両者の明暗を分けた要因を、マクロ経済、金融政策、市場構造の3層で徹底解説します。
最も象徴的なのは、S&P500対ビットコインの比率が、200週移動平均線を史上初めて長期にわたって上回ったことです。これは2012年以来、一貫してビットコイン優位だった構造が初めて崩れたことを意味します。2012年にはS&P500を1単位買うのに300BTC以上必要でしたが、今では約0.12BTCで済みます。ナスダック対ビットコイン比でも同様の現象が確認されています。
CoinDeskやGate.ioのアナリストは、この動きを「デカップリング(連動性の断絶)」と表現しました。米国株式はAIや半導体銘柄への集中投資でリスク選好が極限まで高まった一方、暗号資産はマクロ環境特有の逆風に足をすくわれた形です。
1. 原油価格の高騰
最も直接的な引き金として頻繁に指摘されたのが原油高です。7月13日、米国がイランに対して新たな攻撃を開始したことを受け、原油価格が急騰。ビットコインは同日、一時3.8%下落し61,761ドルまで値を下げました。8月に入ってからも、ホルムズ海峡情勢の緊迫化を背景に、BTCは何度も65,000ドルを割り込みました。アナリストは、この原油高を「CPIにおける最大の不確定要素(ワイルドカード)」と指摘しています。
2. 米国債利回りの急上昇
長期金利の急騰は、FRB(米連邦準備制度理事会)の追加利上げ観測を強めました。8月5日には、金利上昇を受けてBTCは64,000ドルを割り込み、市場はよりタカ派的なFRBのスタンスを織り込み始めました。
3. 地政学リスク(米・イラン)
原油高に加え、米イラン間の軍事衝突リスクそのものが、リスク回避姿勢を強めます。この組み合わせは「より大きな逆風」であり、「流動性に敏感な資産である暗号資産にとって典型的に不利」と評価されています。
4. ドル高の持続
円相場が再び1ドル=160円に迫る動きを見せるなど、ドル高環境が続いています。これは代替的な価値保存手段としてのBTCへの需要を抑制する要因です。
レバレッジ(証拠金取引)が、下げを加速させた原動力です。Talos社のデータによると、Q3(第3四半期)を通じてビットコインとイーサリアム(ETH)のロング(買い)ポジションの強制決済(ロスカット)は合計83.5億ドルに達しました。
主な清算イベントは以下の通りです。
これらの連鎖的なレバレッジ解消は、マクロ環境がもたらす下落をさらに増幅し、市場の厚み(流動性)を著しく減少させました。
市場の次の大きなメルクマールは、8月12日水曜日午前8時30分(米国東部時間)に発表される7月の米消費者物価指数(CPI)です。市場コンセンサスは前年比3.4%(6月は3.5%)と、やや鈍化を見込んでいます。
この指標は、FRBの9月の金融政策判断を左右するため、極めて重要です。
CME(シカゴ・マーカンタイル取引所)のFedWatchデータによると、9月のFOMCで利上げが行われる確率は49.9%、据え置きが50.1%と、ほぼ互角の状態です。
弱気な値動きの一方で、強気な材料も存在します。ビットコインはCPI週を前に「機関投資家からの強い需要」を受けて65,000ドルを一時突破しました。ETFへの資金流入は継続しており、レバレッジ清算による売り圧力を受け止めています。8月11日の下落局面でも、クジラ(大口投資家)の買い集めが観測され、大型投資家がこの押し目を機会と捉えている可能性を示しています。
ビットコインは現在、マクロ環境(原油高、金利上昇、ドル高)がもたらす逆風と、ETFを通じた機関投資家からの継続的な資金流入という2つの大きな力の狭間で綱引きをしています。一連の清算連鎖は過剰なレバレッジの多くを洗い流しつつあります。そして週明けのCPI発表が、64,000ドルのサポートラインを死守するか、さらに下値を探るかの分岐点となるでしょう。