画像生成モデルを選ぶとき、実務で効くのは「どちらが絶対に強いか」より、「どんな失敗が一番困るか」です。文字が1文字でも崩れると使えないのか、人物写真の自然さが最優先なのか、プロンプト拒否が致命的なのか、あるいは手や小物の形崩れが問題なのか。ここを間違えると、ベンチマークの勝敗を見ても判断を誤ります。
現時点で確認できる直接比較の公開ベンチマークでは、GPT Image 2がNano Banana Proをわずかに上回っています。AI Video BootcampではGPT Image 2.0が10/10プロンプトを描画し、Nano Banana Proは9/10でした。PixazoではGPT-Image-2が19/25、Nano Banana Proが18/25です[6][
7]。ただし差は、片方が1プロンプト、もう片方が1ポイント。大差ではありません[
6][
7]。
まず結論
- 文字、ラベル、UI、ポスター、メニュー、漫画の吹き出しなどが重要なら、現時点ではGPT Image 2を先に試す価値が高いです。直接比較では、GPT側が画像内テキストやタイポグラフィで優位でした[
6][
7]。
- 人物写真らしさ、肌の質感、ライティング、UGC風セルフィー、広告ビジュアルを重視するなら、Nano Banana Proはかなり強い候補です。AI Video Bootcampのテストでは、Nano Banana Proが実写感、肌の質感、ライティングで勝ったプロンプトがありました[
6]。
- 公開データだけで「完全勝利」と言うにはまだ早いです。直接比較の主要な2本はいずれも小規模で、差は10/10対9/10、19/25対18/25にとどまります[
6][
7]。
比べているモデルを取り違えない
OpenAIのAPIドキュメントでは、GPT Image 2のモデルIDはgpt-image-2-2026-04-21と記載されています[13]。
Google側では、Nano Banana ProはGemini 3 Pro Imageとしても案内され、Googleの最も高品質な画像生成モデルと説明されています。一方、Nano Banana 2、つまりGemini 3.1 Flash Imageは、大量処理、高効率、より低価格帯のモデルという位置づけです。GoogleはGemini 3系モデルが現在プレビュー段階であることも示しています[25]。
Gemini APIのモデル一覧では、Nano Banana Pro Previewは、スタジオ品質の4Kビジュアル、複雑なレイアウト、正確なテキストレンダリングに向けた「professional design engine」と説明されています[26]。つまり、これは片方がフラッグシップで片方が軽量版という比較ではなく、OpenAIとGoogleの上位画像モデル同士の比較として読むべきです。
公開ベンチマークの読み方
| 情報源 | テスト内容 | 結果 | 読み方 |
|---|---|---|---|
| AI Video Bootcamp | 2026年4月22日に、同じ10プロンプトをGPT Image 2.0とNano Banana Pro、つまりGemini 3 Pro Imageで実行[ | GPT Image 2.0は10/10プロンプトを描画。Nano Banana ProはElon MuskのCVに関するプロンプトをポリシー理由で拒否し、9/10でした。Nano Banana Proは超リアルなポートレート、UGC風セルフィー、スポーツ広告で実写感、肌の質感、ライティングに強み。GPT Image 2.0は画像内タイポグラフィ、漫画の会話パネル、バイリンガルメニュー、シルクスクリーン風ライブポスターで勝っています[ | 実務上の失敗パターンを見るには有用です。ただし10プロンプトのみで、1件は安全ポリシーの影響を受けています[ |
| Pixazo | 実プロンプト10件で5モデルを比較[ | GPT-Image-2は19/25、Nano Banana Proは18/25、Nano Banana 2は17/25、Flux-2 Maxは16/25、Pixazo defaultは15/25でした[ | GPTがトップですが、Nano Banana Proとの差は1ポイントです[ |
公正に読むなら、現状は「GPT Image 2が小さく先行。ただしNano Banana Proはほぼ横並び」です。ベンチマークの規模が小さく、差も非常に近いため、最終的な序列表というより、モデル選定のための方向感として扱うのが安全です[6][
