Appleの直近決算だけを見ると、危機感はあまり見えません。2025年度第2四半期にあたる3月期の売上高は954億ドル。前年同期比で5%増え、希薄化後1株利益は1.65ドルと8%増、3月期としては過去最高でした。サービス部門の売上も前年同期比12%増で過去最高を更新しています [20]。
それでもティム・クックCEOが関税コストに警戒感を示したのは、決算が悪かったからではありません。問題は「すでに終わった3月期」ではなく、「これから来る6月期」のコスト見通しです [17][
28]。
ポイントは「実績」ではなく「次の四半期」
Appleは、3月期の関税影響については限定的だったと説明しました。サプライチェーンと在庫を最適化することで、負担を抑えられたためです [20][
28]。
一方で6月期については、話が違いました。Appleは、四半期末までに政策が変わる可能性があるため、関税の影響を正確に見積もることはできないと説明しています [17][
28]。
そのうえで、当時の世界的な関税率、政策、適用方法が6月期末まで変わらず、新たな関税も加わらないという前提なら、関税関連コストは約9億ドル増えるとの見通しを示しました [17]。ただしAppleは、この数字を将来の四半期にそのまま当てはめるべきではないとも強調しています。関税率や政策環境は変わり得るからです [
17]。
好決算なのに、なぜ9億ドルが重いのか
Appleほどの巨大企業にとっても、9億ドルは軽い数字ではありません。特に問題になるのは売上そのものより、利益率です。
Appleは6月期の全社売上について、前年同期比で「1桁台前半から半ば」の成長を見込む一方、粗利益率は45.5〜46.5%になるとの見通しを示しました。この粗利益率のレンジには、クック氏が言及した約9億ドルの関税関連コストがすでに織り込まれています [17]。
つまり今回の警告は、「iPhoneが急に売れなくなる」という話ではありません。売上が伸びても、輸入コストが上がれば利益率が押し下げられる、という話です。投資家が気にしたのも、まさにこの点でした。
サプライチェーンの見直しは進むが、万能ではない
Appleの大きな武器は、世界規模のサプライチェーンです。同社は関税リスクを抑えるため、生産地や物流、在庫の調整を進めています。
RTHKによると、クック氏は、米国で販売されるiPhoneの大半について、原産国がインドになると見込んでいると述べました。また、その時点ではApple製品は、トランプ政権による最も厳しい相互関税の対象から外れていたとされています [10]。
The Registerも、Appleがサプライチェーンをインドやベトナムへ移してきたと報じています。ただし同時に、関税政策が事業にどの程度影響するかは予測しきれないとも伝えています [25]。
ここにAppleの難しさがあります。3月期はサプライチェーンと在庫管理で影響を抑えられました [20][
28]。しかし、新たな関税、ルール変更、政策の適用範囲の変化が起きれば、次の四半期以降の計算はまた変わります [
17][
25]。
市場が反応したもう一つの理由:中国リスク
関税警告は、単独で受け止められたわけではありません。Business Standardは、決算発表後に投資家の間で関税コストの上昇や中国売上の伸び悩みへの懸念が広がり、Apple株が時間外取引で一時最大4.2%下落したと報じています [12]。
市場が見ていたのは、「Appleは過去の四半期で期待に応えたか」だけではありません。地政学的なコストが上がり、中国を含む地域リスクが意識されるなかで、今後も同じように高い収益性を維持できるのか、という点でした [12]。
結論:強いAppleでも、関税は利益率を揺らす
クック氏の警告は、Appleの3月期が弱かったことを意味しません。むしろ決算は堅調でした。売上は954億ドル、希薄化後1株利益は1.65ドルで、サービス部門も過去最高を更新しています [20]。
ただし、好調な実績は将来の利益率を保証しません。Appleが示した約9億ドルの関税関連コストは、あくまで当時の関税ルールが変わらない場合の6月期見通しであり、将来の四半期にそのまま使える数字ではありません [17]。
今回の決算が示したのは、Appleの事業の強さと、政治的なコスト圧力が同時に存在し得るということです。需要やサービス収入が堅調でも、関税、サプライチェーンの再編、地域別のリスクが重なれば、コスト計画は一段と読みにくくなります [12][
17][
25]。




