このウォレットは、2015年のイーサリアムICOで620ドル(当時のレートで約1ETH=0.31ドル)を投資し、2000ETHを取得した後、一切の取引を行っていませんでした。11年の沈黙を破ったこの0.1ETHの送金は、残りの2000ETH(送金時の価格で約383万ドル、日本円で約6億円相当)を動かす前の「動作確認」とみなされています。この取引により、投資元本の約6184倍という驚異的なリターンが改めて注目を集めました。オンチェーン分析プラットフォームのLookonchainがこの取引を発見し、複数の暗号資産(仮想通貨)メディアが報じています。
今回のアドレス「0x6A53」の動きは、決して孤立した出来事ではありません。2026年に入り、イーサリアムのICO時代(2014〜2015年)に資金調達された、いわゆる「ジェネシスウォレット」が相次いで活動を再開しています。以下はその主な事例です。
| 覚醒日 | ICO時コスト | 移動したETH | 当時の評価額 | リターン倍率 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2026年4月28〜29日 | 約3,100ドル | 10,000 ETH | 約2,290万〜2,310万ドル | 約7,381倍〜7,465倍 | 新しい非取引所アドレスへ移動 |
| 2026年3月23日 | ICO時代のクジラ | 15,000 ETHをCoinbaseへ入金 | 約3,097万ドル | — | オンチェーンアナリスト「The Data Nerd」が発見 |
| 2026年2月16日 | 約443ドル(1,430 ETH) | 1ETHをGeminiに入金試行(失敗) | 約280万ドル | 約6,335倍 | ガス代不足で取引失敗 |
| 2026年5月13日 | 約244ドル | 790 ETHを移動 | 約178万ドル | 約7,300倍 | ジェネシスアドレス、新しいウォレットへ移動、取引所への入金はなし |
| 2025年12月 | 約263.50ドル | 1ETHをCoinbaseへ(合計850 ETH保有) | 約282万ドル | 約10,684倍 | アドレス0x782Fからのテスト取引 |
これらの動きの背景には、巨額の利益確定以外にも、ポートフォリオのリバランス、資産管理のための新しいウォレットへの移行、あるいは相続計画など、複数の要因が考えられます。取引所に直接送金されたものは売却の可能性を示唆しますが、新しいアドレスに移動されただけのものは、売却意図が不明です。
2026年が「覚醒の年」となった理由
0.1ETHというテスト取引だけでは、2000ETHすべてがすぐに売却されるとは限りません。しかし、この動きが示すのは、イーサリアム黎明期の0.31ドルで購入した「ジェネレーションZ」とも言うべき投資家たちが、現実の市場と再び関わり始めたという事実です。
これらの覚醒が全て売却に直結するわけではないものの、長期間市場から隔離されていた供給が再び流通することは、短期的な市場心理に影響を与える可能性があります。特に、イーサリアムの価格が2021年の最高値から大きく下落している局面(記事執筆時点で約1,915ドル)では、その影響はより注目されます。
暗号資産(仮想通貨)市場は、これらの「化石ウォレット」の動きを注意深く見守っています。彼らが保有するETHを「Hold(保有)するか、Stake(ステーキング)するか、Sell(売却)するか」——その選択は、市場に新たなシグナルをもたらすでしょう。