7]。
文字とレイアウト:GPT Image 2のいちばん分かりやすい強み
商品ラベル、EC用バナー、メニュー、UIモック、ポスター、漫画パネル、インフォグラフィックのように、画像内の文字がそのまま成果物になる場合は、GPT Image 2のほうがリスクを抑えやすいと見てよさそうです。
AI Video Bootcampの直接比較では、GPT Image 2.0が画像内タイポグラフィ、漫画の会話パネル、バイリンガルメニュー、シルクスクリーン風ライブポスターで勝っています[6]。Pixazoも、手でスマートフォンを持つテストにおいて、GPT-Image-2が画面上の
72°Fという文字を6回中5回正しく描画したと報告しています[7]。
これは商用制作では大きな意味があります。たとえば価格、温度表示、ブランド名、メニュー名、UI上の数値が1文字でも違えば、画像全体が使えなくなることがあるからです。
補足として、GPT Image 2とNano Banana 2を比べた別のハンズオン記事では、GPT Image 2が正確な文字や技術用語でわずかに優位、Nano Banana 2がCJK、つまり中国語・日本語・韓国語系の文字組みの磨き込みやドラマチックなライティングでわずかに優位とされています[3]。ただし、この比較対象はNano Banana ProではなくNano Banana 2なので、Proにそのまま当てはめるのではなく参考情報として見るべきです。
日本語を含む制作では、英数字だけのベンチマークでは不十分です。漢字、かな、カタカナ、英数字、記号が混在する実際のラベルやUI文言で、自分の案件に近いテストを行うのが現実的です。
実写感とライティング:Nano Banana Proはまだ強い
Nano Banana Proは、総合で一方的に負けているわけではありません。AI Video Bootcampのテストでは、超リアルなポートレート、UGC風セルフィー、スポーツ広告のプロンプトで、Nano Banana Proが実写感、肌の質感、ライティングにおいてGPT Image 2.0を上回ったとされています[6]。
人物を自然に見せたい、広告写真らしい光を作りたい、カメラで撮ったような質感を重視したい場合、この差は実務上かなり重要です。
Google自身も、Nano Banana Pro、つまりGemini 3 Pro Imageを同社の最も高品質な画像生成モデルと位置づけています[25]。また、Nano Banana Pro Previewは、スタジオ品質の4Kビジュアル、複雑なレイアウト、正確なテキストレンダリング向けのモデルとして説明されています[
26]。
つまり、GPT Image 2が文字やプロンプト遵守で優位に見える一方、Nano Banana Proは「写真としての気持ちよさ」やGeminiエコシステムとの相性を重視する制作で、十分に第一候補になり得ます。
プロンプト遵守と安全ポリシーは分けて考える
AI Video Bootcampでは、GPT Image 2.0が10/10プロンプトを描画したのに対し、Nano Banana ProはElon MuskのCVに関するプロンプトを、著名人に関するポリシーの可能性を理由に拒否しました[6]。Pixazoでも、GPT-Image-2はNano Banana Proを19/25対18/25で上回っています[
7]。
ただし、プロンプトを拒否することと、画像を生成したが出来が悪いことは別問題です。前者はモデルの描画能力ではなく、安全ポリシーや実在人物への扱いの違いを反映している可能性があります[6]。
有名人、実在人物、センシティブな題材を扱うワークフローでは、画質スコアとは別に「拒否率」を測るべきです。拒否されるなら代替導線が必要ですし、生成されるが品質が低いならプロンプトやモデルを変えるべきです。対策がまったく違います。
手や複雑な物体:どちらもまだ過信は禁物
画像生成AIにとって、手、重なった小物、複数人物、機械部品のような構造物は依然として難所です。
Pixazoは、手でスマートフォンを持つテストで、GPT-Image-2が6生成中4回、解剖学的に正しい手を出したと報告しています。ただし同じ記事は、手は依然として全モデル共通の問題であり、どのモデルも完全にはクリアしていないとも述べています[7]。
Nano Banana Proについては、今回の直接比較ソースだけでは、手や複雑な物体でGPT Image 2より明確に弱いと断定できるだけの詳細データはありません。手、複数人物、商品パーツ、精密機器、レイヤーの多い構図が多い案件では、その条件を含めた独自ベンチマークを行うべきです。
