第二の壁:AI未対応データ問題
こちらは、より目に見えにくい障壁だ。仮に最新のインフラを整えたとしても、企業内のデータが散在し、統制が取れておらず、品質に問題があれば、AIの学習や推論には全く使い物にならない。この提携では、ServiceNowの「Workflow Data Fabric」をIBM watsonx.dataで拡張し、「データ品質」「可観測性(Observability)」「マスターデータ管理」の機能を提供する。これらはServiceNowのデータカタログを通じて一元管理される。目指すのは、骨の折れる一回限りのデータクレンジング作業ではなく、企業データを継続的に「AI-ready(AIがすぐに使える状態)」に保つ仕組み作りである。
1. アプリケーションのモダナイゼーション(刷新)
中核を担うのは、レガシーコードの理解とリファクタリングを得意とするAIエージェント「IBM Bob」と、Javaアプリケーション向けの「IBM Enterprise Application Runtimes」である。既存の環境内で作業することで、システムをゼロから作り直すことなく、段階的に進化させる手助けをする。
2. エンタープライズデータガバナンス(企業データ統制)
ServiceNow Workflow Data Fabricを拡張し、IBM watsonx.dataのレイヤーを追加する。これにより、組織はデータ品質の管理、データの流れの監視、マスターデータの維持を一貫した方法で行えるようになる。すべての情報はServiceNowのデータカタログにひも付き、可視化とコントロールが効く状態になる。
3. 自律的なインフラ運用
Red Hat Ansible、Instana、IBM Bob、そしてHashiCorpのインフラツール群を組み合わせ、問題がビジネスに影響を及ぼす前に検知し、修復する。これらはServiceNowのITワークフローに直接統合され、運用チームの役割を「事後対応の消防活動」から「AIによる事前対応と自動解決」へと変革することを狙う。
IBMとServiceNowは、これらの共同開発ソリューションを2026年後半に顧客向けに提供開始する予定であると発表している。当初の発表には、詳細な価格やティア(プラン)に関する情報は含まれていない。これは、技術統合の深化に合わせて、段階的に展開されていくことを示唆している。
こうした足跡を振り返れば、2026年6月の発表は論理的な到達点であることが分かる。それはAIの機能をさらに重ねるのではなく、企業のAIプロジェクトがそもそも成功するかどうかの前提条件――「そのデータは信頼できるのか」「そのシステムは実際にAIモデルを動かせるのか」という根本に、真正面から取り組むものなのだ。
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