「AIはGDPRに適合するのか」という問いは、少し大きすぎます。正確には、どのAIモデルで、どの段階で、どの個人データを、何のために、どの根拠で処理しているのかを見ます。
EDPBは2024年12月18日の発表で、Opinion 28/2024が主に3つの論点を扱うと説明しています。第一に、AIモデルがいつ、どのように匿名とみなされ得るか。第二に、AIモデルの開発または利用について、正当な利益(legitimate interest)を法的根拠として使えるか。第三に、違法に処理された個人データを使ってAIモデルが開発された場合に何が起きるか、です。
したがって、ドイツでの利用であっても、ここから「AIなら常にOK」や「AIなら常にNG」という特別な結論は出せません。確認すべきなのは、個々の処理の中身です。
Opinion 28/2024は、AIモデルに関するすべての法的問題を解く文書ではありません。対象は、AIモデルの文脈で個人データを処理する際の特定のデータ保護上の論点です。
実務上の意味は明確です。AIプロジェクトは、技術のラベルだけでは評価できません。モデルの開発、導入、運用などの各場面で、個人データ処理があるかどうかを確認する必要があります。
よくある誤解は、「元のデータがそのまま見えないなら、モデルは匿名だ」というものです。しかしEDPBの発表では、AIモデルが匿名かどうかは、データ保護監督機関がケースごとに評価すべきだとされています。
そのため、「このモデルは匿名です」と説明するだけでは足りません。具体的なモデル、具体的な利用状況、具体的なリスクを踏まえて、匿名といえるだけの根拠が必要です。
特に、個人データがモデル内に残っている場合は注意が必要です。ENISAのウェビナー資料は、モデル内に個人データが保持されている場合、後続の処理の適法性に影響し得る場面があり、個別評価が必要だと説明しています。
EDPB Opinion 28/2024は、AIモデルの開発または利用について、正当な利益を法的根拠として使えるか、またどのように使えるかを扱っています。
ただし、これは「AIなら正当な利益で処理できる」という意味ではありません。正当な利益が成り立つかどうかは、対象となる処理ごとに検討する必要があります。
さらに、過去の処理に問題があった場合は、判断が複雑になります。ENISA資料は、後続の処理が正当な利益に基づく場合でも、最初の違法性をその評価に含める必要がある例を挙げています。
Opinion 28/2024の重要な論点の一つは、違法に処理された個人データを使ってAIモデルが開発された場合にどうなるかです。
実務的には、問題のあるデータ処理が、モデルの完成によって自動的に消えるわけではありません。個人データがモデル内に残っている場合、後続の処理の適法性に影響し得るため、ENISA資料はここでも個別評価が必要だとしています。
複数の関係者がいる場合も注意が必要です。ENISA資料は、同一の管理者が関わる場合と、別々の管理者が関わる場合を分けて検討し、それぞれの管理者が自分の処理の適法性を確保すべきだとしています。
以下は、法的助言ではなく、EDPBとENISAの資料から読み取れる実務上の確認ポイントです。
まず、AIモデルの開発段階の話なのか、導入・利用段階の話なのかを切り分けます。EDPBの発表は、AIモデルの開発と導入における個人データ利用を対象にしています。
どの時点で個人データが処理されるのかを記録します。Opinion 28/2024が扱うのは、AIモデルの文脈における個人データ処理です。
モデルを匿名と位置づけるなら、その判断を支える説明が必要です。EDPBの発表では、AIモデルが匿名かどうかはケースごとに評価されるとされています。
正当な利益を使う場合も、「AIだから可能」とは考えないほうが安全です。開発または利用の具体的な処理について、その根拠が成り立つかを確認する必要があります。
個人データがモデル内に残っていないか、開発段階で個人データが適法に処理されたかを確認します。これらは後続の処理にも関係し得ます。
開発者、提供者、利用者など複数の主体が関わる場合、誰がどの処理に責任を持つのかを明確にします。ENISA資料は、各管理者が自分の処理の適法性を確保すべきだとしています。
「生データが見えなければ、AIモデルは匿名である」 とは限りません。AIモデルが匿名かどうかは、ケースごとに評価されます。
「正当な利益を使えば、AI利用は問題ない」 とは言えません。EDPB Opinion 28/2024は、正当な利益を使えるかどうかを扱っていますが、すべてのAI利用を自動的に正当化するものではありません。
「一度モデルになれば、訓練データの問題は消える」 とも言えません。Opinion 28/2024は、違法に処理された個人データで開発されたAIモデルの扱いを明示的に取り上げています。また、個人データがモデル内に残る場合、後続の処理に影響し得ます。
AIのGDPR適合性は、技術名で決まるものではありません。問われるのは、個人データがどこで処理されているか、匿名といえるのか、どの法的根拠に立つのか、そして開発段階のデータ処理に問題がなかったかです。
ドイツとEUでの実務的な答えは、シンプルですが厳格です。AIは自動的に適法ではない。しかし、自動的に禁止でもない。必要なのは、モデルと処理ごとの具体的なGDPR評価です。