主幹事を務めるのは、日本の三井住友銀行(SMBC)、オランダのABN AMRO銀行、そしてドイツの保険大手アリアンツの資産運用部門であるアリアンツ・グローバル・インベスターズという、グローバルに名を連ねる強力な金融連合だ 。
会長兼暫定CEOのゲイリー・ウォジャシュケ氏は、この契約を広範なAIの文脈に位置づけ、次のように述べている。「ピュアDCは、欧州と中東のAI変革の中核に位置づけられつつあります。地域で最も急成長するFLAP-Dハイパースケールプラットフォームを活用し、次世代のAI推論インフラを提供します。世界的な金融機関から寄せられている支援は、それを反映したものです」。CFOのマイク・シュワルツ氏も「今回のシンジケーションの成功とコーポレート枠の増額は、市場の需要の深さと、貸し手が我々の資産、体制、戦略に寄せる信頼の両方を示すものです」とコメントしている
。
この欧州拡大の旗艦プロジェクトが、アムステルダムの西港(Westpoort)地区に建設されるAMS01キャンパスだ。
ピュアDCが中東に初めて進出したアブダビ・ヤス島のAUH01キャンパスは、16エーカーの敷地に段階的な成長を想定して建設された 。ここで明らかになるのは、運用上の進展と、直後に襲った地政学的脅威という、全く異なる二つの現実だ。
運用の進捗:キャンパスの建物1(20MW)は2025年に稼働を開始し、ハイパースケール顧客への最初のデータホール引き渡しを計画通りに完了した 。施設管理(FM)には世界的な不動産サービス会社JLLが任命され、ハイブリッド空冷・液冷システムや高圧電気設備の保守を担っている
。
認可を受けた拡張:地域の混乱にもかかわらず、ピュアDCは技術的な作業を続けた。2026年4月下旬、同社はアブダビの電力会社TAQAから、設計の最適化と新電力インフラの追加により、キャンパスの総IT容量を41MWから48MWへと7MW拡張する最終承認を取得したと発表。同時に、2025年の施設の電力使用量の100%を「国際再生可能エネルギー証明書(I-REC)」で相殺し、運用エネルギーの完全な脱炭素化を図ったことも明らかにした 。
「爆弾」で粉砕された計画:中東への地域コミットメントという確かな物語は、2026年4月下旬に打ち砕かれた。CEOゲイリー・ウォジャシュケ氏はCNBCのインタビューで極めて率直に語り、中東で計画されていたパイプラインへの全ての投資判断を停止したと認めた 。
直接の引き金は、物理的な被害だった。ウォジャシュケ氏の説明によると、ピュアDCのアブダビで運用中のデータセンターが、付近で起きたイランによる攻撃で発生した榴弾の直撃を受けた。理論的なリスクが、現実のものとなったのだ 。また、「原油価格の高騰と深刻なサプライチェーンの混乱」も凍結の背景にあるとした
。この動きは業界全体の衝撃を反映している。この紛争では以前にも、イランのドローンがアラブ首長国連邦(UAE)とバーレーンのアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)施設を襲い、広範なサービス障害を引き起こしていた
。
矛盾するシグナル:しかし、そのわずか1週間後の2026年5月7日、データセンター専門メディア「Data Centre Dynamics」は、ピュアDC自身が「ドローンの破片が至近距離に落下したにもかかわらず、報道とは異なり中東投資を停止していない」と宣言し、市場を戦略的柱として引き続き注力すると表明したと報じた 。これはCEOがCNBCの公式発言で語った内容と真っ向から矛盾する。さらに別のメディアは、同社が「最近の誤解を招く報道を強く否定した」と伝えた
。
現時点で最も信頼できるのは、CEO本人が自らの言葉で行った最初の声明だ。
ピュアDCは今、AIインフラ覇権をかけた欧州への積極投資と、運用資産がすでに戦火に巻き込まれた中東の現実との間で、かつてない緊張に直面している。アムステルダムのテナントは事実上マイクロソフトで確定し、資金調達も成功した。しかし、世界のテック企業が注ぎ込もうとしている中東回廊は、CEO自身が「焼け落ちる建物」と表現したように、その成長シナリオの根底が揺らいでいる。この企業の次なる一手は、まさに業界全体のリスク評価の指標となるだろう。
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