今回のシリーズAラウンドを主導したのは、英国の成長企業投資に実績を持つグレシャム・ハウス・ベンチャーズです。既存投資家であるボルダートン・キャピタル、エカ・ベンチャーズ、ウェーブメーカー360も強い信任を示して追加出資しました。さらに、暗号資産取引所Blockchain.comの共同創業者ニコラス・キャリー氏などのエンジェル投資家も参加しています 。
ソニア・シャモッキ博士の経歴は、典型的なスタートアップ創業者のそれとは一線を画します。彼女はオックスフォード大学で医学を修め、世界有数の大学病院で救急医療に従事しました。NHSの第一線で、彼女は幾度となく同じ構造的欠陥を目の当たりにしました。それは、患者の「地理的条件」が「臨床的な必要性」よりも優先され、専門治療を受けられるかどうかを決めてしまうという現実です 。
この医療提供体制の欠陥を根本から理解するため、彼女は戦略コンサルティングファームのボストン・コンサルティング・グループ(BCG)に転職し、なぜ専門知識が地域に行き渡らないのかを分析しました。そして、その代替となる仕組みを自ら創り出すために、2022年に01Healthを設立したのです 。
01Healthが掲げるのは、ロンドンの超高級医療街「ハーレー街」レベルの専門医療を、全国の「商店街」で受けられるようにするという構想です 。この目標を実現するため、同社のプラットフォームはいくつかの中核的要素を統合しています。
この統合システムによって、ネットワーク化された少数の専門医が、はるかに多くの一般医(かかりつけ医)を遠隔から監督・支援できるようになります。結果として、これまで大病院や専門医療センターに行かなければ受けられなかった治療を、地域のかかりつけ医で安全に提供できるようになるのです 。
プラットフォームを他社に開放する前に、01Healthは自社で消費者向け医療サービスを立ち上げ、そのビジネスモデルが成立することを証明しました。
これらの歯科領域での成功に続き、すでに他の診療科でも新たな治験が始まっており、このモデルが歯科以外にも広く応用可能であることを示しています 。
今回調達した約25億円の資金は、明確な3段階の戦略に基づいて投下されます 。
1. 英国事業の強化
英国国内のより多くの診療所やクリニックグループ、歯科医療サービス組織(DSO)へのプラットフォーム展開を積極的に進め、地盤をさらに固めます。
2. 米国市場への本格参入
01Healthは正式に米国市場への参入を発表しました。すでに現地でトライアル(試行導入)が進行中であり、米国での商用事業を統括する責任者も任命されています。
3. 単独プラットフォームとしての商用提供開始
これが最も大きな戦略転換です。01Healthは初めて、自社技術を独立した製品としてライセンス提供します。12ヶ月間にわたる企業パートナーとの試験運用を経て、外部の診療所やクリニックグループ、歯科医療サービス組織が、01Healthのプラットフォームを直接導入できるようになります。これにより同社は、自社ブランドのクリニック運営から一歩踏み出し、「専門医療の分散化」を実現する中核的なインフラ提供企業へと進化を遂げるのです。