムスンのデバイスソリューション(DS)部門は、HBM4やDDR5といったAI向け高性能メモリの爆発的な需要に牽引され、過去最高の四半期営業利益を叩き出した 。メモリの平均販売価格(ASP)は、2025年の通年平均と比較して約146%も急騰したと報告されている
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サムスンは業界で初めてHBM4の量産を開始し、NVIDIA GTC 2026では次世代品であるHBM4Eも披露した 。このAIメモリブームがDS部門に莫大な利益をもたらすことで、ファウンドリー部門への継続的な巨額投資を支える財務的な余裕を生み出しているのだ。KB証券は、サムスンDS部門の2026年の営業利益が前年比約79%増の64.2兆ウォンに達し、メモリ価格の高騰とファウンドリーの稼働率改善がその原動力になると予測している
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もはやファウンドリー部門は、収益を圧迫し続ける重石ではない。改善する2nm歩留まり、過去最高水準の稼働率、HBM向けベースダイ(基底部のチップ)の生産、そしてテイラー工場でのテスラ向けチッププログラムの始動。アナリストが「構造的改善」と呼ぶ、この同時多発的な進展が、サムスンファウンドリーの新たな成長軌道を支えている 。
2026年第3四半期の黒字転換はもはや確実視されつつあるが、当然ながら保証されたものではない。2026年初頭の一部報道では、テイラー工場での本格的な量産開始が2027年初めにずれ込む可能性が指摘されている 。また、テイラー工場への莫大な投資(2nm装置だけで5兆ウォン以上が必要と試算されている)に伴う減価償却費は、収益が拡大しても利益率に重くのしかかるだろう
。2nmプロセスの歩留まり向上も道半ばであり、現状の55~60%という水準は事業として成立するものの、最大のライバルであるTSMCとの競争では、ミスが許されない厳しい数字であることには変わりない
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状況が変わったのは、稼働率、歩留まり、大型受注というサムスンの主要な経営レバー(業績改善の手段)が、今、初めて同時に好転しているという明確な証拠が積み上がってきたからに他ならない。
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