このシリーズは、CGによるレンダリングではない。ヒュンダイはこれを「表現、感情、そしてスポーツを通じて、人間中心のロボティクスの未来を探求する旅」と位置づけている 。映像の中では、アトラスがゼロからサッカーを学び始める。そのクライマックスで披露されるのが、軸足の後ろにもう一方の足を交差させてボールを蹴る、高度で技術的な「ゴースト・ラボーナ(Ghost Rabona)」だ。
この驚くべきキックは、コンピューターグラフィックス(CG)を一切使用せず、実際の人間のサッカーの動きから収集したデータで訓練された「強化学習」によって実現した。この一連の動作は、動的バランス制御、全身の協調、そしてリアルタイム適応という、ボストンダイナミクスの「フィジカルAI」の技術力を如実に示している 。この映像は公開からわずか4日間で累計2100万回という驚異的な再生回数を記録し、メインキャンペーンへの期待を大きく高めることに成功した 。
2026年6月1日、ヒュンダイは満を持してキャンペーンの核となる60秒のシネマティックブランドフィルム「Next Starts Now」を公開した 。この映像は、ワールドカップの舞台で約180カ国に向けて放送される予定であり 、既に名声を確立したスター、未来を担う新星、そして先端ロボティクスという異なる世界を一つに融合させている 。
映像の中心となるのは、以下の存在だ。
ヒュンダイのキャンペーンは動画の中だけで完結しない。同社は、アメリカ、カナダ、メキシコで開催されるFIFAワールドカップ2026の指定会場に、ボストンダイナミクスの「アトラス」と「スポット」を実際に配備する計画を正式に発表した。これは、ヒュンダイが長年にわたり継続してきたFIFAパートナーシップの、正式な拡張にあたる 。
これらのロボットは、単なるアトラクションではない。試合運営の強化、ファンエンゲージメントの向上、そして大会期間中の安全性と効率性のサポートといった、実用的な役割を担うことが想定されている 。ヒュンダイのチーフマーケティングオフィサーであるソンウォン・ジー氏が「未来をファンに待たせるのではなく、未来をファンに直接届けること」がこのキャンペーンの本質だと語るように 、これはブランドの未来像を現実の体験として提供する試みだ。
この「未来」は、個人の車内にも拡張される。ヒュンダイは、韓国、米国、カナダ、欧州で販売された一部の対象車種向けに、限定の「FIFA ワールドカップ 2026 ディスプレイテーマ」を無料アップデートとして提供している。このテーマを適用すると、車両のデジタルクラスターやインフォテインメント画面がワールドカップにインスパイアされたデザインに変わり、エンジンの始動時や停止時、特定のナビゲーション画面でアトラスとスポットのアニメーションが登場する 。
車両やスタジアム以外でも、ヒュンダイはファンのためのリアルな体験の場を創出する。ハイライトの一つが、「ヒュンダイ提供 FIFA博物館」だ。2026年6月11日から7月19日までの会期で、ニューヨークの2つのランドマーク、ラジオシティ・ミュージックホールとロックフェラーセンターというユニークな場所で同時開催される。この博物館はサッカーの歴史と遺産を称える場であると同時に、ボストンダイナミクスのロボットスター、アトラスとスポットの展示も行われる 。
さらにヒュンダイは、FIFAファンフェスティバル会場やその他の主要な大会関連施設でも、没入型のファン体験を展開する計画を明らかにしている 。また、各国の代表チームをモチーフにした「Be There With Hyundai ナショナルチームバス」キャンペーンも、ワールドカップ関連の大規模な取り組みの一環として実施される予定だ 。