b = (D / SATURATION_BALANCE)^1.5DSATURATION_BALANCE1. DeFiレンディング市場への壊滅的な影響
現在のステーキング量(約4150万ETH)では、この提案によりバリデータの収入は約2.68%から約1.19%へと約55%も削減される 。この急激な低下は、AaveやMakerといったプロトコル全体で担保として広く利用されているstETHなどのリキッドステーキングトークン(LST)に波及する。Aave創業者のスタニ・クレチョフ氏はこの提案に強く反対し、stETHなどのLSTを裏付けとする借入市場を不安定化させる恐れがあると警告している 。SharpLinkのCEO、ジョセフ・チャロム氏は、このドラフトは「約350億ドル相当のリキッドステーキングトークン担保からベースレートを奪い去る」ものだと主張した 。
2. ステーキングの集中化リスク
批判派は、利回りの低下により、まず個人(ソロ)ステーカーや独立した運用者が退出に追い込まれ、結果としてマイナス利回りでもバリデータを運用できる大規模な補助金を受けた運用者に検証権限が集中する危険性を指摘する。これは、提案の公的目的である分散化の促進とは正反対の結果をもたらすという 。フォー・ピラーズのXへの投稿は次のように述べている。「利回りが低下すると、ソロステーカーや独立運用者が最初に退出に追い込まれ、バリデータセットはごく一部に集中する...」 。
3. 機関投資家による採用への後退
SharpLinkのCEO、ジョセフ・チャロム氏は、EIP-8363が「ビットコインに対するETHの最大のアドバンテージ」、すなわち利回りを生むセキュリティモデルを殺す可能性があり、機関投資家がステーキングポジションを解消するにつれてETHやLSTの売却を引き起こす可能性があると公に警告した 。ステーキング利回りの低下は、利回り資産としてのETHに対する機関投資家の関心を減少させ、ネットワークの機関投資家への勢いにとって重要な時期に打撃を与えることになる 。
4. 不確かな均衡点とセキュリティリスク
Blockworks Researchは、この変更後の最終的なステーキング均衡点は不透明だと指摘している 。提案はネットワークのセキュリティを直接脅かすことなくステーキング量を減少させる可能性が高いが、その後の影響をモデル化することは困難である。もし過剰なステーキングが解約されれば、ネットワークの安全性は低下する可能性があるが、これは経済的混乱に比べれば二次的な懸念と見なされている 。
5. プロセス上の懸念:性急で時期尚早
このドラフトは、次期ハードフォーク「ヘゴタ(Hegotá)」(2027年第2四半期に予定)を対象とする提案の締め切りであるAll Core Devs(ACD)のわずか2日前に提出された。このため、コミュニティでの十分な議論がないまま導入されたという批判が集まっている 。このタイトなスケジュールは、イーサリアム・マジシャンズのディスカッションスレッドで繰り返し論点となっている 。
2026年8月6日のAll Core Devs会議で、提案者はEIP-8363をヘゴタアップグレードの対象から外すことを検討していると表明した 。この提案はあくまで ドラフト(Draft) 段階であり、いかなるアップグレードにも採用されておらず、将来のハードフォークに向けて承認、スケジュール決定、確認されてもいない 。
Blockworks Researchは、その複雑さ、ステーキングとDeFiへの混乱の可能性、そして巻き起こった激しい反発を理由に、この提案は「可決される可能性は低い」と評価している 。複数のアナリストは、これをソラナの SIMD-228 と直接比較する。SIMD-228は動的ステーキング発行提案であり、2025年3月に 賛成61.4%を得たものの、可決に必要な66.67%のスーパーマジョリティ(絶対多数)に届かず 否決された 経緯がある 。
イーサリアムがEIP-8363を議論する一方で、ソラナはオンチェーンガバナンスシステムを通じて、自らの供給引き締め提案を SGP-0003 としてパッケージ化し、前進させている 。
EIP-8363とは異なり、ソラナの提案はガバナンスパイプラインをよりスムーズに通過してきた。各SGPは、16日間の議論フェーズに入るためにアクティブステークの15%の支持を確保し、その後、議論、ステークスナップショット、投票という約22日間(11エポック)のプロセスを経る。可決には、決定権を持つステークの3分の2の支持が必要となる 。
重要な違いは、ソラナのSIMD-228(EIP-8363に最も近い類似案)が 2025年3月に既に否決 されていることだ。これは、動的な発行量変更が実際にはいかに難しいかを示している 。ソラナの現在の提案は、代わりに手数料焼却メカニズム(SIMD-0553)と固定インフレ削減(SIMD-0411)に焦点を当てており、これらはステーカーにとって混乱が少ない 。