ステーブルコインUSDCの発行体として知られるサークルが、機関投資家向け独自ブロックチェーン「Arc」の中核トークン「ARC」のプライベートセールで2億2200万ドル(約222億円)を調達し、暗号資産業界に新たな地殻変動を起こしている。完全希薄化後評価額(FDV)は30億ドル(約3000億円)に設定され、上場企業によるトークンプレセールとしては史上初の事例となった 。
発表のわずか数週間後、大手DeFi(分散型金融)プロトコルAaveの開発企業Aave Labsは、次世代貸出プロトコル「Aave V4」をArc上に展開するガバナンス提案を提出。Aaveのコミュニティ承認が得られれば、Arcが機関投資家向け金融インフラの中核に据えられることになる 。
機関投資家が求める「規制対応型ブロックチェーン」を巡り、サークルとAaveという二大巨頭の戦略が交錯し始めた。
5月11日に発表されたこの資金調達は、740百万ARCトークンを1トークンあたり0.30ドルで機関投資家に販売する形で実施された。トークンの初期供給量は100億トークンで、その60%がエコシステム開発に割り当てられている 。
このラウンドを主導したのは、暗号資産投資で知られるa16z Crypto。7500万ドル(約75億円)のアンカー投資を実行した 。
投資家名簿には、伝統的金融と暗号資産の両雄がずらりと並ぶ。
このプレセールが可能だった背景には、米国1933年証券法に基づく登録免除の私募という枠組みがある。一般投資家を対象とせず、適格機関投資家のみに絞った戦略的な資金調達手法だ 。
サークルは同日、2026年第1四半期決算も発表。総収益・準備金収入は前年同期比20%増の6億9400万ドル、USDC流通高は770億ドル、オンチェーン取引高は21.5兆ドルに達した。調整後EBITDAも24%増の1億5100万ドルと堅調で、プレセールの追い風となった 。
なお、ARCトークンはサークル社の株式ではなく、Arcブロックチェーンのガバナンス権と将来のステーキング報酬を表すユーティリティ・トークンだ。サークル自身も初期供給量の25%を受け取り、バリデータ運用とステーキング報酬に充当する 。
5月29日、Aave Labsはガバナンスフォーラムに「Temp Check(温度チェック)」と呼ばれる初期提案を投稿。Aave V4をArcメインネットに展開する構想について、コミュニティの初期的フィードバックを求めた 。
この提案の最大の焦点は、明確な収益保証が組み込まれている点だ。
Aave Labsは、Arc上でのV4展開から最低年間200万ドル(約2億円)の収益をAave DAOにもたらすことをコミット。5年間の総額は**1000万ドル(約10億円)**に達する 。
この金額設定は偶然ではない。Aaveコミュニティは2025年末以降、「収益性の低いV3市場の閉鎖」と「新チェーン展開に年200万ドルの最低収益基準」を戦略として打ち出しており、Arc提案はまさにその基準に合致する 。
提案で想定される初期の貸出対象資産は以下の通り。
この動きは、Aaveが掲げる「Aave Will Win」フレームワークとも整合する。これはプロトコルの全製品収益をAave DAOのトレジャリーに直接還元する戦略で、V4展開による手数料収入がコミュニティに直接利益をもたらす設計だ 。
サークルCEOのジェレミー・アレール氏もこの統合を公に支持しており、Arcにとっては「実績あるDeFiプロトコルを自チェーンに内包する」という強力な差別化要因になる。規制対応をアピールするArcのストーリーに、運用実績10兆円超を誇るAaveの信頼性が加われば、機関投資家の呼び水となる可能性は高い 。
Arcの開発は着実に進んでいる。
パブリックテストネットは2025年10月にローンチし、2026年5月初旬までに2億4400万トランザクションを処理。ブラックロック、Visa、HSBC、ゴールドマン・サックス、AWSなど100社以上が参加し、実運用を見据えたテストが重ねられた 。
メインネットのローンチは2026年夏を予定。初期の合意形成アルゴリズムは、サークルがバリデータを管理する**プルーフ・オブ・オーソリティ(PoA)**方式となる。これは分散性よりも安定性を優先した、いわば「トレーニング期間」として設計されている 。
しかし、真のマイルストーンはその先にある。
プルーフ・オブ・ステーク(PoS)への完全移行だ。投資家向け契約文書には明確なトリガー条項が盛り込まれており、サークルは2028年5月8日までにPoS移行を完了しなければならない。期限に遅れた場合、投資家は償還請求やその他の権利を行使できる 。
トークンのロックアップ期間もPoS移行後に開始され、最低1年間、最長4年間の拘束期間が設定される見込みだ 。
Arcの技術仕様では、以下の機関投資家向け機能が特徴となる。
機関投資家向けという設計思想は、合意形成から暗号技術、取引手数料に至るまで一貫している。
3千億円規模の資金調達、Aaveの10億円収益保証、PoS移行の期限設定──これらは単なる技術アップデートではなく、機関投資家が本気でブロックチェーンに参入するための「制度的枠組み」を構築する試みだ。
Arcが目指すのは、規制対応とDeFiの資本効率を両立した「ハイブリッド金融レイヤー」。メインネットがこの夏にローンチすれば、その成否はすぐに問われることになる。
ピースはすでに盤上に揃っている。あとは実行力と、機関投資家が実際に資金を動かすかどうかだ。
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USDC発行元サークルが総額約222億円($222M)のARCトークンプレセールを完了。評価額は約3000億円で、上場企業として初のトークンセールとなる。同時にAaveがV4をArcの基盤的貸出プロトコルとして展開することを提案。
USDC発行元サークルが総額約222億円($222M)のARCトークンプレセールを完了。評価額は約3000億円で、上場企業として初のトークンセールとなる。同時にAaveがV4をArcの基盤的貸出プロトコルとして展開することを提案。 Aaveの提案にはAave DAOへの最低年間2億円($2M)、5年間で10億円の収益保証が含まれ、Aaveの新チェーン展開基準をクリア。初期の貸出対象資産はUSDC、EURC、cirBTCを想定。
メインネットは2026年夏にプルーフ・オブ・オーソリティ(PoA)でローンチ。サークルは2028年5月8日までに完全なPoS(プルーフ・オブ・ステーク)へ移行する必要があり、遅延時には投資家の償還権が発生。
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