API、料金、本番運用で見るポイント
OpenAI側では、APIドキュメントがGPT Image 2のモデルIDをgpt-image-2-2026-04-21と示しています[13]。OpenAIの料金ページでは、
gpt-image-2について、画像入力が100万トークンあたり8ドル、キャッシュ済み画像入力が2ドル、画像出力が30ドル、テキスト入力が5ドル、キャッシュ済みテキスト入力が1.25ドルと掲載されています[14]。
Google側では、Gemini APIのドキュメントがNano Banana ProをGemini 3 Pro Imageとも呼び、Gemini 3系モデルはプレビュー段階であると説明しています[25]。また、OpenRouterには
google/gemini-3-pro-image-previewのページがあり、そのプラットフォーム上での料金が掲載されています[29]。
ただし、OpenRouterの価格をGoogleエコシステム全体の標準価格とみなすべきではありません。Gemini API、Google AI Studio、ルーター、代理サービスなど、実際に使う経路によって請求条件は変わり得ます。日本円換算や社内稟議用の見積もりも、必ず本番で使う経路の料金表を基準にしてください[14][
29]。
どちらを選ぶべきか
| 主なニーズ | まず試したいモデル | 理由 |
|---|---|---|
| ポスター、メニュー、UIモック、商品ラベル、インフォグラフィックなど文字入り画像 | GPT Image 2 | 直接比較で、タイポグラフィや画像内テキストの正確さに強みが見えます[ |
| 長いプロンプト、条件の多いレイアウト、細かな指示 | GPT Image 2 | AI Video Bootcampでは10/10プロンプトを描画し、PixazoでもNano Banana Proを1ポイント上回っています[ |
| 超リアルなポートレート、UGC風セルフィー、スポーツ広告、光が重要な広告ビジュアル | Nano Banana Pro | AI Video Bootcampでは、実写感、肌の質感、ライティングでNano Banana Proが勝ったカテゴリがあります[ |
| 4Kビジュアル、複雑なレイアウト、GeminiやGoogle系ワークフロー | Nano Banana Pro | GoogleはNano Banana Proを高品質画像生成モデルと位置づけ、4Kビジュアルや複雑なレイアウト向けにも説明しています[ |
| OpenAI APIの費用を明確に見積もりたい | GPT Image 2 | OpenAIはGPT Image 2のトークン単価を公開しています[ |
| 統計的に強い結論がほしい | まだ保留 | 主要な直接比較は小規模で、差は1プロンプトまたは1ポイントです[ |
本番投入前にやるべきミニベンチマーク
公開ベンチマークは参考になりますが、最終判断は自社のプロンプトで行うべきです。
- 実際の制作物に近いプロンプトを集める。 文字多め、実写、商品写真、インフォグラフィック、画像編集、複数人物、複数物体、ポリシーに触れやすい題材を含めます。
- 重要プロンプトは複数回生成する。 1枚だけの当たり外れで判断すると、モデルの安定性を見誤ります。
- 採点軸を分ける。 文字の正確さ、レイアウト、プロンプト遵守、美しさ、解剖学的自然さ、参照画像への忠実度、拒否率、速度、コストを別々に見ます。
- 拒否と低品質生成を分ける。 拒否はポリシーや運用導線の問題、低品質生成はモデル選定やプロンプト設計の問題です。
- 本番経路の価格で計算する。 API直販、ルーター、代理サービス、バッチ処理、利用ティアによって費用感は変わり得ます[
14][
29]。
最終判断
現時点の公開データを見る限り、文字、ラベル、UI、複雑なレイアウト、プロンプト遵守を重視するならGPT Image 2がやや安全な選択です。一方で、実写感、肌の質感、ライティング、4Kビジュアル、Geminiとの統合を重視するならNano Banana Proは非常に有力です[6][
25][
26]。
結論はシンプルです。GPT Image 2は総合で僅差リード。ただしNano Banana Proはまったく置いていかれていません。公開ベンチマークは方向感として使い、最終判断は自分の制作プロンプトで検証するのが最も堅実です[6][
7]。




